5話 外れた思惑と満たされぬ好奇心
「誰だ?四番機!?止まれ!」「止まりませんわよ?」
「発進許可は出てないぞ!って四番機...エマ様の戦甲翔じゃないか?!」
うふふっ...要塞基地でやったら始末書でしょうけど、日本でなら大丈夫よね♫
そんな事を考えていると
「大丈夫な訳ないでしょう!」「あら?声には出して「無くても分かりますよ!」流石ね、カーウィン♪」「全く...無駄な事は止めて早く戻って来て下さい」
カーウィンに怒られた。だが、久しぶりに会ったカーウィンは私の事を忘れたみたいね。
そんな台詞で止まる私じゃないし、昔の彼なら言葉ではなく行動していたわ。
ウィーン...ガヅン
私はそんな彼らの制止を無視して、発着扉前に到達する。
(何か違う。機体が重い?)
戦甲翔の動作が鈍い...そう感じながら、計器類よりも作業者への注意を優先して私は機体を駆る。
ガッ、ゴ―――ン……ン―…
ハッチが開いたので私は外に出る。太陽とは違う、細長い発光体を目の端に捉えながら
「良し!フォルクラッセ ディハイリゲ...エマ=クランドール!出ま...す?」
掛け声とともに噴射気管の出力を上げようとするも...
「な!?どうして魔力内燃機関の出力値が非活性化を示してるのよ?!」
「それはこの日本が大きすぎるからだ。眼の前にその光景が、見えているだろう」
魔力内燃機関が沈黙していた。機体が重く感じたのは、魔力補助機関が無かったからなのか...その事に気付いた私は
「だからカーウィンは艦橋から動かなかったのね?」「あぁ、(ハッチに行く)必要が無かったからな」「酷い人」「代わりは居るだろう?」「そんな事、聞いてません!」
相互風景投影板越しにカーウィンを睨めつけた。
私が素直に彼の性格の悪さを指摘したのに対して、彼は聞いても居ないのに要塞指揮を委任されたロイの事を口にする。
(結局私の事をロイに押し付けたいだけじゃない)
そんな事を思いながらも
(呼吸が出来ない事を失念していたわ)
私は魔力増幅拡張機能が機能しなかった原因に、今更ながらに気付かされる。
「帰投します」「特別ルームを用意してお待ちしていますよ」「はぁ?!何を馬鹿なことを「したのはアナタですよ?」だからどうして?!」
その続きは...本当に独房で行われました。
「何をやっているのよ、アナタは」「申し訳ありません」
本当にランシェは...普段から突拍子もない事をやらかすけど
「今回は不発で良かったわ」「......」
気を抜くのが早すぎるわ。
「軍務規定違反...いくつやらかしたか分かってる?」
「そ、それは!私にだって「任務指揮権なら私の元に来た時点で無くなってるし、裁量権を主張するには早すぎるわよ」...そんな!」
これで中佐は失格でしょうよ...
「はぁ...アナタねぇ、交戦規定の事を言いたいのでしょうけど、今ソレが必要?私の方に(連絡が取れない状況等)不備があったとでも?」
「あ、ありません」「なら、独房でしばらく大人しくしてなさい」
私がそう言うと、妹は言葉を失ったようだ。そんな妹の顔を見ながら、私は足早に艦橋へと向かうことにした。
「お、お姉様?!ちょっと厳し過ぎませんか?お姉様?お姉様―――…」
後ろから妹の断末魔が聞こえるが、少しは良い薬になるだろう。
『人の事は言えんじゃろうに』
「そう言いながら、どことなく嬉しそうなのはドナタかしら?」
このタイミングで念話してくる辺り、どうやらリアは何かでこの事態を知ったらしい。
「知るも何も、うるさくて気付かんほうが可怪しいわい」
「あら、こんな所に居たの?」「待っておったのじゃ」
しかも知ってから私を観察していたみたい。
「いつもの事であろ?」「そうね」
まぁ...リアに覗かれるのはいつもの事なので、気にはならないが...
『アナタは別よ!』『おや?どうしてだい?僕もいつも通りなのに』
耕助だ。コイツは自覚が無いみたいだが、覚醒してから存在感が出た。増したってレベルじゃない。
『それはお互い様だよ。セシルたちも僕を認知したからでしょ?』
『そうか!我が検知する事で、セシルが嫌でも気付いてしまうのじゃな?!』
どうやらリアが犯人らしい。だが耕助に非が無い訳でもない。
『『どうしてなのじゃ!?』』「当たり前でしょ!」
二人の突っ込みに(イヤ、耕助の方は半分ボケに感じながら)私は思わず声が出た事に反省しつつ
『たとえリアが居なくても、アナタの存在感が増した事は事実でしょ?!』
『そういう事かぇ』『それでも君が僕を嫌ってるから、余計そう感じるんだろう?』
耕助にだけ反論したが、どうもソレが良くなかったらしい。
『誰も嫌ってなんかいないわよ』『じゃあ好きなの?』『そんな訳ないでしょ!』『止めておけセシル、忘れたのか?』『あぁ...』『ソレを持ち出されたら、僕は反論出来ないね』
(あのねぇ)と言いかけて止めた。私が耕助の事を自分の前世として(共感出来る)(理解出来るよ)と言っても彼には共感出来ない。理解は出来ても...ソレが分かっているから
『諦めなさい...って言われなくても解ってるんでしょ♪』
『あぁ、そうだね。でも一つだけ...君たちが僕に気を使ってくれている。ソレは分かってるから』
私は冗談めかして耕助に言葉をぶつけた。そうすると、耕助もソレに応えてくる。
そんなやり取りをしている内に、私は艦橋に到着した。
「お姉様ったら、ヒドイ」「酷くないでしょうよ」「サミー!」
私が独り言のつもりで放った言葉をサミーが直に否定してきた。
「どうして独房に?」「昼食よ、食べたくないの?」
(食べたくはないわね...美味しくないから)
私が言葉にせず、心のなかでそう思っていると
「なら持って帰るわ」「待ちなさいよ!誰も食べないとは言ってないわ!」
サミーが本気で立ち去ろうとした。
「だったら素直に食べたいって「アナタ、分かってて言ってるでしょ?」...えぇ勿論♪」
しかも私をからかって楽しむ始末...私はそんな彼女に
「要件はこれだけ?何か他に目的があるんじゃないの?」
「勿論あるわよ」「ふ〜ん、ソレは何?」「ソレはねぇ...」
私がサミーに何か目的があると本気で尋ねたら
「(要件は)何もないのですかぁ〜〜〜〜……」
「あるわけ無いじゃない。私は【悪魔族】よ♫」
彼女の目的は私の傍でサボる事だった。
「失礼な、給仕しに来たじゃない。自分の主に」
「都合良く解釈しないで!」「そうかなぁ〜?」
コイツはぁ〜
彼女が【怠惰を貪る者】である事をまざまざと見せつけられるも、ふと疑問がよぎる。
「アナタ、独房の通路前なんて、寒いし暇でしょう?」
「それなら大丈夫です」「はい?」
コツコツコツ……
そう言って彼女は誰も居ない看守部屋へと入っていった。
「アナタねぇ―――……!!!」『うふふっ...最高♫』
私はこの時、やはりトイフェラッセは悪魔だと、実感したのでした。
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