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光の戦士 ~殺人犯と同じチート能力を持ってますが悪用しません~  作者: 池田大陸


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第54話 テロとの戦い

72話完結です。しばらく毎日投稿します!

 

「え?境界人!?」


 俺達は驚いた。ウェイバーは続ける。


「ああ、オルターで悪事を働く境界人がいることが分かった。とあるテロ組織に所属している奴だ。このままではオルターでの俺や境界人に対する信頼も危うくなる」


 俺はその説明にすぐ違和感を感じ、質問した。

「あれ?確か境界人は安全な奴かどうかウェイバーがちゃんと調査してたハズだろ?」

「ああ、世界樹の根元に出来た境界は全部チェックしてる。だがそれ以外にどこかにポッと出来た境界――通称『はぐれ境界』というものが存在するんだ」

 はぐれ境界?なんかすぐ逃げだしそうな境界だな。


 ウェイバーは説明を続ける。

「おそらくだが、境界人のダッバーフという名の指導者はそのはぐれ境界からオルターに来て、過激派組織『ムルファー団』に合流した。組織の奴らも境界人ということで貴重な戦力としてもてなしたんだろう。そしてダッバーフはオルターを上手く利用して現実世界で多額の資金を手に入れ、中東で新たなテロ組織として勢力を拡大させているようだ」


 俺は昨日のテレビの話を思い出した。


「ムルファー団って昨日テレビでやってたな、そういえば」


 ウェイバーは話が早いと言いたげな表情でちょっと笑って言った。

「お前も見てたのか太一。そうなんだ。あんな中東のテロ組織がうじゃうじゃいるとこでぽっと出の新興宗教があれだけ規模を拡大できるのは異常だ。そう思って以前から世界樹の望遠カメラで探しまくっていたんだが。昨日やっと見つけたってワケだ」


「望遠カメラで探すの?」


 香織が疑問を投げる。

 ジャンタンはそれに答えた。


「おう、肉眼じゃハイドを使われてた場合、人であれ境界であれ見えなかったりするしな」


 なるほど!確かに。ハイドの事忘れてたな。

「まあ奴らも馬鹿じゃない。はぐれ境界を岩のようなもので囲ってカモフラージュしているようだな。パッと見はただの岩山だからカメラを使ってもなかなか発見出来なかった」


 俺と香織はしばらく考えていた。

 確かにオルターで境界人が何かやらかすのは同じ境界人として非常にマズイな。なんとかしないと!


「ねえ、そのダッバーフっていう境界人はオルターじゃなくて地球で悪さをしているんでしょ?オルターじゃ何か目立った事はしてないの?」

 香織がウェイバーに聞いた。


「おう、それなんだが――。オルターでは特に被害の報告が上がってないんだ。不気味だろ?」


 俺もちょっと気になった事を聞いてみる。

「なあ、ムルファー団ってのは何でその、ダッバーフ?……って奴を指導者にしたんだ?境界人ってだけでいきなりそんな地位につけるもんなの?」


「おう太一。だから不気味なんだよ。仮にそのダッバーフが光の能力者だった――とかだったらやべえだろ?」

 ジャンタンは険しい表情でそう言う。

 確かに、悪用されたらこれほど怖い能力はない。まあ過去2回ほど悪用されているが……。


 ここでウェイバーは恐ろしい事を口にした。

「これはまだ俺の推測だが……ダッバーフはムルファー団に銃火器や爆弾といった武器を提供している可能性がある」

 その場のウェイバー以外の全員が驚いた。そ、それはとんでもない事なのでは!?


「今朝、奴らのアジト付近の岩壁に弾痕のようなものが複数発見された。ダッバーフはムルファー団に武器を提供しオルターでのテロ活動を支援する、その代わりに()()()()()()を地球に持ち込みダッバーフの地球でのテロ活動の軍資金にしている――」


「何らかの資源ってもしかして……『石油』、とか?」


 香織がちょっと自信なさそうにウェイバーに尋ねる。

「お!正解だ香織。オルターじゃ産業革命も起きてないし石油なんて泥水同然の扱いだ。ランプの燃料にしたって火の魔法があるから石油はオルターじゃ無価値に等しい」

「ふーん。じゃあお互いにとってwin-winな取引ってことね」

 顎に手をあてて香織は納得している様子だ。


 ジャンタンは俺と香織に確認を取った。

「とにかくこの状況は俺達境界人にとってもオルター人にとってもまずい。銃なんかオルターでテロに使われたら最っ悪だ。だから被害が出てない今のうちに絶対ムルファー団とダッバーフを捕まえねーととんでもない事になる!」

 俺はもう考えるまでもなく即答した。


「よし。今からそいつらぶっ潰しに行こうぜ!!」


 その時ジャンタンは吹き出し大笑いした!

「ぎゃははははははは!」

 ウェイバーもクックッと笑っていた。あれ?なんで?


