第62話 初対面
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ウェイバーはまずサムエルに聞いた。
「おい、お前……サムエルだっけ?どうしてムルファー団にいる?召喚術はどうやって学んだ?」
「ひいいい、言います!い、言いますから殺さないでください!!」
サムエルと言う名のサモナーは猛烈にウェイバーを怖がっている。
「早く言え」
「わ、私はフレデリック氏によって秘密裏に集められたサモナー候補の、ひ、一人です……そ、そこで術を学ばされました」
「フレデリック……やっぱりか」
「フレデリックって会議の動画にいたあの腹の出たおっさん?」
俺は前、皆で見た動画を思い出してウェイバーに聞いた。
「ああ、フレッドって呼ばれてたやつだな。で、ムルファー団にはどういう経緯で?」
「わ、私が魔界の魔物を召喚出来るようになったとき、とある方が私の前に現れ、そしてムルファー団に誘われました」
「とある方?」
「そ、その方が何者かは存じません……顔には被り物をして、声も近距離からでも常に『通信』で喋っておられましたから。唯一分かるのは赤い髪色だったという事ぐらいで……」
「そいつにどうやって誘われた?」
サモナーは下を向き、必死に思い出しながら答えた。
「あの方はこう言っておられました」
『お前は知っているのか?サモナーとして集められた連中はその先ずっとフレッドの……いや、ロジャーや魔法協会の奴隷として扱われる。もちろんサモナーとしての栄誉や名声とも無縁の囚人のような人生だ。お前がもし自由を望むならば特別に居場所を用意してやろう』
俺は単純に疑問を示した。
「あれ、サモナーって奴隷扱いなんだ?なんで?」
「ドラゴンを召喚できるような魔道士をどっかへ野放しにはできねーから、王宮の敷地内で飼うように管理されるって事なんだろ」
ジャンタンに説明された。あーそっか、納得。
『ムルファー団がサモナーを欲しがっている。そこでダッバーフという境界人の指導者に会え。お前の新たな人生はそこから始まる』
「……というような事を言われ、私はその方の導きのままにムルファー団にサモナーとして雇われました。そして今に至ります」
そこで首を傾げたジャンタンがサムエルに聞いた。
「しっかしドラゴンみてえな大物、お前一人だけで呼び出せるもんなのか?」
「そ、それは私も不思議でした。本来召喚とは魔力を数年単位で魔法陣に蓄え、それをドラゴンなどの召喚獣にエサとして与える代わりに主の言うことを聞いてもらう――というのが基本なはずです……あの膨大な魔力の蓄積は一体どこから集めたのか……わ、私には分かりません」
恐る恐るダッバーフをチラ見するサムエルだった。
それに反応したウェイバーはダッバーフに近寄り詰問した。
「おい、お前は知ってんだろ?」
「わ、我らの神が必ずや貴様らを――」
ゴキン!!
「ギャアアアアア」
ウェイバーが表情を全く変えずにダッバーフの肩に指を食い込ませ骨を折った。
「おい、お前肩凝ってんじゃね―か?もっとほぐしてやるよ」
ちょっと楽しそうにしながら続けて手に力を入れたり緩めたりしている。それに呼応するように悲鳴が聞こえた。
「ぎゃあああああ……やめっ……やめてええええ……」
「このままだともっと痛い目に遭うぞ。今話せば身の安全だけは保証してやる」
「あがっががが……ガ、ガキを生贄にしたっ!」
ウェイバーの責め苦にあい普通に口を割るダッバーフ。
ダッバーフは歪んだ笑顔を見せ、聞くに堪えないおぞましい事実を口にした。
「……げ、現代から、この世界に奴隷のガキどもを大量に連れてきた。こっちのガキと合わせて100人はいただろうが、全て召喚のためのエネルギーにした!あいつらは皆数日でミイラになりおった!どうせ生きてても勝手に死ぬ奴らだ。そんな連中が我らの神のためのエサになれたのだ。我々は無価値なガキどもを救済してやったのだ――」
ドゴッ!
