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光の戦士 ~殺人犯と同じチート能力を持ってますが悪用しません~  作者: 池田大陸


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第61話 ロジャーから

完結まで毎日投稿します!

 

 ――一旦俺はドラゴンの背中から降り、そしてあるものを目撃した。

 それは体から白い湯気を立ち上らせているエノキだった。おお、これは……!


「わっ。やったー……2年ぶりのレベルアップだ!!イエーイ」


 目を輝かせ万歳するエノキ。めちゃくちゃ嬉しそうだ。


「おめでとうエノキ。喜んでるところ早速だけどさ……」

 俺が回復魔法のことを言いかけると即反応してきた。


「こいつの事でしょ?しょーがないな―」


 エノキはマウロに体中殴られ立つことがやっとなサモナーを指差す。しかし文句を言いつつもしっかり黄緑色の魔法陣を展開し治療に当たってくれた。さすがだぜ。


「ほいっ。もう治ったんじゃない?」

「え?もう治したのか!?早っ」


 ほんの4~5秒でエノキは治療を終わらせたという。

 実際サモナーはさっきと違い、怯えてはいるが普通に立って歩けるぐらいに回復していた。前回の俺のときより大分高性能な回復魔法になっている、これもレベルアップの賜物といったところか。

 しかしそれを快く思わない奴がいた。もちろんマウロのことである。


 氷のような冷たい目の奥に猛烈な嫉妬の炎が見える。


「お前はこの僕ですら経験したことのない『リアの回復魔法』という至高の悦楽を受けてしまったのだ。まさに幸福の極地……。この施しを受けてなお境界を開けぬ無能であればお前に命の保証はないと思え!」


 ……こ、この人怖っ!!俺はこの時、マウロの前でエノキに変なこと出来ねーなと思った。いや、するつもりはないけど。


「ひいいい!!やっ……やりますーーー」


 恐怖で震えながらもサモナーはなんとか魔界への境界を開けるべく長時間の詠唱を始めた。――とその時ウェイバーからジャンタンに通信が入った。内容はこうだ。


「タイチ、ウェイバーさんから伝言だ。ドラゴンを追い返した証拠に何か身体の一部をもらっとけってよ」

「え?体の一部……そ、そんな都合のいいものあるか?だってドラゴンまだ生きてるし……」

 俺が戸惑っていたらドラゴンは俺への礼のつもりなのか自身の髭を前足で引き抜いて俺の前に落とした。


『髭だ、受け取れ。これの価値は見るものが見ればわかる』


 ……だそうだ。

「サンキュードラゴン」


 俺は軽く礼をした。

 俺は落とされた髭を拾い上げる。髭とはいえ長さは1.5メートル程で、太さもホースぐらいはあった。

 その時ちょうどサモナーによって境界が開かれた。

 そしていよいよドラゴンが魔界に帰る――という時に意味深な忠告をしてきた。


『ササキタイチよ。その光の力は諸刃の剣、人には過ぎた力だ。気をつけることだ』


 ――このときはあんまり言葉の意味を理解していなかったが、それを狂い死ぬほど痛感するのはこの後のことである。


 俺に忠告するとドラゴンは再び魔界に帰っていった。

 もちろんその後サモナーにしっかり境界を閉ざさせた。


「なー。あんた回復させてやったお礼に境界の開け方教えてよ」


 エノキはサモナーにそんな事を聞いていた。魔法に関してはホント節操のないやつだな……。


「おいエノキ、そいつは犯行グループの一員で、かつ重要参考人でもあっからよ。そんな呑気な事させてる場合じゃねえだろ」

「ちぇー……どうでもいいじゃんそんなん……」

 ジャンタンにたしなめられたエノキは子供のようにブツブツと拗ねていた。


「ん?誰だ!?」


 おっと、またジャンタンに通信が入ったらしい。誰だろ?

 耳に指を当てて応答するジャンタンだったが――その相手は驚くべき人物だった。



「あ、こ、これはどうも……!その件ですがっ……いえいえ全くそんな事ではありません。……はい、はい。……では伝えておきます。し、失礼いたします!!」

 ジャンタンがここまで恐縮するなんてただ事じゃねーぞ。一体誰からだろう?


