28話 深まる絆と変わらぬ関係
突然悪寒にも似た戦慄が自身の身体に流れ込む!!!
『セシル!?』
我は慌てて振り返る。するとそこには見たことのないセシルの姿が...
以前身内を失った時、セシルは大きな悲しみを抱え泣いておった。その涙は純粋に悲しみにくれておった。しいて言うならその時家臣共の在り方を見て、少しではあるが感謝の念から来る歓びに打ち震えてすらいた。そんなセシルが今は...
「ご、ごめん...なさい...」
悔恨の念に喘いでおった。その姿にクレアを始め、アヴェイルやカーウィンまでもが狼狽する。
それはそうじゃろう。セシルが産まれた時から彼奴らは共にセシルと過ごしており、一度も挫折はおろか本気で嘆いておる所すら見たことが無い故に...
じゃが我はこやつの精神を知る事が出来る。幼少期から思考を読み解き喧嘩もしてきた。だからこそ
「謝るのは、我の方じゃ...」
セシルの言葉にならない心中を視た我は
「大丈夫じゃ!我はそこまで傷ついとらん!お主も知っとるじゃろ?不幸は不幸と知った時に実感すると!我は不幸を知った瞬間に、三歳に救われたんじゃ!じゃからお主は気にせんでえぇ!」
我はまず右往左往する臣下どもを落ち着かせるべく声を出す事で状況を伝えた。
伊達に長年苦楽を共に過ごしておらぬ。我の真意は分からぬにせよ、何をすべきかは感じ取ったようじゃ。
「済まなんだ。此処に来て、お主がどれほど落胆したか...それを知っておる我が、まさかその元凶を彷彿させるとは...」
思えばここまで苛烈な人生を歩んできた。
普通なら耐えられない重圧に...何故かこやつはケロッとしており、我も不思議に思っておったが
思い起こせば確かに...こやつは自分の不幸には耐性があったが、他人の不幸には敏感だった。
そんなこやつがさっき視た我の眼は...
気付けば、我も泣いておった。嬉し泣きに次いで...我は今、セシルと同じ涙を流していた。
「ごめんなさい。リア、ずっと寂しかったのね」
「そうじゃ!我はずっと淋しかったんじゃ!!じゃが...我はソレに気付かんかったのじゃ...」
セシルの言葉を我は初めて素直に肯定した。
「ごめんなさい」「もう良いのじゃ」
二人して涙を拭き笑顔を向ける。思えば素直に微笑みあうのも初めてじゃろう。互いに皮肉を込めて笑いあった事は幾度とあったが...
先程三歳に撫でられた時は愛情が止まらぬ感じじゃったが
今セシルに撫でられておるこの感じは慈愛に包まれておるようじゃ...
しばらくして、突然セシルが笑い出しおった。
「ふ、ふふっ」「!?...お主!えぇい!止めよ!!」
我はセシルを突き飛ばし睨みつけた。全くこやつときたらまたもやベビーシッターを気取りおって...!
「そういう所が気に入らんのじゃ!!」「はいはい♪」
「(ペシン!)じゃから止めよと言うとるんじゃ!!」
我等の様子を見て微笑む臣下どもを視界に捉えつつ、再びセシルを見ると幼少期と変わらぬ顔をしながら手を伸ばしてきおった。我はこやつの手を払い「止めよ」と言うも、こやつの意識は『可愛い』で埋め尽くされており...
「じゃから止めよと!言うとるんじゃあぁぁぁぁーーー―――!!!」
これが照れ隠しというものかと、自認する我の心が...今はむず痒くも心地よい。
『そうか...我は、人に嫉妬しておったのじゃな』
『違うわ。憧れてたのよ』
どうやら初めて、セシルに我の心を紐解かれたようじゃ。
『良かったな。リア、セシル』
セシルお漏らし疑惑を教訓に、俺は早めのお花摘みを提案したんだが...
