第56話 アメリカ勢と合流
完結まで毎日投稿します。
「うおおお!」
壁の外で驚くウェイバーだったが俺の光輪の仕業だと分かると「やるな!」という顔を見せた。
正直俺も思っていた。『光輪をデカくする』というだけで全方位に向かって攻撃が出来るのは強いと。
建物の中でこれやったらあっという間に組織を壊滅させられるんじゃないか?
「なあ。相手の本拠地に潜り込んだ場合、今の使いまくったら余裕で勝てるんじゃね?」
「ああ、確かにこりゃあ強いな……オルターには鉄筋コンクリートの建物なんて無いからほぼ無双状態だろう、頼もしいぜ。ただ問題は敵より仲間の方だな――」
ウェイバーは斜め上を向いて考える様子を見せる。俺はその言葉で理解した。
「確かに周りに味方がいたら巻き込むよなー」
俺はちょっと冷静になって考えた。今は全員集合してたから良かったけど……。
そこでエノキは俺に文句を言ってきた。
「タイチ、やるならなんか合図しろよなー!?これ食らったら死ぬだろ!」
「お、おう。そうだな……じゃあ俺が『一』って言ったらみんなしゃがんでくれ!」
俺は皆に聞こえるように大声でそう言って手を上げた。
「いくぞ、一!!」
俺は叫び、光輪を出す!
するとほぼ全員がササッと地面にしゃがみこんだ。皆速い!香織だけはちょっと反応が遅れていたがまあ問題ない。
俺は胸の高さに光輪を出し、両手をバッと横に広げ光輪の径を拡大させた。
ブワッ――。
ついでにどこまで光輪を拡大出来るかやってみる。
フオォォォ……ン。
「……なるほど、最大半径は20メートル位か」
俺は全長40メートル位まで大きく広げられた光輪を見ながらつぶやいた。ん!?
何を思ったかエノキはその広げられた光輪に向かって走り出した。――あれ?手になんか石みたいものを持っている。何する気だ?
エノキはその石で光輪を叩いた。
フッ――!!
「あ!また消えた……エノキの石で破壊されたのか!?」
「やっぱりー……」
エノキはまるで分かっていたかのような言い方をする。
「なんでそう思ったんだよエノキ?」
俺はこちらに戻ってきたエノキに聞いた。するとエノキから返ってきた答えは単純だった。
「いや、だってこれだけ光輪をでっかくしたら密度が下がって強度も下がると思うじゃん?」
「う、まあ普通に考えたらそうだけど、こう、魔法的な感じで……なあ?」
「でも実際消えちゃってるからね……」
隣の香織も現実を肯定している。
まあでも確かにそうだな、俺も考えを改めねば。
光輪を大きくした場合にも基本形と同じ強度を持たせるためには、より強固なイメージを描かなければならない。
――そうしているとジャンタンがまとめに入ってくれた。
「よっしゃ!じゃあそろそろ現地に向かうぞ。指導者のダッバーフはコイツな」
ジャンタンは皆にダッバーフの顔写真を渡した。
「コイツにゃ色々聞きたい事があるから出来るだけ生け捕りにしたい。それと……太一と香織に言っとくけどよ」
ジャンタンはここで一旦話すのをやめて真剣な表情で俺と香織をじっと見た。
「何?ジャンタン」
香織は首を傾げる。
「お前ら今まで人を殺した事ないだろ……?」
低めの声でそう言われ、俺はジャンタンの言いたいことが分かった。
「もちろんないぜ。……あれだろ、相手に情けをかけるなって話だろ?俺は大丈夫。でも香織は多分無理……だよな?」
「……うん。でも魔法なら大丈夫かも……」
うつむきながらそうつぶやく香織だった。
俺は香織の背中をポンと叩き励ました。
「まあ、無理すんな。風魔法で十分だ。頑張ろうぜ」
ジャンタンはここで大事なことを強調するように俺達にこう話した。
「お前らも聞いての通りムルファー団ってのはテロ組織だ。罪もない人間を見せしめに殺したり奴隷にしたりやりたい放題の組織だ!だから躊躇するな!絶対にだ!でないとこちらが死ぬ。エノキとマウロは俺が言うまでもなくその心構えがある。あとはお前らだ、覚悟を決めろ!!オーケー!?」
「おう!」
「……うん……」
……と、いうわけで俺、香織、エノキ、マウロ、そしてジャンタンの5人がデヴォンシャーを出発した。
「飛んでいくかい?走るよりかなり速いよ」
デヴォンシャーを出てすぐ、マウロがジャンタンに聞いていた。俺はちょっとワクワクした。
「おう、魔力は大丈夫なんだなマウロ?場所はサムス砂漠だ。あのデケえ岩んとこな」
「了解」
そんなマウロを見て、エノキはちょっと嬉しそうに言った。
「あはっ、兄貴やる気出てきたじゃん?いいぞいいぞー!」
マウロはちょっと笑って白い魔法陣を描く。それに呼応するようにエノキも緑の魔法陣を作り5人全員にハイドをかけた。
香織を見ると表情がこわばっている。俺も対人戦は初めてなのもあってちょっとドキドキしてきた。
ジャンタンが号令をかける。
「よっしゃー。行くぞ!」
――それは俺達が今まで経験したことのない飛行機みたいな速度だった。時速500キロぐらいあるんじゃないか?
