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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
22/44

22話 採掘

 カイとハジメが路地裏で2人のヤクザを倒した日から4日後の事。意識を取り戻した2人のヤクザは、自分達が所属する鎌威(カマイ)組の本拠地にて兄貴分に怪我の原因と音信不通になった事情を話していた。


「へぇ…第2位階の中坊に風の魔術使いの若造ね。それで俺の電話にすら出れなかったと」

「は、はい」

「…申し訳ねぇ」 


 カイ達にやられた隠しきれない痛々しい傷を負った2人を床に座らせる兄貴分の男は、体重を預けていたソファから背を離し、値踏みする様に上体を前屈みにする。


「第2位階の佐藤をやるぐらいだ。強かったんだろ」

「ええ、それは勿論」

「ガキ2人にウチの者が良い様にやられたなんて他に知られたらどうなるか、分かるよな?」

「は、はい!!必ず、必ずや報復は、完璧にやり遂げてみせます」

「サツに目を付けられない範囲でな」

「「はい!!」」

「ああ、そうそう」

2人が、まだ痛む傷を抑えながら立ちあがり立ち去ろうとした時思い出した事があったのか再び声が掛かる。

「もし、奴等が冒険者だったら、俺に教えろ」

「構いませんが、何故?」

「デージーの奴等に依頼を出そうと思ってな」

((やっぱコエーよこの人))

 自分達より若い兄貴分の男が浮かべる獰猛な笑みは2人だけでなく、成り行きを見守っていた他の組員も恐怖を覚えるものだった。

 

 強い悪意を秘めた報復が、カイとハジメに今迫ろうとしていた。しかし、そんな事は微塵も勘付いていない2人は、呑気にオニギリを食べていた。


「どうだ?ニコのシャケオニギリは美味いだろ」

「やばい。美味い」

「はは、語彙力を失うほど美味いか」


 場所はアビス近くのベンチで、2人はバイクを止めた後、アビスに潜る前の腹拵えをしていた。


 ハジメの妹である葉山家長女のニコがお仕事頑張ってねと2人の為に作ったオニギリは、巨大でありながら綺麗な三角をしており、絶妙な塩加減がカイの語彙力を奪う。


「それ食ったら、とっととアビスに潜るぞ」

「マジ、美味い」


 今日2人はいつもの装備だけではなく、肩にツルハシを下げていた。何故ツルハシを肩に下げているかと言うと、採取物としてリストにあった黄色輝石をゲットする為だ。


 ハジメは写真とその下に書かれた資料の内容を今一度思い出す。(黄色味がかった淡い暖色系光を放つ石で、深度1エリアで取れる鉱石の中でも高く売れる珍しい石だったよな。写真で実物は分かるけど、本当にみつけられんのか?)

「マジ美味かった。よし!!いこぜ」

「ああ、そうだな」

 モンスターなら自信があるハジメも貴重な鉱石は少し自信が無いのか弱気な事を考えるが、オニギリを完食したカイの明るさに引っ張られる形で気合いを入れ直す。


 10分程で、アビス内へと移動した2人はいつもと違うルートをモンスターを倒しながら進んで行く。ツルハシを背負った事で少しスピードが落ちた前衛のカイは不満顔を浮かべながら石鱗リザードを鱗ごと踏み砕く。


「んー、やっぱ動きにくいな」

「今日採取できれば次からは背負わずに済む。我慢しろ」

「わかってるよ、それよりさ、結構進んだし間引きもやったからこの辺で掘ろうぜ」

「んー、まぁいいか。よし掘ろう」


 『間引き』それは端的言うと、採取を開始する事で起こる事故を防ぐ為だ。


 ツルハシを岩壁に打ち付けることで、大きな音が巌窟の迷宮に響き渡る。そして、それを聞きつけた周辺のモンスターが群れを成してやって来ない様に事前に間引いておく事を業界用語で間引きという。


 此処まで来るまでに粗方モンスターを間引けたとハジメも判断し、肩に下げていたツルハシを取り出して自身の直感に従い振り下ろす。


 負けじとカイもツルハシを岩壁に打ち付ける。カーン、カーンと甲高い音がアビス内に響き渡る。偶にやって来るモンスターを倒しながら暫くツルハシを振る2人、数十分ほど黙々とやるが流石に飽きたのか、カイが話かける。


「そういえば、この壁って時間が経てばアビスが修復するんだよな」

「ああ、なんかそうらしいな」

「何でだ?」

「さぁ?偉い学者なら知ってんじゃないのか?」

「偉い学者かーいつか会えるかなー」

「会えたらいいな」

「うん」


 そうして和やかな会話をしながら岩壁をゴリゴリ削りながら掘り進めると、カイは岩壁とは違う感触に違和感を覚え、掘り進めると胡桃に散々見せてもらった鉱石を掘り当てる。


「当たった!!当たったぞハジメ」

「ん?、って、おおー本当だ。でかしたぞ」


早速2人で協力して周囲の岩からきり黄色輝石を切り出し、他にも密集してないかその周辺を掘り進める。

幸先の良い出だしに笑みを浮かべる2人だったが、運が良かったのは此処までだった。


 その後は2時間程掘るが、全くと言っていい程何も出ず、結局別エリアに移動し3時間程掘り続けて漸く残り2つを掘り当てたのだった。


「…もう、腕上がらねぇ」

「…これから晩飯作るとか地獄か?」


 疲労困憊になりながら漸く1つリストを埋めた2人の冒険は続く。


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