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光の戦士 ~殺人犯と同じチート能力を持ってますが悪用しません~  作者: 池田大陸


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第67話 地獄 ①

72話完結まで毎日投稿します。

 

「お、お前まさか!そ、それだけは止めろっ。やめてくれっ!!」


 俺は必死になって抵抗したが、まるで自分のものではないかのように体が言うことを聞かない!!やばい、ヤバい、ヤバイ!

 俺がかろうじて動かせるのは首から上だけだった。


 ハムに出させられた5つの光輪は、香織の頭から足までを等間隔に包んでいる……。


 おいおいおいおいおいっ!やめろやめろやめろやめろーー!

 パニック状態の俺。


「ははははは!!良い顔してるぞお前~。クッククク」


「ハム!頼む!香織には手を出さないでくれ!殺すなら俺を殺せ!」


 俺は必死にハムに嘆願したが返ってきた言葉は絶望的だった。


「ハハッ。面白いぐらい必死じゃんタイチ。でもそりゃー聞けねえ願いだ。言っただろ俺はお前に惚れたって。惚れた相手を殺す奴はいねーよな?――それに対してカオリ、お前はタイチの絶望を引き出す最高の餌だ!」


「うぐっ……あっ……」


 俺はやはりずっとハムの魔法に抗おうとしていたが無理だった。


 当の香織は一種の催眠状態のように立ったまま瞳を閉じている。

 頼む!目を開けて魔法でも何でも使ってそこから逃げてくれっ!!香織ーーー!!


 俺の願いも虚しくハムはカウントダウンを始めた。


「5、4、3、……」


 香織を包む光輪はハムの音頭と共にその径を縮めていく……。俺は歯を食いしばることしか出来ない。そしてハムがほんの少しだけでも良心がある事を期待したがもちろんそんなものはあるはずもなかった。


「0!バイバイカオリちゃん」



 パシュッ……。



 俺の視界に映るのは細かく切り刻まれた香織の断片と地面に広がってゆく大量の赤い液体だった。


 ……俺は目を見開きしばらく現実を認めることが出来なかった。これは夢だ――。幻だ――。必死でそう思い込もうとした。しかし夢からは決して覚めることはない。あ、あれ……おかしいな。


「ああー。ははははっ。いいぞタイチ。現実逃避とは分かりやすいヤツだなー!これから始まる地獄の幕開けに相応しいぞ!うっふふっ……うはははははははっ」


 ハムが何か言っている。俺の身体はまだ固まったままだ。更にハムは追い打ちをかける。


「しっかし生き物の死骸ってのは汚ったねーな。特に人間なんて生きてるうちはあれだけキレイに着飾ったりするくせに死んで肉塊になったら所詮全部ウジのエサだ」


 ――ゴウッ!


 そう言って香織だった()()に魔法で火を点けるハム。

 あああああああ……。


 ヒュウウゥゥゥーー……。


 さらにハムは灰と化した黒い物体を風魔法で吹き飛ばした。あとに残った血痕も水魔法で全部洗い流され香織が存在した証は全て消え去った。……あ、あ。


 ……俺は心の中が真っ白になって何も考えられない状態になった。心神喪失。これが――。


「よお、マウロ。お友達が大変なことになってるぜ?早く助けに来てやれよー。は-っはっはははっ」


 ハムはマウロに通信で俺の窮状を伝え、あざ笑いながら気配を消した。洞窟から出ていったのかハイドでまだどこかにいるのかは分からない。

 俺と香織の周囲にいた科学魔法使い達はハムにワラワラとついて行き、洞窟の広場から出ていく。……今の俺は周りのことを考える余裕はない。


 香織が消えた、香織が死んだ……俺が、殺した……。俺はうわ言のように繰り返した。


 俺の身体はもう動けるようになっていたがショックが大きすぎてもはや立ち上がることも出来なかった。

 しかし真の苦しみはこれから始まる。今はまだ俺の心が現実を受け止め切れていない。ここから少し冷静になって現状が把握出来るようになったとき地獄(それ)は訪れる。




 ――どれぐらい時間が経っただろうか?洞窟内の俺に最初に声をかけてきたのはマウロだった。


「タイチ!大丈夫か!?」

 俺は反応をみせなかった。……というよりまだ動けず地面に膝をついてうずくまっていた。

「おいタイチ!?香織は?ハムはどうなった?途中でカメラを壊されて今まで踏み込めなかった。すまん」

 今度はウェイバーだった。

 もう言葉を発する元気もないぐらい俺は抜け殻のようになっていた。それを見たウェイバーとマウロに肩を担がれ、俺は一旦洞窟から運び出された。もう何も考えられない……。




 ――それからどうやって移動したかはあまり記憶にない、気付いたら俺はまたデヴォンシャーに運ばれていた。


 俺はまだ抜け殻のような状態で広場にうずくまっていた。何かを考えるということが出来ない。

 ふと思い出す……そうだ、香織……もう、いなくなっちゃったんだな……いなくな……なっ、あっ、あっ。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 突然泣き叫びだす俺。地面に頭を抱え込むように突っ伏す。


「いやだあああああ。そんなっ、いやだーーー!!うわあああああああっっっ」


 咽び泣く俺。

 後ろから声がした。

 ジャンタン、マウロ、シャロだった。


「お、おい……。どうするよ?」

「ここは、読心で……」

「バカっ。こういう時はタイチが話せるようになるまで待つのよ!」


 そして俺の近くに誰かがやってきた足音が聞こえる。エノキだと分かった。

 エノキは俺の顔を覗き込もうとしてかがみ込んでいるようだ。相変わらず空気読まねえな……。


「こらっ」


 シャロに襟首を掴まれ連れて行かれるエノキ。俺は相変わらずうつむいて地面しか見えていない。




 ――それからどれぐらいそうしていただろうか?


