27話 セシルとリア(ふたり)の涙
恥ずかしがりながらもリアが通訳(するのが精一杯)しているのでfrançaisは日本語表記となります。
(味しない セシル とった)
僕はコップの水で指先を濡らし、沙織にテーブルを見るよう指差した。
ソレを見た沙織はモグモグしながら僕の顔、というより口を見ながら顔をしかめている。
尚も水で文字を書こうとすると、沙織はハンドバッグからボールペンとメモ紙を渡してきた。僕はソレを受け取ると
【セシルに口だけ乗っ取られた。というか...連動している気がする】
メモ紙にそう書いた。それを見た沙織は目を丸くして呆れ返る。
「嘘でしょ...ってその駱駝みたいな口見てたら信じるしか無いわ」
頭を振りながら奇妙なモノを見る目で「えぇ〜…」と小声でゴチる沙織を余所に
『ちょっと!もう(ラーメンが)無いわよ?いや、待って!今度はスープが、あっ!?餃子は頼んでないの?あるなら食べたいわ!』
「自由すぎるだろ!」「喋れるようになったの!?耕にぃ?!」
僕は思わずセシルに突っ込みを入れてしまった。だが...その拍子で今は自分の口が解放された事に気付き、僕は先程味わい損ねた味噌ラーメンを啜る。すると...ほんの2秒程度味がしただけで...また味がしない。
『ちょっと!忙しないわね...何でまた味噌味に戻って!?って耕助?!アナタ沙織とイチャついてんの?!』
「器ごと交換してんだよ!そんな訳?!...合ったわ。お前のせいでな!」
『意味が分からないわ。兎に角、餃子よ!餃子が食べたいわ!』
(セシルって、そう言えばこういう奴だったわ)
そう思いながらさっき咄嗟の事とはいえ、三歳君の体で僕は沙織とラーメンの器を交換したりあ〜んしたりしてしまったと今更気付いた。
僕は頭を抱えながらも餃子を一切れつまみ、タレをつけ『ほらよ』と念話しながら頬張った。
『美味し〜♪ここの餃子!梅干し?違う!紫蘇入なのね!ほんのり甘みもあって美味しいわ♪』
『味わう暇がねぇ』『アナタもう充分『味わってねぇよ!』...そうなの?!』
僕は取り敢えずセシルに身体を入れ代えようと提案した。だが
『沙織の顔見て食べたくない』
なんて言ってきた。
『どうしてだよ?!さっきまで大丈夫そうだったじゃないか?!』
僕がそう言うとセシルは『あの女の顔見て』と言ってきたので、仕方なく沙織の顔を見ると
(ぶっすぅ〜〜〜〜〜ーーー―――…)
とでも表現したくなるような顔をしていた。僕は思わず
「さ、沙織?!どうしたの?」「べっつにぃ〜〜〜〜」
沙織に声をかけたが、どっからどう見てもご機嫌斜めだ。だが...
「ふっ、ふふっ♪」「はぁ〜?!何で笑うん?!?!」
僕は笑ってしまった。懐かしくて、懐かしくて...