 ジャンタンは半笑いの引きつった顔をして言った。


「……ロジャーじゃねーか……び、びっくりした!……」


 その場の全員が驚いた。俺は早速内容を聞いてみた。


「さっきの大爆発について話がある。ウェイバーが通信に出ないから早く出るように伝えろ――だってよ。心臓止まるかと思ったわ!」

「ロ、ロジャーが!?……てか、それもそうか。ソリオンの近くであんな大爆発が起きたんだからな。じゃあ早いとこデヴォンシャーに戻ろうぜ」



 ――という訳で頭に袋を被せられたダッバーフとサモナー、そして奴隷少女も含めて全員がデヴォンシャーに帰還した。それにしても多いな、11人もいるじゃないか。


 デヴォンシャーの広場に着くと、ウェイバーは出迎えるなりダッバーフとサモナーをとある部屋に監禁した。

 そして奴隷少女の背中に軽く手を当てて言った。


「この子の側に奴らがいるのは色々良くねーからな」

 なるほど、最もだ。


「この子、お腹へってるんじゃない?」


 香織が少女を気遣った。よく見ると少女はかなり痩せている。そのまま香織は少女の手をとってクロエの食堂に連れて行ってくれた。ちょっと香織に懐いているように見える。俺は少しホッとした。


 そして俺は意気揚々とウェイバーに宣言した。

「ウェイバー、ロジャーに会いに行くんだろ?俺も行くぞ!」


 ウェイバーはちょっとうつむいて考えるポーズを取り、ゆっくりと顔をあげた。


「そうだな、さすがに今回の件もあるしロジャーとはちゃんと腹を割って話し合っとくべきかもな。もちろん太一にも来てもらうぜ。今回の事件のキーパーソンでもあるしな」


 それを聞いて俺は満面の笑みを浮かべた。

「おうっ。もちろんそのつもりだ。ドラゴンを魔界に追い返したって言えば俺、ロジャーに一目置かれるかもな……はっはっは」


 ジャンタンはやや心配そうに俺を見てウェイバーに聞いた。


「……って事はウェイバーさん。『魔王襲来』を俺等が知ってるって事、ロジャーに正直に話すって事ですか?」

「ああ、……というより向こうから話をさせるように誘導していく。上手くいくかは太一、お前とあのサモナーにかかっている」

「どういう事だ?」

「簡単に言うと太一、お前がロジャーに認められるかどうかが重要だ。あとサモナー……サムエルだっけ?あいつも良い交渉材料になる」


 そう言うとウェイバーは腰に巻いたツールポーチからペンチとニッパーを取り出してこう言った。

「さぁて、サモナーから話を聞きにいくか。太一、お前も来い」


 そのウェイバーの笑顔の割に冷たく暗い目はどう見てもカタギのものではなかった。コイツ、絶対拷問する気だろ!怖えええ。


「ウェイバー、あんた本性隠す気ないでしょ?」

 シャロが笑って突っ込みを入れる。

「こっちで隠す必要もねえだろ?」

 ウェイバーは苦笑しながら俺を手招いた。

「おい!言っとくけど俺は絶対拷問とかやんねーからな!」

 俺が拒否反応を示すと、ウェイバーはものすごい作り笑いを浮かべて言った。

「おいおい拷問とか怖いこと言うな~お前。心配すんな。ちょっとマッサージしてやるだけだって」


「い、行きましょう……」

 その横でやや顔色の悪いジャンタンが俺達を促す。ジャンタンはウェイバーと違って根が優しそうだからそういうの嫌なんだろうな、なんとなく。


「よし、じゃあここでひとまず解散だ。それと、各々に臨時ボーナスを振り込んでおいた。引き出し限度額関係なしに現金で受け取れるから後で確認しといてくれ」


「マジ!?やった!サンキューウェイバー」

 ウェイバーの言葉にシャロは飛び上がって喜んだ。


「エノキとマウロもここの銀行でリルで受け取れるからな」

 ウェイバーはさらに付け加え、それを聞いたエノキがニヤッとしてマウロの顔を見上げる。

「へへっ、やったな兄貴」


 しかしマウロの表情は冴えなかった。

「ありがたいけどね……お金を使うどころか僕はそもそも陽の下を歩く事さえ出来ないからね……」

 そうか、何かマウロが気の毒になってきたのでとりあえず励ます。

「大丈夫だマウロ、何とかしてやるって――ウェイバーが」


「俺かい!……まあ、一応そのつもりだったから安心しといてくれマウロ。それとエノキもな」


 軽く俺に突っ込んだウェイバーだったが本当にエノキとマウロの事は考えていたようだ。この辺はさすがだなーと思った。



 そして俺とウェイバーとジャンタンはダッバーフ達の部屋へと入った。


 ここから血生臭い尋問が始まるのか――と思って身構えていたが、椅子に縛り付けられた奴らのうちサモナーの方は意外なほどあっさり喋りだした。


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