 俺は空腹を感じてのそっと立ち上がった……。フラフラとデヴォンシャーの町を歩く。行き宛などない。視界は薄く灰色がかっている。

 周りには誰もいない……。皆気を使って俺を一人にしてくれているのか?分からない。


 フラフラと重すぎる足を引きずり俺はデヴォンシャーの外に出た。すると目の前には以前見た空を飛べるファックペンギンがいた。3匹いる、どうやら卵がかえったらしい。


「ファーーックルルルル!ファーーックルルルル!ファーーックルルルル!ファーーックルルルル!」


 やかましく鳴く3匹のペンギン。やがて3匹とも空へ飛び立っていった。

 俺はそのペンギンの卵を初めて見たときのことを思い出す。


 あのときは香織……生きてたんだ……。俺はジャンタンと外に出てて、香織はシンクロの練習してて……。

 昔の事――香織が生きていた時のことを思い出すと涙がとめどなく溢れ出てきて止まらない。思えばさっきから泣きっぱなしだ。


 時折、香織が死ぬ直前のシーンが俺の頭にフラッシュバックする!

「いぎっ……!あっ……がが!!」

 嫌だ……なんで、なんでこんな事に……。



「太一、落ち着いたか?」


 ウェイバーに後ろから声をかけられた。

 俺は力なく振り向く。


「良かったら説明してくれ。お前の口から事実を聞きたい」


 真剣な眼差しで俺を見つめるウェイバー。その真摯さに流されて俺は事実を語りだした。


「……ハムが魔法で俺の身体を乗っ取って、光輪を出させて、それで香織をバラバラにした……」

 俺は自分でも驚くほど淡々とウェイバーに説明していた。


「な、そ、そんなことが本当に出来るのか!?」

 驚くウェイバーだったが実際そうなったのだからそうとしか言えない。ああ、その時はカメラを破壊されていたっけ……。


 俺はもう何もやる気が起きなかった。最愛の人を自分の手で殺してしまった。もう何を目標に生きれば良いかも分からない。……もう、いやだ。



「俺はもう戦わない。全部嫌になった」



 その言葉をきいたウェイバーの顔が険しくなる。


「おい、太一。それはどういう意味だ?」


「……そのままの意味だよ。好きな子一人守れないようなヤツに何の価値がある?本当に俺はバカだよ。自分の力もまるで分かっていなかった。勝てない相手にほとんど丸腰で挑んで、そしてそれがこの結果だ……何がっ、香織は絶対守るだ!何が光の能力者だ!!その力せいで香織は死んだんだ!!アイツを殺すような能力なんてもういらない!……そんなもんいらねえんだよ!!ほっといてくれっ!!」



 ドゴッ!!


 気付くと俺は腹に強烈なパンチを食らっていた。


「がはっ!?」


 うずくまる俺。

 ウェイバーは髪を引っ張り俺の顔をグイッと持ち上げた。


「おいコラァ、タイチ!!甘ったれたこと抜かしてんじゃねぇーぞ?」


「仕事ってのは人がひとり死んだぐらいで放棄して良いもんじゃねえんだよ!分かってんのかガキィ!?ああっ!?」


 ――ひとり死んだぐらい……だと?コイツ……ウェイバー!!何でそんなデリカシーがないんだ!!

 俺は歯を食いしばり怒りに震え、それから大声で叫んだ。


「ウェイバーァァァ!このクソ野郎がァァーー!!」


 俺は顔面にめり込むような全力のパンチをウェイバーに放った。


 バキャッ!!


 ――ドドッ。


「……ぐあっ!!……あっ……あがっ……」


 ウェイバーは地面に倒れ込むがすぐに顔を押さえて立ち上がった。


「はあっ、はあっ。……フ……フフ。なんだ、お前全然元気じゃねーかよ」


 俺はそんな事を言うウェイバーを睨みつける。


「太一、落ち込んだ時はアレだ。()()を動かすんだ。それで99%のことは解決する」


 ……一体何いってんだコイツ!?


 俺は呆れたような顔で言い返した。

「……何なんだよあんた?なんかもう、話になんねーわ。俺が今どんな状態か読心で読んでみろ!!」


「そのつもりだ」


 ウェイバーは一旦呼吸を整え落ち着きを取り戻し、緑の魔法陣を展開させた。


この辺書くのきつかった。

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