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第三十三話「悲鳴蒸留所」

視点:ヤーン・ヴィステット、42歳。北欧の中規模都市リール市、品質管理主任。現在:nの次元・悲鳴蒸留所 第七処理棟、勤続ゼロ年ゼロ日ゼロ時間。




最後に覚えているのは、駐車場だ。


出勤前の月曜朝。車のドアを開けようとして——そこで記憶が途切れる。次に気がついた時、ヤーンは白い通路に立っていた。足元に影がない。天井がない。床だけが延々と続いていた。


エプロンをつけていた。


ヤーンはエプロンなど持っていない。だが確かに、燃えるような赤いエプロンがヤーンの胴に巻かれていて、胸ポケットには「第七班・補充要員A」と印刷された名札があった。


名前が違う。「ヤーン」ではなく「補充要員A」だ。


「ここはどこだ」とヤーンは言った。


「工場」と誰かが言った。


振り向くと、同じエプロンを着た人間が三十人ほどいた。全員が同じ目をしていた。焦点のない目。目が開いているが、何も見ていない目。ヤーンは一人一人の顔を確認した。三十人全員、口だけが動いていた。息継ぎとも違う。何かを繰り返し呟いている。


近づいて聞いた。


「悲鳴を……絞る……悲鳴を……絞る……」


ヤーンは逃げようとした。


足が動いた。十歩走った。


風景が変わった。


同じ白い通路に戻っていた。三十一人目になっていた。ヤーンの口が自動的に動き始めた。


「悲鳴を……絞る……」




悲鳴蒸留所の構造は単純だ。


入ってきた労働者が、タンクの前に立つ。タンクの中には、まだ使われていない「素材」が入っている。素材とは人間だ。世界線が崩壊する際に回収された——正確には、崩壊が完了する直前にバーディが掠め取った——まだ死んでいない人間たちだ。


彼らは既に「自分の世界が消えた」ことを知っている。知っているが、まだ死んでいない。その「知っているがまだ死んでいない」という状態が最も純度の高い悲鳴を生む。M社の研究部門が三十万年かけて発見した法則だ。


労働者の仕事は圧搾棒を持ってタンクを押すことだ。タンクの中の人間に圧力をかけると、悲鳴が液状化して下部の集積槽に流れる。労働者はそれを繰り返す。一日に何万回でも繰り返す。疲労すると別の労働者と交代する。交代した労働者は所定の待機区画で立ったまま休む。「休む」というのは比喩で、実際には直立したまま意識が落ちているだけだ。


ヤーンは四日目に、タンクの中の男と目が合った。


男は何かを言おうとしていた。口が動いていた。「助けてくれ」ではなかった——もうそういう言葉を作る力が残っていなかった。ただ口が動いていた。何百時間も同じ体勢で圧搾され続けた後の、反射だけが残った口の動きだった。


ヤーンは圧搾棒を下ろした。


その日の夕方、監督員が来た。クルーではない。工場の監督員だ——これもエプロンを着た人間だが、首に別の色の名札をつけている。「監督C」と書いてある。


「作業を止めた理由は」と監督Cが言った。


「男と目が合った」とヤーンは言った。「あの中に人間がいる」


「知っています」と監督Cは言った。「作業を再開してください」


「あれは人間だ。私も人間だ」


「そうです。どちらも正しい。作業を再開してください」


「なぜ」


「止まっている間も、他の班は動いています。あなたが止まっても悲鳴の蒸留は継続されます。ただし、あなたのノルマが未達成になります。ノルマが未達成になると、あなたはタンクの中に入ります」


ヤーンは圧搾棒を持ち直した。


タンクの中の男は、また同じ体勢に戻っていた。




七週間後、ヤーンは昇格した。


「補充要員A」から「補充A2」になった。名札が変わった。仕事は変わらなかった。ただ、タンクの清掃を担当するようになった。


タンクの清掃とは、圧搾が完了した後の内部を洗浄することだ。「完了」とは、素材が悲鳴を出し切った状態を指す。出し切った後の素材は乾燥して縮む。縮んだものは自動的に廃棄孔に流れる。廃棄孔の先は確認したことがない。


ヤーンは清掃しながら、縮んだものを見た。


その中に女の子がいた。十二歳か十三歳に見えた。目を開けていた。縮んでいたが、目だけは縮んでいなかった。正確な大きさのまま、開いたままだった。


ヤーンはそれを廃棄孔に送った。


その夜、待機区画で直立しながら、ヤーンは「悲鳴を……絞る……」とまた繰り返していた。




五十三週間後、ヤーンは「主任補充員」になった。


新しい補充要員に仕事を教える立場だ。


「ここはどこだ」と新しい要員が言った。


「工場」とヤーンは言った。




【グリマス博士・品質管理記録 No.77悲鳴第七班】


> 第七処理棟の蒸留効率は今期も目標値を上回った。

> 補充要員の平均就労期間は前四半期比で1.4倍に伸長。

> 「目が合う」現象については継続的に記録しているが、作業効率への影響は軽微である。

> 眼球の除去を検討したが、素材の悲鳴純度が低下するというデータが出た。

> 素材は「見られている」と知覚することで純度が増す。

> したがって目は残す。

> これはコスト削減でも温情でもない。最適化だ。

> I'm lovin' it.


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