18話 転生でないのなら...その意味は? 前編
「ヤッパリそうみたいね」『あぁ...と言うか覚えがあるよ』「そうなの?!」
そう言って耕助が指差す部分では、私は自然に自分の事を〝僕〟と言っているように見えた。
『実際セシルが自分の意志で僕と言ってる場面では、前後に〝意識して〟みたいな枕言葉が置かれているし...』
耕助の言う事に私は同意しつつ、他にも何か無いか探していると
『ほぅ?コレが6CHかぇ?』『そうそう、昔はココで良く遊んでたんだよなぁ』
三歳とリアが、何やら意気投合している。ソッチが気になり少しだけ右の聴覚をむけていると
『懐かしいな。僕が生きていた頃は3CHだったよ』『確かにそうだったな』『なんと!?そんな前からあるモノなんじゃな?』「何よ!?皆ソッチに居るじゃない?!」『セシルもじゃろうが!?』「聴覚だけね」
耕助まで覗いていた。まぁ私が三歳の身体を預かり、耕助が魂の回廊から日本側を観るのなら...三歳が私の身体に収まるしかないので、リアと接触するのは自然の流れなのだが
(まぁいいわ)
そう思って1章の終わりに近づくと
「ねぇコレ見てよ」『...ソレにしてもネット掲示板は荒んどるのぅ』『いや、そーゆー場所を今覗いてるだけだから』『そうかい?僕が居た頃はこんなモンじゃなかったよ?』『ソレは言葉使いだけだぞ?内容は今の方がえげつないわ』「そうよねぇ〜...昔はヤンチャしてただけで、本当にそうなって欲しかったわけじゃ...って違う!」『『何が?!』』『ひゃっひゃっひゃ!』
私は違和感に気付きソレを耕助に聞こうと思ったら、思わずアチラに引き摺られてしまった。
リアに笑われながらも私は気になった部分を見つめながらもう一度耕助に問い掛ける。
「耕助、ココ見て」『どれだい?』「私が今見てる所よ」『...ん?俺?』「そう!私、自分の事〝俺〟って言ってるのよ。しかもその事をちゃんと覚えているわ」
そう言って私は当時の事を思い描いてみる。アノの時私は感情が爆発して抑えていた男としての自分が解放されているように感じていた。だがアノ時の口調〝逃げんじゃねぇ〟とか〝貴様〟とか...
(演じている時でさえ使った事は無かった)
ソレはそうだろう。貴族としてそのような言葉使いは有り得ない。貴様...は有り得るが響く抑揚が違った。
『コレは...僕も覚えている。感情が爆発して...確かにこの時、セシルの父が言った〝散らされた悪意〟は...君と共鳴した僕の意識だったと思う』
「共鳴?」『あぁ、覚えてないかい?あの時多分...僕たちの意識は混じり合っていた』
耕助に言われ、更に記憶の奥へと意識を向けてみる。確かにあの時自分の中で何かが違った。さっきは解放されたのだと思ったが、耕助の言葉を聞いて...今は私も、アレは魂の一体化だったと思う。
『ソレならば耕助が転生して間もない頃、自分を切り離したのは不幸中の幸いだったやもしれんの?』
「えっ?」『どういう事だい?』『あぁ...そうだな』「三歳は分かったの?!」
リアの言葉の意味が分からずにいると、三歳だけは理解したようで、ひとり嘆息していた。
私がどういう事かと聞いてみたら
『耕助とさお姉たちの事を考えたら...ね?』『...三歳君』
言葉を濁しながら言う。だが彼女たちにとって、私が耕助の記憶を持つ別人であった場合...今のような関係性は構築出来なかっただろう。現に耕助は三歳の言葉を聞いて、感情が揺れ動いている。
『もしそうなってたら...また沙織は、泣く事になってたろうな』
沙織だけじゃない。純玲や恵子さんも...
実際泣くには泣いたが、意味が変わる。もし、私が物語で出てくるような前世の記憶を持つ転生者なら、彼女たちは今ほど明るく笑ってなどいないだろう。
多少喜んだかもしれないが、その後また...悲しみに暮れる事になる。二度目の別れを告げられるようなモノだ。私と話をしても、ソコから生まれる言葉は全て過去の出来事なのだから...
『すまない。変な空気にしてしまったね』「あら?珍しく空気を読んだわね?」『...相変わらず君は酷いね』
『ソレがセシルじゃからの』「ちょっとリア⤴?!」『いや、今のは仕方ないだろ?』「三歳まで!?」
ガチャ!「ただいまぁ〜」
そうやって魂の回廊と意識の狭間で騒いでいたら、あの女が帰って来た。
『まだあの女呼びするの?』「そう呼びたくなる事がコレから起こるでしょ?」
耕助の悪態に未来予測で私が反論すると
「何観てんのよ?」「三歳の小説」「そんな事してる暇あんの?」「私と耕助で観てんのよ」「あっ!そうなんだ♪」
案の定予想通りの行動を取る沙織。まぁ、隣に来て覗き込むとまでは思っていなかったが...
「最初から読んでたの?」「そうよ」「ふ〜ん、何で?」「...何故私と耕助が一般的な転生者と違うのか考えてたのよ」「...は?」
まぁ分からないわよね。そう思って説明しようと思ったが、私はその説明を耕助と入れ代わる事で回避した。実際私から聞くより耕助から聞く方が彼女も聞きやすいだろう。私がそう思っていると
『言い訳がセコいな』『ホンにのぅ』「何でよ!?」
二人に手抜きだと突っ込まれてしまった。しかも何故か三歳は私に身体の主導権を明け渡して、耕助の方に意識を向ける。
折角気を利かせたのに...そんな風に考えながら、三歳やリアの言葉を反芻していると
「あ!コレ、お姉様の暗号で使われていた文字ですわ!?」
「確かにそうだな...」「本当にお姉様は日本人だったのですね」
いつの間にかランシェがやって来て相互風景投影板(モニター画面)を覗き込んで来る。
(あっ!三歳は妹から逃げたわね)
そう思っていると、画面越しに見えるスマホが突然消灯した。
(寝るのじゃ)
しかも一方的にそう宣告し、リアは眠りに就く。
「あらあら?どうして暗くなってしまったのですか?」
「疲れたから寝るそうよ」「えぇ〜?!早くないですか?」
不貞腐れながら言うランシェだが、ソレを見たゲビックは「俺も寝る」と言って自分の寝所に向かった。
「もぅ!叔父様まで!!」
今度は頬を膨らませて感情を顕わにする妹に
「二人とも疲労が溜ってたのよ」
「ソレでもまだ夕方ですわ」「ゲビックは最近寝不足だったから、ね?」
私が諭すように言うと
「何だか子ども扱いされてる気がします」
「頬を膨らませて不満を口にする子はお子様ですよ」
今度は拗ねたように言うランシェ。私はそんな妹の頭を撫でてお子様扱いしたが...
妹は満更でもない表情を浮かべ甘えてくる。
そんな妹に私が自室に戻ると言うと、妹は尚も甘えながら...私の腕を掴んで歩き出した。
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