31話 羞恥心が止まらない
「ふんふ〜ん♪」『ご機嫌じゃのう?』「まぁねぇ〜♪」
私が鼻歌まじりに着替えていると、リアが指輪越しに念話してきた。
「お嬢様がここまでご機嫌なのは、軍学校以来かかもしれませんねぇ〜」
クレアにそう言われて「そうかもしれないわね」と何気なく返す。
リアの念話が聞こえていないクレアにさえ、そう言われたのだ。
確かに胸の支えが取れたような爽快感が、胸の奥から感じられ...
「耕助が居ないからだわ!」『『ソレは酷くないかい?』』『わひゃひゃ!?』
『『三歳君?』』「...ちょっとお二人さん?」『『ビクッ!?』』
私の何気ない一言に過剰な反応をする二人を視て、いつも通りの笑い声を上げるリア。耕助は三歳に抗議の声を上げているが、私に言わせれば同罪である。
『別にお主の着替えを覗いてはおらんぞ?』「分かってるわよ!」『やれやれじゃのう』
「なんだかリア様以外の心の声が増えて、お嬢様も大変ですねぇ...」
私の声しか聞こえないクレアからすれば、今まで独り言の相手はリアのみだった。それがつい最近三歳とのやり取りが増えた所に、耕助まで加わったのだ。正直理解が及ばないのは当然だろう。
「クレア、分かってると思うけど...何を話してるかを毎回説明する事はしないわよ」
「大丈夫ですよ♪今のは大体分かりますから♪」「分かるの?!」
そう言ってクレアに聞いてみると...
「どうせお嬢様がさっき言った耕助様が居ないって言った事に、耕助様と三歳様が抗議なさったのでしょう?それをお嬢様が一喝なさった事に、リア様が苦言を申し上げて...逆ギレ?っていうのをなさったんですよね?」「うっ?!」『ほれ!?クレアにまで見透かされておるぞぇ♪』「うっさいわね!」
まるで目の前で見てたかのようなクレアの言い分に、私が言葉に詰まるとリアが調子に乗って言い募る。
そんなリアに思わず私が言い返すと
「またリア様に逆ギレですかぁ?」「うっ?!っく!?」
クレアがクスクスと笑いながら、続けて私とリアのやり取りを見透かしてきた。
『まぁ...日常会話なんぞその程度であろう。そこまで驚く事でもあるまいて』『それはそうね』
クレアがまだこちらを見ながらクスクス笑っているので、私はリアに念話で答えた。
『それよりも...アナタ、これからどうするの?』『『...僕?』』
『耕助よ!三歳な訳ないでしょ?!』『『(...分かんないよ...)』』
三歳は環境変わってないけど...耕助は意識を取り戻して(環境が)激変したんだから、これからどうするか考えないといけない事がどうして分からないのかしら...
『それはお主にとってはそう思わせる状況であっても...三歳や耕助にとっては、状況が変わったと言うほどには感じられんわい』『はぁ?!ふざけてるの?そんな訳ないでしょ?!』『『どういう事?』』
私が憤慨した事に、リアはやれやれとでも言いたげな感じで、二人に説明しだした。
『三歳は兎も角...耕助よ、お主は今まで意識が微睡んでいたからセシルと共に居れた事を自覚せい』『...?どういう事だい?』
寝ぼけてるの?と思いながらも、私はリアが耕助に続けて話しかけるのを待つ。
『ふぅ...やれやれじゃのう。お主、沙織や純玲が目の前で着替える所をその場で見届けれるのかぇ?』『する訳ないじゃないか!?』
『なら私のは覗いていいの?!』『セシルは僕じゃないか?!』『(耕助が)何言ってるか分からないわ!?』『そういう事かぇ...難儀じゃのぅ』
リアは今のやり取りで何か分かったようだが、私には何の事かサッパリ分からない。すると
『耕助さんは男なんだから、セシルがセクシャルな行動をする時は配慮しましょうって事ですよ』
三歳が何かを説明しだしたが、私は一つの言葉に引っかかる。
『『セクシャル?』』『三歳よ?この二人の脳みそが昭和な事を忘れるでない』
『嗚呼...(お年寄り)』『『失礼な事考えてるでしょ?!』』
私と耕助が同じ言葉に反応した事に、三歳とリアが二人してポンコツ扱いしてきた。
抗議する私たちを余所に、再びリアが解説しだす。
『着替えや用を足す時は、席を外せという事じゃよ。勿論風呂もじゃ』
『...すまない。やっと意味は分かったんだが、セシルの場合ずっと自分でやってきた感覚だから...子どもの頃から見慣れたモノだから、今更感が...』
その耕助の言葉に、私は少しだけ恥ずかしくなる。耕助が前世で自分の身体を見ていた感覚と、私の身体を観ている感覚を重ねたからだ。だがその後、私と耕助は強烈な恥辱に襲われる!
『『三歳ぇ〜?!』』『仕方ないだろ?!文句は耕助さんに言えよ!?』
『ぶっ!ひゃひゃひゃ...これは、どうしようもないのう♪』
そんな、途轍もない恥辱に、私が悶え苦しんでると
「それも...日本の...踊りなんですか?」「そんな訳無いでしょ!?」
クレアの見当違いな疑問に私は即答しながらも、悶える事を止める事が出来なかった。
(なんちゅうモンを観せるんだよ)
先程のやり取りを終え、リアの簡易的な説明にセシルと耕助さんがそれぞれ自身の過去を思い描いた時...
耕助さんは兎も角、セシルの着替えやトイレ、入浴は
『見てしまうとでも、言いたいのかしら...』(ビクッ!?)
「不可抗力だろ?!」『しつこく反芻しないでよ!?』(ぐぁ゙〜!?)
そんな事言われてもよぉ〜…
申し訳ないとは思うが、考えないようにしようと思えば思うほど...
『分かるよ...三歳君』「だったら(セクシャル)を追加するの止めて下さいよ!?」『はぁ?!』『違うんだよ!これは三歳君が僕に観せるから更に過去を引き出されてしまってね?』「俺のせいですか?強制的に見せられて!わいせつ物陳列罪ですよ!?」『悦んでた癖にそゆ事言う?!』「悦んで『ないって言えるぅ?!』ぐぁ゙〜念話止めてぇ〜〜〜〜」
もう...収拾がつかない...
『三歳よ...ソレ...念話じゃない』
リアが笑いを堪えながら辛うじて送ってきた念話に、俺たち三人は絶望する...
「『嘘だろ?!〜〜〜〜〜〜…』」『(ふっ...』
セシルは女性として、俺は男性として羞恥に苦しむ中...
耕助さんは何故か一人、諦めの境地にいるのだった。
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