17話 繋がる夢想?
「ちょっと耕助!何で急に私が赤ん坊の頃の話をしだしたのよ?!」
急に三歳の気配が穏やかになり、気になったのでちょっと覗いてみたら...
なんだか恥ずかしい話をしているじゃない!
『いや、赤ん坊なら何も不思議ではないよ?』
「不思議かどうかなんて関係ない!そーゆー話じゃないでしょ!?」
そう私が抗議すると、耕助が反論してきた。
『セシルのお陰で僕は君を無事他人だと認知出来たからね(笑)』
「ソレとコレがどう関係あるのよ!」『あるとも』
そう言って耕助が言ってきた内容は
『他人だと思えたから、赤ん坊の頃のセシルを自分事だと思えなくなって今...三歳に語ったんじゃないか』
「意味分かんない!」『ぶはっ!』「三歳ぇ⤴?」
正に他人事として、私の恥話を披露出来たのだろう。
『君にとってコレは嬉しい話じゃないのかい?』
「出来事としてはね!ソノ内容が適切じゃないの!」
『でも、最初の出来事だよ』「ソレはそうでしょうけど!?」
どうやら転生?した直後の話がしたかったみたいだ。でもどうしてそんな話をしているのか尋ねてみると...
魂の回廊が私たちと違って耕助はさほど怖くないらしく、その経緯を三歳に語っていたようだ。
「それなら私にも聞かせなさいよ」
『まぁ三歳君に語る以上、君がその気になれば僕の許可なんて必要ないんじゃないかな?』
「そうだけど、そうじゃないでしょ!そーゆートコを直しなさいよ!!」
私が知るのにこの機会を逃せば二度手間になるので今一緒に聞いてしまおうとしたら、コイツはまた屁理屈を捏ねてきた。
やっぱりコイツには人の感情ってモノがイマイチ備わってない。正直ホムンクルスのリアの方がよっぽど人間味がある。そう思っていると
『セシル、耕助はそういう特性だって忘れたのか?努力はしてると思うぞ?』
「...あっ」『構わないよ三歳。セシルってこういうヤツだから』「ちょっと!?」
三歳に窘められた。その事で私が反省しようとした瞬間...耕助が間髪入れず悪態を吐くモノだから、私も耕助にツッコミを入れてしまい謝罪をする機会を逃してしまう。
『なんか耕助ってセシルには当たりがキツイよな?』「そう!ソレよ?!」
三歳が耕助に疑問をぶつけたので、私もソレに乗っかる事にした。そうやって有耶無耶にしてしまおう。そう思って賛同した。すると
『何だろね?他人だとしても、家族ではあると思ったからじゃないかな?』
『あ〜妹的な感じか』『そうだね』「えっ?何で妹なのよ?」『は?』『あはは!』
三歳が妹扱いし、耕助が笑う。だが、耕助が何故そう思ったのかは何となく分かった。なので抗議はしたが、不快ではない。それよりも三歳にひとこと言ってやろう。
『僕から見て、セシルが妹のように感じるのは仕方ない。その理屈は三歳君にも分かるだろう。でもセシルが僕を兄と思えないのは、僕の存在を知ったのがコッチだからじゃないかな?』
『...?』「...あっ!そうか!?」『今ので分かったのか?!』
そう思って私が念話する前に、耕助が先に言ってしまった。しかも私が三歳に言おうとした事よりも分かりやすく...まぁ、それでも三歳には伝わりにくかったみたいだが
「要するに、私にとって耕助は前世の記憶でしかなかったのよ。勿論クランディアに居た頃はね」
『成る程な...って事はセシルにとって耕助は単なる記憶でしかないと...』
「ちょっと前までの話よ!?今は違うからね?!」『ははっ...』
なので私が三歳に補足説明をしたら、三歳は理解した上で巫山戯始める。
そんなやり取りを耕助が笑って受け止めた後、三歳はそろそろ話の続きをしないかと耕助に催促した。
『そうだね...』
そう言って耕助が再び語りだした、私が知らない私の過去...
それは至って平凡な、当たり前の子育ての記憶...であると共に、ソレを施される感覚の伝達。
「イ、イヤ...もう止めて」
実体験を語る耕助だが、自分の身に起こった出来事だと認知する私に対して
『ソレは災難だな。確かに自我を封印したくなるのも分かる』
『だろう?』「もう分かったから止めて頂戴!」
三歳は想像しながら身震いする。そう...想像だけで済むのだが、私は更にその先
『拭かれてる感覚も、母乳を吸ってる感覚もあるのに...自分の意志じゃないんだよ』
自分の意志じゃない=本能のまま動く赤ん坊。でもソコに私の記憶は無い。
その所為で続く耕助の言葉が、なんかすっごく恥ずかしいのよ!いい加減もう止めて欲しい...と思っていると
『だからかな?自分でどうにも出来ない、感覚だけの世界に居続けるのに疲れた僕は...気付けばずっと、惚けていたんだよ。そしてその状態にも慣れてしまった時には、もうなんの感情もなく眠り続けていた。そんな感じだよ』
やっとオムツ交換や授乳の話が終わった。そうして私が寝返り以外の行動を取りだした話を始める。
『それでも普段と違う事をセシルがやりだした時は、僕も起きて楽しんでたみたいだけどね。ソレが多分、夢を見てる感覚だったんだよ』
その時の様子を話す耕助に、私は一言添えた。
『例えばつかまり立ちを始めた時なんて、イキナリスクワットしだしたからね「あんだった!あんだった!って」...?!』
「ちょっと耕助?!私〝あんだった〟なんて言ってないわよ!?』
すると私の思惑とは別の方向で耕助は驚き、三歳は少しだけ困惑する。そして
『あぁ!だから〝あんだった〟って掛け声だったのか!』『そうみたいだね』「どういう事よ?」
急に三歳が手を叩きながら納得し、耕助がソレに同意した。だが、何の事か分からない私に三歳は
『小説の10話から11話の中でその〝あんだった〟って描写を入れたんだよ』
そう言って小説の一部分を見せてくる。ソコには〝あんだった〟と言いながらスクワットする私と、呆れながらソレを見ているアヴェイルのイラストが描かれていた。
「三歳まで...」『みたいだね』
私が三歳にまでそんな風に見られてたのかと意気消沈すると、耕助が釣られて失笑する。
だがココで、三歳が気になる事を言い出した。
『一つ気になったんだが』「何よ?まだ何か馬鹿にするつもり?!」『別に馬鹿にはしてないんじゃないかな?』『俺が言いたいのは...セシルが日本に来る前に、俺が夢で見ていた世界は耕助目線じゃないか?って事だよ』「『えぇっ?!』」
驚いた私と耕助だが
『その...三歳君の書いたっていう小説、僕に見せてもらう事は可能かい?』
『あぁ、いいぜ』「そう言えば、私はチラッとしか見てないわね」
私よりも先に、耕助が三歳に提案する。了承する三歳に私も好奇心が抑えられず、興奮したせいか思わず入れ代わってしまった。
『セシルぅ⤴?』「ゴメン」『まぁ丁度良かったじゃないか』
条件反射的に私は三歳に謝罪したが、耕助はその方が都合が良いと言う。
確かに三人で視覚共有は出来ないので、私が読み耕助が覗き込む事に...
そうやって小説の1章を読み返してみると...
三歳が言った言葉は、どうやら的を射ていたようだ。
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