気づいたら俺はダッバーフの顔をぶん殴っていた。
「お、お前っ……それでも人間かっ!?」
同時にあの時の光景を思いだし、俺は吐き気を催して苦痛に歪んだ顔になった。
俺は歯を食いしばり怒りを必死に押さえながらダッバーフに詰め寄る。
当のダッバーフは椅子に縛られたまま地面に横たわり血を吐いて気絶している。
ポン。
「太一」
俺はジャンタンに肩をたたかれた。
「気持ちはわかる」
振り向くと、ジャンタンも今にも切れそうな表情をしていた。それを見て俺は少し冷静になった。
「フン。コイツはしばらくほっとこう」
そう言うとウェイバーは『読心』のため緑の魔法陣を出してサムエルに詰め寄った。
「サムエル。お前のいたムルファー団ってのはこういう組織だ。何か言うことはあるか?」
ウェイバーにそう言われてサムエルはうつむき、ボソッと喋りだした。
「お、犯した罪の大きさは理解しております。私は……私も子供の頃は奴隷だったのです。今になってこんな事を言うのもおこがましいとは思っております、しかし私はあの子達に償いがしたい!そのために協力させて頂きたい!!それが叶うなら!!」
サムエルが真剣な眼差しでウェイバーを見上げて贖罪の言葉を述べた。
俺はサムエルの顔を見て、この男も被害者なのでは……?と思った。
緑色の魔法陣を展開したままウェイバーは「読心」でサムエルの内心を読み取っている。
そしてウェイバーは口を開いた。
「よし分かった。サムエルお前は俺達とソリオンに行くぞ。ロジャーに会うんだ」
ウェイバーは俺とジャンタンを振り向いた。
俺はジャンタンと顔を見合わせ、ちょっと笑顔を見せた。
「ウェイバー、今から行くのか?」
「おう!緊急事態だからな。ロジャーの爺さんも早く来いってうるせえんだ」
「こっちは任しとって下さい。行ってらっしゃい!」
「ああ、留守は頼んだぞジャンタン」
――というわけで俺、ウェイバー、サムエルの三人は王都ソリオンに到着した。
一応俺達はウェイバーのハイドで人に認知されないようにして、その足で魔法協会の本部に到着した。
魔法協会の建物は王城の半分ぐらいの大きさを誇っていた。でけえ!……さすが王国一の天下り組織だ。
ロジャーから話は通っているらしく俺達三人は何の面倒もなくロジャーのいる会長室の前までたどり着くことが出来た。
あー緊張してきたー!!
「失礼します」
ドアをノックするウェイバー。静かに中に入ると部屋の正面にロジャーが立っていた。
「おう」
良く通る低い声でそう言うロジャー。昔ながらのヤクザの親分と言った感じだ。そして予想通りかなりの威圧感があったが、顔は険しく余裕はあまり無さそうに見えた。
「爆発の件……新たに何か分かったか!?」
俺とサムエルを全く意に介さないでウェイバーに質問するロジャー。そこでウェイバーが真に迫ったような大きめの声でこう言った。
「始めに言っておきたいのですが、先生」
「なンだ?」
「この場において、『読心』は使われない方がよろしいかと思っております。お互いのために」
「ああ?」
元々、相手に対して一方的に『読心』をするのは礼儀に欠ける行為だ。それによってお互いの関係にヒビが入る事もある。だからロジャーが読心を強行する可能性は低かった。……だが、今は一応非常時とも言える状態だしどうなるか分からんとウェイバーから説明は受けていた。
今ウェイバーはロジャーに読心を使われないように釘を差しにいったみたいだが……これかえって怪しまれないか?
ウェイバーの目は真剣そのものだ。ロジャーも言葉の真意を探っているように見える。
そしてウェイバーはこう付け加えた。
「――世の中、知らない方が良い事はあるものです」
ロジャーはちょっと片側の口角を上げて、こう返してきた。
「おいウェイバーさんよぉ。アンタ一体何を知っちまったんだ?場合によっちゃあここから帰せなくなるかも知れんぞ」
ええ!?おいおいヤベえんじゃねーかこれ!?俺はドキドキと心臓の音がハッキリ聞こえるのを感じた。
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