21話 新米冒険者生活2
新米冒険者、狼原灰の朝は早い。彼は、オフィス隣の狭い一室で朝5時半に起床し、洗面所が無いのでお茶汲み様の備え付け簡素キッチンで洗顔と歯磨きをする。
洗顔と歯磨きの後、彼が起床して最初にやる事は掃除だ。洗濯にトイレ掃除、シャワールーム室の掃除など毎日ではないが、定期的に掃除する。母親と暮らしていた時から、母の負担を減らそうと家事をほぼ全てやっていた為、苦は無い。
因みに今日は3日分の洗濯物を近所のコインランドリーに持って行き洗濯した後部屋干しし、シャワールームを掃除する。
それが終わると、次に学校の宿題に取り掛かる。朝の早朝は静かな為この時間にやるのがベストだ。何故夜にやらないかと言うと、夜は喧しい社長が絡んでくるのと、いつまでも周りにチビと言われないが為に早く寝るからだ。
宿題を片付けた頃には時計の針は7時半手前を指しており、学校の時間割を確認し必要なものをカバンに詰め、制服に着替えて登校準備を終えて階段を降りる。
探索会社パキラの下で営業しているcoffee cafe白馬は、モーニングサービスをやっており、格安でコーヒーだけでなく、トースト、ヨーグルト、ゆで卵、サラダを食べる事が出来るのだ。
本来の営業は8時からなのだが、ご近所のよしみで早めに入れてもらえる為、静かな店内で流れるBGMを楽しみながらカイは朝食を食べる事が出来るのだ。
店長に笑顔でお礼を言い会計を済ませると、登校カバンを片手に通学路を歩き始める。
カイは現在住む場所が、母親と暮らしていた地区から大分離れた場所にある。その為、前の学校から転校し現在は違う近所の中学校に通っている。
何度か登校し通学路に慣れてきたカイは、靴を上履きに履き替え、既に20近くの人がいる自身の教室に「おはよー」と言いながら入る。
「おはよー」と数人から返ってくる返事を聞きながら、自分の席に着いたカイはカバンの中身をロッカーや引き出しに整理し始める。すると、カイの席に何人かの女子生徒と男子生徒が近づいてくる。
カイは前の学校ではいじめられていたが、転校して家の事情が知られていない土地の為、変なこともされず、髪と目の色が少し違うイケメンとして、クラスに受け入れられているのだ。
「狼原ー調子どうだー」「おはよ狼原くん。これ見てー」「ジュース買いにいこうぜ!!」
一緒に登校する程の友達は出来ていないが、クラスで普通に馴染める様になったのは、意外にも数日前に行われた体育の授業の影響だ。
オリエンテーションで行われたドッチボール。第2位階の身体能力とアビスで鍛えられた危機感知能力が猛威を振るい大活躍。中学では、ルックスと運動能力があらゆるステータスの中でも特に注目される。
その為、一躍ヒーローとなったカイはその人懐っこい性格も相まって、クラス1の人気者といかないまでも1人になる時間がないぐらいには、友達ができたのだ。
カイは予鈴が鳴るまでクラスメイトと談笑し、ホームルームを済ませて授業を受ける。周りは近くの席の人と話したりしているが、カイは真剣に授業を受ける。
普段アビスから帰ったら殆どの時間をアビス関連の事を勉強する為、特別頭が言い訳じゃないカイは授業で気を抜く事は出来ない。
(3億納めて自由になった時に、やりたい事がバカ過ぎて出来ないなんて嫌だもんな)
その後も学校のカリキュラムをこなしていき、今日最後の科目である数学授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、各々部活の準備や帰りの支度を開始する。
カイも帰りの支度をしていると、
「あっ、カイー今日もお前の兄ちゃん迎えに来てるぞー」(アイツゥーあれ程正門付近は辞めろって言ったのに!!)「おお、わかった。教えてくれてありがとうな」
心の中で愚痴りながらお礼を言うカイは最近入社した同僚に対して怒りを募らせる。
カイは、帰りのホームルームが終わると同時にダッシュで正門に向かうと予想通りバイクに腰掛けながら黄昏ている、センター分けの赤髪ヤンキーの姿を見つける。
「おーカイ来たか」
「お前ぇ、先生に目を付けられるから辞めろって言ったよな」
「迎えに来てやってんだからごちゃごちゃ言うな。文句言われたら、生活かかってんだって言ってやれ」
「そういう事じゃねぇんだよ」
「わかったわかった。ほらこれ被って後ろ乗れー」
「お前本当に分かってんのか?」
そう文句を言いながら渋々ヘルメットを付けバイクの後ろに乗ったカイはハジメの運転の元アビスに向かい仕事を開始する。
5時間後アビス内での探索を終えてパキラのオフィス帰って2人がやる事は、汚れや匂いが女性陣に不評の為、シャワーを浴びる事だ。
シャワーを浴びて綺麗なったカイは、今日の報告や成果を提出をハジメに任せて簡素キッチンで簡単な夜ご飯を作る。
最初は自分の分だけを作っていたのだが、材料費出すから私達にも食わせろと凛達に言われた為、下の白馬で外食する以外は、ほぼ毎日カイが作っている。
料理の腕は日に日に上手くなってはいるのだが、時短と量を追求して作っている為か胡桃には「あったかいご飯を食べれるだけ幸せー」と好評だが、凛は「お前味薄すぎ」と文句を言ってくる。
出来上がるとオフィステーブルに運び予め胡桃が炊いておいたお米を茶碗に注ぎ皆んなでご飯を食べながらアビス内でのミーティングをする。
皆んなで後片付けをした後、胡桃とハジメは退勤し、凛と2人切りになったカイはお茶汲みしつつ、アビスの勉強をする。この時カイが最も気を付ける事は凛の気分を帰りたくさせる事にある。
(こいつが、また泊まるとか言い出すと俺の寝る場所が無くなる)
「お茶いるか?」
「ああ、ありがとう」
だが、今日は一向に帰る気配がない事で、カイはお泊まりコースかと焦り始める。
「そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
「あ?まだ10時だろお子ちゃまは寝てろよ」
「そ、そうか、じゃあ俺はあったかい布団で寝かせてもらうはじゃあなー」
ガキ扱いされて売り言葉に買い言葉と少し凛を挑発してししまう。
「いい度胸してるじゃんか、今日泊まってそのあったかい布団で私が寝てやる?!」
「まっ、待て?!俺が悪かった俺が悪かったからそれはやめろぉ?!」
結局疲れた凛を煽るという墓穴を掘ったカイは自分がいつも使ってる1番良い布団を占領され、お古の布団でお古の毛布に包まれて寝ることとなった。
母親が眠る樹木の前で頑張って生きると誓ったカイの生活はまだまだ続く。