そんな中でもマウロは生身の俺達に風をほとんど受けないように気流をコントロールしてくれた。
エノキもそうだけどコイツも十分やべーよな。
マウロの風魔法により、俺達はほんの2~30分でサムス砂漠の大岩までたどり着くことが出来た!
「はっやー!!」
俺と香織は同時に驚いた。いやほんと……。
「やるじゃん!兄貴」
マウロの風魔法はエノキにとっても好評だったようだ。
「おうっ!久々だな」
ジャンタンが突如誰かと話しだした。通信が入ったのか?――と思ったら突如背の高い男と見覚えのある女が岩陰から姿を現した。
「あ!シャロ!!」
「ハーイ、タイチ!?……と他はジャンタンしか知らないわね。こんにちは、私シャーロットよ」
以前と変わらずハキハキと喋るシャロ。隣の男は初見だな……。
「……ジョージだ。よろしく頼む」
なんか出来るビジネスマンっぽい感じのメガネを掛けた男だった。顔は無表情だった。
「コイツら強いのジャンタン?」
エノキが二人を指さして聞いている。コイツは相変わらず遠慮も何もないな。
「誰よこの子?」
シャロもちょっとムッとしてジャンタンに聞く。
「ウ、ウチを知らないのか!?将来の大魔道士だぞ?」
「名前は?」
「エウラリア!おぼえとけよー!」
俺は横からこう言った。
「俺達はエノキって読んでるぞ。エノキでいいよ。隣の男はマウロ、エノキの兄貴でこいつもすっげー魔道士だ」
「エノキにマウロね。OK!」
するとジョージがゆっくりマウロの前に歩いていき握手を求めた。
「あなたがマウロか。頼もしいな、よろしく」
マウロもそれに応じて握手をする。
「よろしく」
「もしかしてマウロって有名人なのか?」
「まあ、部隊にスカウトされる前は多少ね……」
「……で、そのタイチの後ろの子はどちらさん?」
シャロは香織に手を向けて聞いた。
「あ、あの……石田香織です。香織で、お願いします……」
香織は全く余裕のない表情をしている。そんなに人見知りなわけでもないハズだが……。いや、違うな。どうもデヴォンシャーでAKの実弾射撃を見てから恐怖に支配されているようだ。
そんな香織の様子を見てシャロはこう励ました。
「カオリ。そんな緊張しなくて大丈夫よ。私達補サポート班は基本ずっとハイドで消えてりゃいいし、そんな危険なことないハズよ」
「いやコイツはハイド使えないし思いっきり前線で戦う予定だぞ」
「は!?」
俺はありのままを伝えたところ、シャロとジョージは驚愕した!
「カオリ、あんた勇者なの!?気は確か?全然戦闘要員に見えないんだけど……魔法が凄いとか?」
「魔法は一昨日覚えたばっかだ」
シャロは険しい顔をして警告してきた。
「香織、悪い事は言わないからやめた方が良いわ。オルターだからって死んだ人間が生き返ったり回復魔法とかがあるわけじゃないのよ!」
回復魔法あるぞ!と言いかけたエノキを遮るように香織は言った。
「太一っ、ごめん!やっぱり私無理!!……シャロさんとサポート役やる」
「うん!その方がいい」
正直俺はホッとした。いくら俺が光輪でシールドやらを出せると言ってもやはり怖い。
香織が死んだらしたら……。俺は……絶対に耐えられない。それだけは嫌だ!
「えー何だよ香織だらしないなー。私の初陣もこんなもんだったぞ」
「う、うるせぇー。お前みたいなバケモンと一緒にすんな!!」
俺はエノキの煽りを一蹴し、香織の肩を叩いてシャロの方を向いた。
「じゃあちょっと香織を頼むわシャロ」
シャロは頷き香織と握手した。
「よろしくね香織!」
それによってやっと香織に笑顔が戻った。俺は安堵のため息をつく。
「そう言えばシャロ達は戦闘員じゃないんだっけ?何するんだ?」
シャロはニッと笑ってカバンから何かを取り出した。
「あ、コレはもしや……」
「そ、ドローンよ!」
シャロはドローンやノートパソコンの起動作業をしながら笑って答えた。
「やっぱりまずは敵情視察よね」
「カカッ、ドローンとはさすがシャロだな。本拠地の場所は俺が案内する」
ジャンタンが上機嫌で案内役を買って出た。
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