第59話 ドラゴン戦
完結まで毎日投稿します。
ドラゴンが出現し、ひとまずマウロは広域ハイドで全員の姿を隠した。ここからドラゴンまでの距離は50メートルぐらい、恐らく向こうから俺達の存在は感知されないハズだ。
「ええ?!カイザードラゴンて初めて見た……。アレがそうなの!?デカすぎーー!!」
エノキは口をポッカリ開けて驚きの声を上げている。
「エノキ、この子の避難頼めるか?」
俺は背中におぶった少女をエノキに渡す素振りをする。
「んー……いいよ。おいでっ!」
意外なことにエノキは戦いたい欲求を抑えてお姉さんの様な笑顔で少女に背中に乗るよう促した。一瞬誰やねん!と突っ込みたくなったがお前偉い!
「ジョージ?ウチだけど子供を保護したから預かって。今どこ?……オッケー」
ジョージと通信し、合流する場所を決めたエノキは風魔法で少女をおんぶし連れて行ってくれた。サンキューエノキ!
「あのターバン巻いてるあいつがダッバーフだ。あのドラゴンの頭に乗ってる奴!」
ジャンタンが叫んだ。
「アイツか!」
俺も奴を仰ぎ見る。格好はここの魔法使いと同じような見た目だったが背中にアサルトライフルを背負っている。
その後ろからもう一人の魔道士の様な男が姿を現した。あれがおそらくサモナーだろう。
「神の意思に反く者達よ。今こそ裁きの時だ!」
ダッバーフが両手を広げて何かほざいている。そして続けてこう言った。
「皇帝竜よ!魔界より解き放されしその力を今、この世界に知らしめるのだ!!」
驚くべきことにそれに答えるようにドラゴンが喋り出した!
『カイザードラゴンだと?竜王様のことか?我は竜王様ではない。一般ドラゴンだ』
あ、あいつ喋るの!?……っていうか科学魔法の翻訳力凄すぎだろ……!?
「……だ、だがドラゴンには違いあるまい。私はお前のその『力』を欲しているのだ!」
ダッバーフはそのドラゴンが皇帝竜であるかどうかはどうでもいいようだ。
「なあジャンタン、あいつカイザードラゴンじゃないみたいだぜ?」
「いや、悪い。俺も見たことないから適当言ったわ」
「なんだそりゃ……でもドラゴンだけあってクソ強そうだな。背丈も30メートルはあるぞ」
マウロも説明を加える。
「歴史的に見て、魔王襲来時最も多くの人を殺したのがドラゴン族だと言われている。遠距離から打てる爆裂弾がめちゃくちゃ強力だ」
俺はドラゴンの上のダッバーフとサモナーを見上げ拳を固めた。あいつら絶対ウェイバーに突き出してやるぞ!
「よし!手始めにロジャーのいる王都ソリオンを壊滅させてやろう。見せてやれ!お前の力を」
ダッバーフはサモナーにアゴで合図を送り、サモナーはドラゴンに王都ソリオンの方向を示した。
え!?まさかここから攻撃するってのか……?
もしそんな事されたらヤバい!ヤバ過ぎる!!
ちなみにここからでも巨大な王都ソリオンは肉眼で確認出来る。距離にして20キロメートルぐらいか。
『目標はアレか?主人よ、召喚された暁に役目はしっかり果たさせてもらおう』
ビュオオオオーッ。ザッ!
「お待たせ!」
そこへエノキが帰ってきた。
「ジャンタン!」
俺はジャンタンに指示を仰いだ。
「よっしゃお前ら、役割言うぞ!エノキは今から最大火力魔法の詠唱。タイミングは分かんねーかも知れねーがドラゴンの攻撃が発動する前に打ってくれ!」
「オッケー!」
「マウロはサモナーの動きを封じろ!出来れば生きて捕獲したい」
「了解」
「太一はドラゴンに光輪で直接攻撃!俺はダッバーフを捕える!以上!!」
ジャンタンの迅速な指示により、皆すぐに自分の仕事に取り掛かる事ができた。
エノキを見ると、足元に巨大な赤い魔法陣を展開させている。そしてそれはドンドン大きくなっていく……エノキが本気だ!
ここでマウロがサモナーと戦うために俺から離れ、自動的に広域ハイドが解除されて、俺は全員の姿が見えなくなった。
しかしすぐ近くにジャンタンが姿を現した。
「太一、お前はハイド出来ねーから俺と組むぞ!俺の半径1メートル以内に入っとけ!」
「オッケージャンタン。ちょっと階段出すわ」
俺は奴らに見えない位置から光輪を階段状に出し、二人でそれを駆け上がっていく。
俺にもダッバーフの姿は見えている。……という事は奴はハイドを使っていない。侵入者が近くにいるかも知れないというのに……もしかして奴は科学魔法使えないんじゃないか?だとしたらこのまま後ろから近づいて羽交締めにでもすれば割と簡単に――。
『フン!ハエ共が……気づいていないとでも思ったか?』
ドラゴンは一瞬で巨大な白い魔法陣を地面に出した。嘘だろ!?一瞬で……デカ過ぎる!?
そしてドラゴンの体を覆う様な強烈な爆風が吹き荒れた!
