26話 飯テロJackは突然に
(返事がないわ)
さっきから三歳に呼びかけているが一向に返事が無い。前のように拒絶されている訳でもなく、どちらかと言えばコチラに気を回す余裕が無いみたいだ。しかもリアまで...
今まで念話でリアと連絡が取れなくなった事など無かった。勿論距離のせいで取れない事はあったが...
そうこうしていると、あの女が気持ち悪い声で耕助に話しかけてきた!
「耕にぃ!いこ〜♪」「ちょっとだけ待ってくれ、沙織」「はぁ〜い♪」
ぞわ゙わ゙わわゎゎゎ...!?
『どっから声出してんのよ?!』『そう言うなよ。それより頼めそうか?』
身を(と言っても今は三歳の身体の何処かにある魂?の中で肉体は感じられないが)震わせ悪態をつくと、耕助が三歳への頼み事が出来たか確認してきた。
『それが二人して返事がないのよ。こんな事初めてだわ』『そうなのか?』『...(威圧)分かるでしょ?』『あっ!?ハイ』
私の説明に納得した耕助は
「沙織?歩いて出かけないか?」「ん?みっくんダメって言ったの?」「いや、なんか二人して返事無いらしいんだ」「...へぇ〜…あの女が「違うよ?あとあの女呼び「無理!イヤッ!」...はぁ」
あの女に耕助が歩きで出かけようと持ちかけると、事情も知らずに人のせいにしてきた。耕助が直ぐに否定するも、私への拒絶は止まらない。
『お互い様だから良いわよ』
ため息を吐く耕助に、これ以上の気遣いは要らないと私は告げた。
『すまないな』『良いわよ。別に』『それでも、だ』
謝る耕助に私は再度告げたが、彼は気遣いをやめなかった。
玄関で靴を履き二人揃って外へ出ると
「沙織?」「えへへっ♪」
あの女が三歳の腕にしがみつきデレデレし始めた。しかも耕助まで...ん?
『三歳まで?!』『ハイ?!』「???」
正直耕助があの女に向ける感情よりあっちの二人の感情の方がキツイ!!!
『マジ?!』『マジよ』『うぁ...『人のこと言えるの?!』あの二人とは違う!』
否定する耕助に五十歩百歩だと思いながら、私は三歳とリアの方に意識を向けた。
「どうかしたの?」「ん?いや、どうやらセシルも三歳君とこに行ったみたいだ」
「そうなの?!じゃあ今は二人きりやん♪」
そう言って沙織が感情を爆発させるくらい、物凄く嬉しそうに燥いだ。
「耕にぃ何食べたいん?好きなん言ってやぁ〜♪ウチの驕りやで♪♪」
「そうかい?なら...ん〜〜〜!?ラーメン!ラーメン喰いてぇ!」
上機嫌に何が食べたいか聞いてきた沙織に、僕は食べたいものより(クランディアで)食べてないものは何かを思い浮かべようとした瞬間...真っ先に浮かんできたのがラーメンだった。
あちらではパスタは疎かうどんや蕎麦もなく、麺類そのものが無かった。厳密に言えばパスタのようなペンネ?はあったが、アレは日本人にとって麺とは思えなかった。
「いいやん!ウチも長い事食べてへんからむっちゃ食べたい♪」
「そうなの?どれくらい?」「!?......えっと」
僕の要望に物凄く乗り気な沙織に、どれくらい久しぶりなのか何気なく聞いてみる。
すると沙織は何か衝撃を受けたような表情になり口ごもった。少しだけシドロモドロになりつつ囁いた答えは
「27年ぶりくらいじゃない?...かな?」
そんな答えを聞いた僕は驚きを通り越して、今までちゃんと食べていたのかどうかが気になってしまう。
「沙織?大丈夫なのか?ちゃんと食べてる?良く見たら、歳の割に痩せてないか?」
「歳は言わんといて!耕にぃ?ウチも女の子なんよ?ラーメン屋なんて女子同士でも入りにくいんやで?!」
どうやらちゃんと食べてはいるらしい。だが痩せ気味なのが気になって、僕は更に深堀りする。
「そ、そうか...でも、痩せ気味じゃないか?」「それは...お酒が好きだから...」
は?そうなの?いや、酒って太るんじゃ?そう思って聞いてみると
「ビールは糖質高いからね!普段は飲まないの。それに比べたらハイボールとか、焼酎は太りにくいんよ?ジン系ならオシッコ出るからむくまなくなるんやで?!」
やや興奮気味で言ってくるが、「オシッコ発言は止めような?」と僕が言うと沙織はキョロキョロと周りを見渡してから、恥ずかしそうにして僕の服の裾を掴んできた。そんな沙織に、僕は空気を変えるべく敢えて気軽に
「何ラーメンにする?」と聞いた。すると
「!?...味噌!...と言いたいがここは敢えて豚骨!♪」
ガバっと顔を上げて、元気な笑顔を見せつつ言った沙織の頭をグリグリ撫でながら僕は微笑む。
沙織は味噌、純玲は塩ラーメンが好きだった。そして僕は豚骨...ラーメンでこの三種類が揃う所は少なく、大抵塩ラーメンのある店に行くと...味噌はあっても豚骨は無い事が度々あった。
だから沙織は豚骨を選んだのだろう。
そんな沙織の気遣いに...僕はいつの間にか三歳君の身体を借りている事も忘れ、腕を組んでくる沙織と笑顔を向け合いながら豚骨ラーメンのある店に向かった。
「!?うんまっ?!」「ぼん゙どぅ゙?」「口を閉じなさい!」「ぶん゙」
やっぱ27年って年月は半端ないな?!僕が知ってる味噌ラーメンとは次元が違う!
「んはっ!?耕にぃ、ヤバい!豚骨なのに、超うまい♪」
「なのには余計だ!でも、うまいよな!」「うん♪」
お互い最近のラーメンを知らなかったので、その進化に文字通り舌を巻く僕と沙織。
余りの美味さにもう一口と箸が進む...?
「あれ?」「どぶじだの?んぐっ!耕にぃ?」
急に薄味になったような...僕の変化に気付いた沙織が、口の中のラーメンを飲み込んでから聞いてきた。
だが、それよりも僕はラーメンの味の変化が気になってもう一口...すると、今度は味そのものが無くなった!?
「沙織?ちょっと一口くれないか?」「いいよ♪はい!あ〜ん♪」
なんて事を...だが、それより気になる事を解決すべく僕は沙織の箸に食らいつき...
「や゙っば味がじね゙ぇ゙!!」「はぃ?!」
驚愕に眼を見開く僕の顔を見ながら、沙織は素っ頓狂な声を上げた。
『ちょっと!急に味変しないでよ!でも...コレは豚骨ね!コッチも美味しいじゃない♪』
あんまりな出来事に僕がショックを受けていると沙織が
「耕にぃ?なんか食べ方変...ラクダみたい」
駱駝扱いされた。実際納得だ。なぜなら僕の口は今...セシルに蹂躙されているからだ。
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