第26話 嫌われ者の人生
くたくたになって家に帰った俺は、すぐに自分の部屋へ向かい、朱美に電話をかけた。
吉山に押し付けられた雑用をしながら、ずっと考えていたことがある。その気持ちが揺らいでしまう前に、早く朱美に伝えておいた方がいいと思ったのだ。
『────珍しいわね。秀児から電話なんて』
スマホで朱美の連絡先をタップすると、彼女はすぐに応答した。
「もう夏休みに入ったから、直接話す機会もないだろ。それに、今俺がお前に話しかけようものなら、過保護なクラスメイトたちに殺されかねない」
『あ、そうそう。それよ。なんだか今日はやけに嫌われてたわね。もしかして、昨日私にしたいたずらが皆にバレたんじゃないの? 嫌われ者のプロな秀児にしては軽率な行動だったわよね。やるならもう少し上手くやりなさいよ』
「今思えば……そうだな。あのやり方はマズかった。もっといいやり方がいくらでもあったように思う。俺は焦ってたのかもな……少なくとも冷静じゃなかった」
『……妙に深刻ね。一応言っておくけど、私は怒ってないわよ? 一緒に夏祭りに行くって約束もしてもらったし』
「そのことなんだけど……やっぱり、なかったことにしないか?」
『……………………』
電話口の向こうから声が消える。
「聞いたぞ。祭りにはお前の会社の偉い人も来るらしいな。それに俺のことを嫌ってるクラスメイトも大勢来るはずだ。そんな中で俺たち二人で祭りを巡ったりなんてしたら、お前の将来に差し支えると思うんだ」
『私の……将来?』
「ああ、お前は一応会社を継ぐ立場なんだろ? そんなお嬢様にあんま変な噂を立てるわけにもいかないじゃないか。俺と一緒にいると、お前の評判が落ちる。だから……夏祭り一緒に行くのは止めよう」
『………………………………………………』
そのまま朱美は何も言うことなく、電話を切った。
怒らせてしまったのだろう。
なにせいたずらの件を許してもらうために交わした夏祭りの約束を反故にしたのだ。抑えていた以上の怒りが湧き上がってくるのは当然と言える。
「はぁ……上手くいかねぇ……」
これで今度こそ朱美は俺のことを嫌いになっただろうな。
今さら嫌われたくないと思っても、ずっと続けてきた癖は抜けないんだろうか。もはや俺に嫌われ者として生きる以外の道はないのかもしれない。
やっぱり人から好かれようなんて考えるとロクなことにならない。嫌われて、距離を置かれて、関心が失せる。人付き合いとはそうあるべきなんだ。これはそのあり方に例外を設けてしまった俺の失態だ。
忘れるな。他人は所詮他人だ。他人と上手く付き合っていきたいなら、自分以上に他人を愛してはならないんだ。