まるでアメリカの巨大ハリケーンだ。
――だがしかし、こういう魔法に俺の光輪は相性が良い!
俺は光輪を出し、即シールド状にして俺とジャンタンを風から守った!
エノキとマウロはどうなっただろう?マウロはともかくエノキの方は強力な魔法の詠唱中だった――、もしかしてどこかに飛ばされていったかも知れない!!
「……やるじゃん。魔界のドラゴン!でもちょーっと大雑把過ぎじゃね?」
エノキは普通にさっきの位置から動かず立っていた。しかし赤い魔法陣の大きさがさっき見た時よりかなり小さくなっていた。やはり詠唱し続けないと縮んでいくらしい。
『クク……やはりいたか。しかしそんな下級魔法は我に通用せんぞ!』
ドラゴンはまたも一瞬で巨大な水色魔法陣を展開させた!
そこへマウロがボコボコにされたサモナーを背中に担いで現れた!おお、仕事早え!
「みんな、離れよう。巻き添えをくらう」
「ヘリオース!!」
エノキが叫ぶと周囲の温度が急激に上がり直径10メートルはある巨大な赤い球体がドラゴンに向かっていく!
エノキは魔法を撃った後すぐに俺達と合流してその場を離れた。
ドラゴンはどう出る!?まだダッバーフは頭に乗っているようだが――。
と見ているとドラゴンの頭付近に小さい水球が発生し、それはドンドン大きくなっていく!!
「あ、あれは水魔法か!?」
火球と水球が接触した!
ジュウウウゥゥーーーッッボコボコボコッッ!!
「お、おいやべーぞ!!あの状態が続くと水蒸気爆発が――」
ジャンタンが叫んだその瞬間!!
――ボガアアアアァァァン!!
……とんでもない轟音と共に辺りには大量の水蒸気と爆風が巻き起こった!
その衝撃から身を守るため、ドラゴンもエノキもマウロも多重の土壁を展開!
「兄貴!」
「オーケー。リア!」
エノキとマウロは阿吽の呼吸でそれぞれ魔法を詠唱し始めた。
もう二人ともハイドなどやっている余裕は無さそうだ。
ジャンタンも俺も風魔法「強風」で大量の水蒸気を吹き飛ばす。
――するとドラゴンの姿が見え、得体の知れない魔法の詠唱を始めていた!
魔法陣の色は――なんだアレ?
濃い赤……いや、あずき色だ!
ドラゴンの口先に何かエネルギーの塊のようなモノがうかんでいて、その先にはソリオンがある。マズい!
『くらえっ!』
――その時ドラゴンの首辺りに爆発が起きた!
バアァァン!!
ジョージからの通信を受けたらしいジャンタンはガッツポーズをしながら叫んだ。
「おおーっ。ジョージが遠距離から手榴弾でやってくれたぜ!これがホントの救援投手ってやつだ!ははっ!!」
ナイス!ジョージ!!
――ボッ――。
しかし……姿勢を崩したままではあるが、なんとドラゴンは口に蓄えていたエネルギーの塊の様なものを砲撃したのだった!
「えっ……」
それは大きな音もせずただの空を舞う光の塊のようであり、しかしソリオンからは確実にズレた位置に向かって飛んでいく……。
そして――とんでもない爆発が起きた!!
ズドオオオオオォォォォォォーーーン!!
山の奥からは巨大なキノコ雲が立ち上がる。よく見ると今の魔法で山の稜線が明らかに不自然に凹んでいる……。
「うげえーーっ!何ちゅう威力だ!!ジョージが妨害してなきゃ王都は壊滅だったぞ……」
そして詠唱中のエノキが警告した。
「タイチ、ジャンタン!こっちも打つから構えとけよ!」
「おう!ぶっ放せエノキーーー!」
空には極限まで育ちきったような積乱雲がゴロンゴロンと恐ろしげな音を奏でている。エノキは叫んだ!
「インドラ!!」
ゴオオオオオオォオォォオォォウウウゥゥゥンンン……!
強烈な雷がドラゴンを直撃!
そしてマウロも畳み掛けるように立て続けに魔法をぶっ放した。
「大地挟撃!!」
バキバキバキッガガガガガガガガッ……。
ドラゴンの真下の地面が割れ、割れた地面が今度はドラゴンを挟み込むように元に戻ろうとする!まるで大地の万力だっ。
「これいけるんじゃねー!?ジャンタン?」
「す、すげえけどあいつらダッバーフのこと忘れてねえか?」
「そういえばダッバーフどこ行った?」
『グウウウウッ……こ、小賢しい人間どもがー。……だがこの程度では我を殺すには至らぬ』
体中から血を流しふらつきながらもゆっくりと地面の裂け目から這い出てくる。どうやらドラゴンはこの魔法攻撃に耐えきったようだ。それどころかドラゴンは回復魔法の象徴である黄緑色の魔法陣を展開し徐々に身体を回復させている。や、やっべえ……。
「へ!?うっそ、あのドラゴン防御力高すぎでしょ!?……もーこっちの魔力も少ないってのにー……ハアーッ……」
エノキが珍しく弱気だ……じゃあ、ここからは――。
「俺がやるしかねえ!」
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