思わぬ収穫を得たことに安堵する。
だが今はそんな事より
『耕助さん?!俺の身体返してくれませんかねぇ!?』
『うんまっ!やっぱ豚骨サイコー♪』『くそっ!聞いてねぇ!』
最近分かった事だが、どうやら強い意志力を発揮したほうが身体の主導権を握るようだ。
本来の持ち主に優先権が無いってのがどうにも腑に落ちないので、俺はリアに尋ねてみる。
尋ねて、尋ねて...訊ねて...!
『コッチもかよ!?』
リアに意識を向けた時、先程まで繋がっていた念話が途切れている事に俺は気付かなかった。
仕方なく途中でセシルに語りかけたんだが...
『ん?俺...今何処にいるんだ?』
違うことに気付いた。
普段セシルと耕助さんは同じ魂に同居で、俺は当たり前だが自分の魂だ。
なら...
『なぜセシルと耕助さんは別々の魂に居れるんだ?俺は今何処に居るんだ?』
セシルが自分の魂に戻っている状況で耕助さんが俺の魂に残ってる...
この状況に俺は理解が追いつかない。
『まさか...俺の魂は傷付いているのか?!』
俺は今自身の魂の傷に居るのかと、驚愕せずにはいられなかった...
『三歳?リアの事...ありがとね♪』『我からも改めて礼を言うぞ♪』
『うんまっ!やっぱ豚骨サイコー♪』『『...まだ食べてたのね』...ん?』
私が三歳に礼を言いリアもまた嬉しそうに礼を言った...そう思ってたら
『違うぞぇ?!こやつは耕助じゃ!』『えぇ?!』
リアに言われて三歳の魂に触れると
『本当だわ!?三歳は何処よ?!』『セシルの魂の傷に居らんか?!』
リアに言われ私は自身の魂の傷に強く語りかける!!
『三歳!?ソコに居るの?!』『セシル!?良かった...』
居た。しかも怯えているようだ。私は出来るだけ優しく彼に語りかける。
『どうしてそんな所に居るの?』『分からない』
憔悴している彼に、私は更に気遣いながら優しく問いかける事にした。
『何があったか教えて?』『あ、あぁ...』
彼が語る言葉を私はゆっくり飲み込んでいく。ただ...
『我にはセシルの魂の傷が視んの...』
リアには三歳の声は聞こえないようだ。
『...だから俺は...自身がそこまで傷付いてるとは知らなかったんだ』
三歳のマジトーンの独白?を聞きながら、私は笑いを堪えるのに必死になっており...
『セシルよ...今そんな心境になる場合か?』『...説明は...無理...』
私は取り敢えず試しに三歳と場所を入れ替われるか挑戦してみる事にした。
そして...成功した。
『良かったのう♪三歳』『あぁ!本当に良かった♪』
どうやら元々耕助の居た場所の声はリアに聞こえなくても、コチラが(三歳の聴覚を通じて)聞く事は出来るようね。
笑いを噛み締めつつそんな事を考えていたら、またリアと三歳の蜜月を味合わされるのかと...
そんな事が頭をよぎった瞬間と...
リアと三歳が結託した瞬間が重なった。
『セシルってたまに根性悪いよな!』『たまにでは無い!いつもじゃ!』
『ちょっと待ちなさいよ!?泣いてるリアと三歳を慰めたのは誰だと思ってんの?!』
『『慰められてない!!!』』
またもや仲間たちを置いてけぼりにしてじゃれ合う私たちを余所に
『旨かったぁ...』
と響いてくる耕助の感想に私は「良かったね」と一声添えた。
久々に捕捉:魂の傷では身体に居る魂と傷に居る魂、この二人が揃ってリアの存在を意識しないとリアは魂の傷側に居る者の声を聞くことは出来ません。しかし魂の傷側に居る方はリアの存在を感じれば本体側の五感を通じて知る事が出来ます(三歳はセシルとコンタクト出来た時リアを認知してなかった為リアの声が聞こえず、リアもまた三歳の声が聞こえなかった)
そんな感じですw
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