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一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く 最終章《一夫多妻エンドVer.》  作者: 東音


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一夫一婦制婚姻歴25年 山本営業部長からの忠告

 雪森㈱本社、会議室にて―。


「はい。では、MF㈱さん今度のイベントに関して、小坂さん、石藤さん、お二人共機材の搬入よろしくお願いしますね。」

「「は、はいっ。当日はよろしくお願いします!!」」


 雪森営業部長の山本さんにそう言われ、俺と小坂さんは緊張ぎみに返事をすると俺とさくらの騒動があった直後の大仕事が無事にまとまり、内心胸を撫で下ろしていた。


 雪森の営業部長の山本さんは、財前寺社長と友人で誼があるとは言え、会社がイメージダウンになると判断すれば、一夫多妻制の婚姻をした俺及びMF㈱の仕事は断られてしまうだろうと思っていた。


 実際に、他の会社数件から、現在まとまりかけていた仕事を少し保留にさせて欲しいという申し出もあった。


 しかし、大会社の雪森㈱仕事がとれた事は大きな一歩で、保留にしていた他の会社も追随してくれるのではと期待も出来、俺は小坂さんと笑顔を見合わせ、帰り支度をしていると……。


「ああ、仕事とは関係ないんだが、少し石藤くんをお借りしてもいいですか?

 昼休憩を取り損ねていて、若い人と話をしてみたいのですが……」

「えっ」

「は、はい。どうぞどうぞ!(何か分からんけど石藤くん、これは断れんぞ?頑張れ〜!)」


 山本さんに有無を言わさない笑顔で頼まれ、俺が驚いていると、小坂さんが笑顔で先に返事をしてしまい、俺に小さくガッツポーズを取ってきた。


         ✽


「フフッ。付き合わせてしまってすまんね……」

「いえ……。とんでもないです」


 15分後―。


 場所を近くの喫茶店に移して、俺は山本さんと向かい合わせの席でコーヒーを飲んでいた。


 雪森㈱の山本さんとは、2年前、白鳥との騒動の時にお会いして以来、仕事で見えるのは、今回が初めてだった。


 あんな修羅場な場面の記憶を共有し、義父である財前寺龍人さんの友人でもある彼に、どういう意図で誘われたのか分からないまま必死に当たり障りのない話題を探していると……。


「これは仕事には関係ない、僕個人の意見なんで、変な心配はせずに聞いて欲しいんだが……」

「? は、はい……」


 その前置きと、優れない山本営業部長の表情から、却って不穏なものを感じ、体を固くしてその続きを待った。


「石藤くん。2年前、白鳥慶一に対峙した時の君は、奥さんであるさくらさんを守り、とても一途な愛情を注いでいた。

 僕は、君の事を今どきの若者に珍しく真面目で誠実な青年だと高く買っていたんだ。

 それだけに、今回の君の一夫多妻制の婚姻の件、正直、君に少しがっかりしてしまったよ」


「山本営業部長……!」


 眉間に皺を寄せて、厳しく俺を見据える彼に俺は返す言葉がなかった。


「記者会見の声明は確かに立派だった。一夫多妻制については、さくらさんの同意があって、2年前あの場にもいた白鳥の元奥さんとも仲は良好で、お子さんとも穏やかな雰囲気で暮らせているんだってね?

 さくらさんが笑顔でそう言うなら、何も問題はないように思える。けれど……。

 その笑顔の内で、さくらさんが傷付いていないと言い切れるかい?」


「……! そ、それはっ……」


 香織の妊娠が発覚した時の、さくらの一瞬の辛そうな表情が、涙が、俺の胸に刻まれ、忘れる事が出来ない。


『今日だけは……泣くのを許して下さい。明日からは香織さんと、その小さな命に対して心からの笑顔でお迎えするとお約束しますからねっ』


 彼女は翌日から、あの言葉通り一度も涙を見せずに笑顔で香織を迎え、家族全員を気遣い、一夫多妻制に向けて手続きや、騒動を収める為の記者会見に積極的に協力してくれた。


 確かに一夫多妻制は彼女からの希望ではあったが、そこに、俺や香織の気持ちへの忖度がなかったか。また、それに対して彼女の心の犠牲が全くなかったなんて、俺には言えない。


「仰る通り……、もしかしたら、今も彼女は心のどこかで無理をしているのかもしれません。

 それが、いつか何かの形で望まぬ結果を生む事になったら……、俺はこの選択を後悔する事になると思います……」


 未来への不安に俺が額を押さえてそう答えると、山本部長はため息をつき、肩を竦めた。


「君の中にも葛藤があるという事か……。

 まぁ、この件には財前寺がかなり関わっているし、君だけの意志による選択ではないかもしれないが、君には白鳥のようにも、財前寺のようにもなって欲しくないので、一言言って置きたいと思ってしまってね。


 財前寺には、勝手な事をと怒られるだろうが…。」


「お義父さんは、確か、学生時代の恋人のをずっと想われていたんですよね。」


「ああ。穏やかで家庭的な奥さんのフィラさんとは違って、意志が強くて、少しエキセントリックなところもあるリラさんに財前寺は夢中だった。


 彼女と別れる時も、彼女の死を知った時も財前寺の悲しみようと言ったらなかった。 

 体まで壊してしまい、フィラさんが献身的に支えてくれたおかげで体調も夫婦仲も改善されたのは、よかったが、さくらさんを産んだ数年後、彼女も……。


 あいつも仕事に関しては頭のキレる男だが、女性に関しては不器用な奴だよ。


 娘夫婦に、同じ轍を踏ませまいとして却って同じ道に誘導しているように見える。


 誰に何を言われようと、君は自分の意志で大切な人を守れる男であってくれよ。

 結婚25年目、一夫一婦制で幸せな家庭生活を送っている俺からの忠告」


「ご忠告、肝に銘じます……」


 奥さん一筋で25年間を過ごして来た山本さんの一言一言は俺の胸に重く響き、頭が下がる思いだった。


 そして、一夫多妻制について反対しないと言った時の義父の言葉を思い出し、言い知れぬ不安を感じていた。

 

『その結果がどうなろうとも……、君を責める事はしない。


 その責任を私も分担させてもらうよ……』


 あれは、俺とさくらのどのような未来を想定して言ったものだったのだろうか…。



 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

《石藤桜視点❀》


「ううっ……」

 カラーンッ……!


「さ、さくらちゃんっ……!大丈夫っ!?」


 やってしまった……!


 キッチンでスプーンを取り落として蹲っている私に、香織さんが心配して駆け寄って来た。


「ハァッ。ハァッ。だ、大……丈夫……ですっ……」


「え……。さくらちゃん……。コレ、まさか全部っ……!?」


 苦しい息の中、私は辛うじて返事をしたが、香織さんはキッチンの惨状を見て息を飲んだ。


「りょ、良二さんには……言わないで下さいっ……」


「で、でも、さくらちゃんっ……!」


「お、お願いっ、お願いしますっ……!」


 愕然とする香織さんに必死に頼み込んだのだった……。






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