「耕にぃ...何で泣いてるん...?」
そんな僕を見て、沙織は心配そうに聞いてきた。僕は
「沙織の膨れっ面が、昔のままだなって...懐かしくて。その顔がまた見れて、嬉し泣きしちゃったよ」
「耕にぃ...の...馬鹿」
泣きながら沙織の顔を見て笑った。沙織もさっきまでの膨れっ面は消え失せ、涙ぐみながらも笑った。
『そろそろスープが飲みたいわ』「空気読めよな!」「やっぱあの女、キライ」
台無しだよ!セシルの他人事に僕も沙織も腹を立て、思わずテーブルを叩いてしまった。
『ごめんなさい』『............』
耕助からの返事は無いが、怒っているのは伝わってきた。私は調子に乗ってラーメンと餃子を強請っただけでなく、感慨にふけっている所を邪魔したのだ。
でも言わせてもらえば、そもそもさっきまで(うんまっ!?)一色だったのに、何処に郷愁に浸る暇があったのよ!と突っ込みたい衝動さえ湧いてくる。だが三歳の場合と違い耕助は感情がより強く伝わってくるので、言ってることが嘘ではないと理解してしまう。
仕方なく私は耕助の味覚Jackは諦め、再び三歳に意識を向けると先程よりは落ち着いているようだった。
『三歳?』『Chouchouって何だ?』
私が呼びかけると、いきなり三歳はfrançaisの意味を聞いてきた。
『いきなり何よ!?』『日本語には無い言葉って言われた』
私の問いにも答えずに三歳が更に聞いてくる。仕方なく私は猫のような愛玩動物や年寄が孫を愛でる感じと教え、無理に訳すなら【可愛い子】みたいな意味だと告げた。すると三歳が照れだしリアが
『やめよ...恥ずかしい』
いや、イヤ、いや、イヤ!!!
誰だ?!そこに居るのは?!私は声にならない声を上げてしまうが...ん?
『リア?』『......』『...ぇえ!?』
何だ?!私はリアの初めて取る態度に驚きを隠せないでいると
『三歳...恥ずかしいからあまり我にChouchouと言うでない♪』
デレてる?!そういえば三歳を呼べと言っていた時、珍しく〈そわそわ〉していると思ったが...
(そわそわぁ!?)
驚き戸惑っている私に気付かず尚も心境?を語ってくる三歳を余所に、私はこれまでリアと過ごした時間を知らず知らずのうちに振り返っていた。
いつも人間をどこか冷めた目で見て、なんなら少し小馬鹿にしているとさえ思える態度を見せてきたリアが...そわそわしていた!?
今思い返せば、リアは三歳に興味を抱いていた。だが...どちらかと言えば、昔私に見せた「他の人間と違うといえど、やはり我をそんな風に使うのじゃな!」と言った...その時見せた態度と同じものを三歳にも取っていた。
そんな事を考えながら三歳が語る今の二人の状況を聞いていて、私が理解した事は...
(三歳はリアを一人の少女として人間扱いした?)
三歳がリアを演算機扱いして怒らせたのち、謝ってリアが機嫌を取り戻したのは知っていた。
だが、今三歳はなんと言った?
『だからリアは俺が心から謝った事で、感涙したんだってさ♪』『三歳よ!もうその辺で止めてくれぬか!?』
聞き間違いでは無かった。リアは...ずっと孤独だったのかもしれない。
そう気付いた時、私は自分の胸が締め付けられるのをどこか他人事のように感じていた。
『セシル、そっちでの食事は堪能出来たのかい?』『えっ!?えぇ...』
少し放心状態になっていた所に突然三歳に質問され、思わず曖昧な返事をしてしまったが三歳は何故か会話を急いでるようだ。
『そうか!良かったな♪それじゃ代わってくれ。お花摘みに行きたいだろ?』
そう言って、三歳は少し強引に意志を強め入れ代わってきた。確かに三歳が言うように、少しばかり尿意はあるが...
「なんじゃ?セシルよ、戻ってきたのか?三歳は?」
「トイレ行きたいだろって」「なんじゃそうか。なら早く行って来るが良い」
だが私の魂魄はそれどころでは無かった。
三歳から私に戻った瞬間、リアが私に見せた表情は...
日本で見た日本人と同じ眼をしていた。
さっき他人事のように感じた胸を締め付けるような感覚が、今は凶暴なほどに猛威を振るう!!!
「ご、ごめん...なさい...」
私は嗚咽を堪えながら何とかリアに謝ろうと声を振り絞ったが、出てくるのは悔恨の念だけだった。
読んで頂きありがとうございます(╹▽╹)
☆☆☆☆☆評価…可能であれば…
リアクション……お気軽にして頂だけたら幸いです♪
感想、レビュー…ハードル高いと思いますが頂だけたら嬉しいです(≧▽≦)b"




