12話 少しづつ落ち着いてきた環境
『って何で恵子まで撫でとるんよ?!』『うぇ!?』『今頃ぉ〜』
そんな念話を聞きながら私は
「コレ、どういう状況?」「なんじゃ?今まで参加しとったではないか?!」「いや、セシルの身体を完全放置は出来ないから、俺とセシルで共同管理してたよ」「...器用な事をしとるのぅ?」「リアには負けるけどな」「当たり前じゃろ!と言いたいが、地味に我に出来ん事も(二人は)しとるぞぇ」
ドチラに聞くでも無く質問するとリアが答えにならない回答をし、そのツッコミには三歳が答えた。
因みにリアに出来ない事とは、私と三歳...両方の深層心理を同時に読み解く事。どうやら五感を用いた感覚を同時に観測は出来ても、私や三歳の感情を理解しようとした時はどちらか一方の処理しかできないらしい。更に言えば、耕助の居た場所...今は感覚的に私と三歳の魂の隙間とでも言うような場所に居る時、リアはいつものように思考が読めないらしい。だが例外はあって私と三歳がそれぞれの身体に居ても、互いに意識を向けている場合は両方同時に読めるそうだ。と言うか耕助が目覚めるまではソレが当たり前で、気付いたのは耕助がどちらか一方の身体を使いだしてからなのだが...
「とりあえず、三歳側は任せるわ」
『いや、三歳君やリアは兎も角、セシルは最初から役立ってないよ?』
私は自分の身体をコントロールする事に専念すると告げる。すると耕助が辛辣な物言いをしてきたが、反論出来る言葉は思いつかなかった。
「「お姉様?」」「...あぁ、何でもないわ」「やった♪私にも分かりましたわ♫」「???」
そして眼の前で私の顔を覗き込んでいたランシェとクレアが呼びかけてきたので、何でもないと言ったら妹は手を叩いて喜びクレアも笑顔を向ける。
「さっきお主の身体が蛻の殻じゃったからのぅ。その時の様子が、ちと怖かったのもあるじゃろ」
「確かにね。私もビックリしたわ」「我もな」「そうなの?」「当たり前じゃわい!?」
正確には蛻の殻と言うより気が抜けているような状態だったのだが、それでも完全に三人の意識がどちらか一方に寄ってしまうと側で見ている者からすれば、突然意識を失ったように見えるらしい。
「多分味覚だけでなく視覚や聴覚もアッチに向けた所為ね」
「嗅覚と触覚も向いとったわぃ」「...それもそうね」
味見だけでなく沙織や恵子の様子も気になってしまった為、結果的には三歳や耕助と入れ代わった事になる。そこで私はリアに気になった事を聞く。
「私たちが皆三歳の身体に意識が向いてた時、魂はどうなってたの?」
「魂魄自体は変わらんよ。じゃが意識の元?とでも言うべき存在は分散しておったようじゃの?」
分散?ソレはどういう事なの?と思っていると、リアはさっき三歳が言っていたシェア...アレが表現としては正しいのではないか?と言ってきた。
「三歳の体感ではお主が放棄している時は三歳が支え、お主が返って来たら預けておったそうじゃぞ?」
要するに私が三歳の身体側に意識を持っていってる間は、三歳が私の身体を預かっていたらしい。
逆に三歳が自分の身体に意識を持っていく時は、私がどの程度自分の身体に意識が向いてるか確認しながら動いていたそうだ。
「さっきリアは器用な事してるって言ったけど、ソレが出来てたのは三歳のおかげなのね」
「キッカケはそうじゃが、お主も無意識ではあるがやっておったぞ」
確かに言われてみればそんな気もするが、それも三歳のエスコートがあったからな気がする。
そしてソレに近い事をしているリアが、今どうなってるのか気になったので私は
「アナタはどうなの?今三歳側も観てるんでしょ?」
「そうじゃな...今はアヤツを視ながら自分の身体を動かしている。それだけじゃな」
リアに聞いてみた。するとその答えは割とシンプルで、感覚的には念話しながら作業している時に似ていてる。
「その状態の時に私の思考は読んでないのね」
「無理じゃな、同じ魂でも別の場所にあるからの」
リアが言うには思考まで読む時場合、心理的距離が近くないと出来ないらしい。
「我は今、三歳の側に自身を自分と定義する...例えるならお主らの持つ魂とでも言うべきモノを置いてきておる。そしてソコから、今この身体を遠隔操作しておるような感覚じゃ。なのでお主の思考を読もうとすれば、その瞬間我は三歳との接続を解除しお主の意識へと潜り込む事になるじゃろう」
「面白いわね。心は見えないけど、意識として三歳側にあるか私の中にあるかは感覚として分かるわ。しかも互いに念話する時、そのどちらでもない場所に居る感覚もね」
そんな事を声に出してリアと話していたら
「まるで通信中のクレアを見ているみたいですね」
「ふぇ?!私ですかぁ〜?」
ランシェが私の顔を覗き込みながら言い、横に居たクレアが驚く。
「そう言えばココ食堂だったわね」
「あれ?移動中は耕助様でしたが」
私の呟きにランシェも小首を傾げながら自問するよう呟いた。
「そう言えばあの時三歳様はどうなさってたんですか?」
「三歳は自分の身体に居たわよ。アッチでちょうど買い物に出かけようとしてたかしらね」
そう聞いた瞬間二人は
ガタッ!ガタタ!!
「「その間お姉様はどうなってるんですか?!」」
「えぇ!?私は...」
目を見開き、衝撃を受けながら席を立つ。二人揃って私の顔を覗き込みながら質問してくるその勢いに圧され、私はちょっとだけたじろぎながら答えた。
「そうなんですね」「へぇ〜!そんな感じなんですねぇ〜」
二人には魂の回廊とでも呼ぶべき場所の説明を...元耕助の居た傷痕のような所、ソレが今どのような場所になっているのかを伝えた。その在り方を最初から告げると、次に耕助がコチラで話す時足枷になる気がしたから...
先程三歳の身体だったとはいえアチラで夕食を取ったせいか、あまり食欲が無くコチラではあまり食が進まなかった。
身体もクランディアに居た頃と比べ、ほとんど動かしていないからだろう。
それでも水くらいなら問題ないだろうと三歳が機転を利かせてくれたおかげで、シャワーを毎日浴びるくらいは出来るようになった。まぁ気化した時の事を考えて、沸かす事は出来ないのだが...
シャワールームから自室へと戻ってベッドに横たわりながら、尚も続けて私は思考を巡らした。
有り難いことに、日常の手助けにはなっている。特に洗浄と冷却に関してはサイズ差を全く気にしなくても良いのだ。
各設備の排熱用冷却チラーを一部循環させずに、熱を帯びたまま洗浄水として使用する。
ソコで発生した蒸気は他の設備から出る有害な気体と共に外部に放出するのだが、ソレを水槽内でやる訳にはいかない。
だから水槽外へと放出するのだが、コレもサイズ差のおかげでほとんど影響など無いだろう。
とはいえ室内に垂れ流しは気になるので、ある程度貯めてベランダから捨てている。
「生きる為の環境作りか」
そんな事を考えながら
「明日は、(呼吸する為の)土いじりね」
ランシェが持ってきてくれた土と種...明日はソレラを敷き詰める作業が待っている。
「三歳たちに首をツッコミ過ぎるのも大概にして、そろそろコッチも真剣にならなきゃね」
どちらにしろコチラでの活動はまだ先だと言う事も踏まえて、自身の生活環境を整える為にも体調を考慮しつつ私は眠りに就く事にした。
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