「どうしたよ太一お前やる気ありまくりじゃね―か!?相手は銃持ってるかも知れねーってのに、……お前怖くねーのか?」

「うーん……俺今まで銃で打たれたこと無いからなー、実感がないっていうかー。まあなんとかなるだろ!この光輪もあるし」


 俺は自分を中心にして一つの光輪を出し、縦に薄く伸ばし円筒状のシールドのような形にした。ジャンタンが以前言っていた形状だ。銃器相手なら相当強い盾の代わりになるだろう。


 ウェイバーは満足そうな笑顔を見せた。

「太一は問題なさそうだな。香織はどうかな?」

 香織は難しい顔をして困っているようだった。まあそうだろうな、普通の日本の女子大生がテロ組織を相手に戦うなんて無茶――。

「私も戦いまーす!」


 ええええええ!おいまじか!?

「ちょっ、香織大丈夫か!?無理すんなよ」

「大丈夫でしょ。太一がいるし。それにこの服の防御力すごいんだから!」

 香織は胸のあたりをドンドンと拳で叩いてみせる。うーん、ちょっと、いや大分心配だが……。


 ウェイバーも香織が心配だったようで一つ提案してきた。


「香織、今のところ攻撃手段は魔法だけだよな?もう一ついい方法があるぜ。香織の運動神経が良ければいいんだが……」


 何だろう?ウェイバーはそう言うと下を向き、何かを探す動きをした。

「よし、良いのがあった」

 ウェイバーは落ちていた野球ボールぐらいの大きさの石を拾い上げ俺達に見せた。


「あーなるほど……」隣でジャンタンが手をポンと叩いた。

 次にウェイバーはオレンジ色の魔法陣を展開させる。


 ドドッ!!


 高さ2メートルはある土壁が、現在地から20メートル程離れた距離に出現した!


「オラッ!」


 ウェイバーはその土壁めがけて野球のピッチャーのようにさっきの石を投げつけた!


 ゴウッ!!


「な!?速っ!?」

 ウェイバーの投げた石は何かの兵器かのような猛烈なスピードで土壁に飛んでいった。


 パァン!


 そして土壁から土煙と共に大き目の衝撃音が響き、壁の中央に穴を開けた。


「す、すごーい!……え、何?私にもコレやれって!?いやいや無理無理!」


 香織はこんな球投げられる訳ないと最初は全力で拒否する。

 しかしオルターでは俺達地球人の身体能力はかなり高いので、身につければ確かに強い遠距離攻撃が可能になるか。


 あら?


「おやおや香織さん、無理だとか言いながら早速投げる石選んでるじゃないですかー?えー?」

 俺は香織をからかうように言った。


 香織は手頃な石ころを見つけ俺達に笑顔で見せてくる。かわいい。


 ウェイバーはさっきの土壁を指差す。

 香織、やる気満々で振りかぶる。


 さあ、どうだ――!?


 ピューン……!


 香織は見事なまでに腕の力だけで石を投げ、石は明後日の方向へ飛んでいってしまった。


「あらー……」


 ちょっと残念そうな顔をしている。しかしその球速はかなり早かった!やっぱオルターじゃ香織も普通に強いな。そして確かにフォームを改善すれば普通に攻撃として使えると思った。


 よし、俺も投げてみるか!


 適当な石を見つけ野球中継のピッチャーの投げ方を真似て第一投!


「どりゃっ!!」


 バガッ!!


 投げた石は今まで見た事もないような速さで土壁の上部を破壊した。


「おー!結構イケるじゃねーか太一!」

 ジャンタンは拍手してくれた。


「ホントだ!!ははっ。確かに本格的にやれば強力な遠距離攻撃になるなーコレ」


「……なんなの?みんなバケモン過ぎでしょ……やっぱ私絶対無理!」

 香織が俺やウェイバーの投石を見て、やや呆れたような表情をして言った。


 俺はアドバイスをした。

「いや、香織こそ投石は習得すべきだと思うぞ?」

「なんで?遠距離攻撃なら魔法の方が良いでしょ?」


 俺はその理由を説明する。

「香織の場合どっちかってーと攻撃じゃなく守りで使えると思うんだ。例えばゴブリンとかが至近距離で攻撃してきた時、魔法の呪文詠唱が間に合わない事だってあるだろ?そん時、近接格闘が出来るなら良いけど香織は無理だろ?そこでこうやって投石で攻撃と同時に防御も出来たら強いだろって話」

 香織はなるほどといった表情だ。

「そうそう。俺もそれが言いたかった」

 ウェイバーも同意した。



「あーーっ!何やってんの皆ー!?」


 エノキの声だ。朝から元気なヤツだな。

 こちらへ走って来て何かを察して不敵な笑みを浮かべるエノキ。


「あっ、なんか面白そうな事してたなーこの感じは!?」

「おう、おはようエノキ。お前も誘おうと思ってたんだ」


 エノキと対照的に落ち着いた声でそう話すウェイバー。


「何々!?」

「任務の話だが、とあるテロ組織を潰しに行く」


 ウェイバーがそう答えるとエノキの瞳はより一層輝いた。


「マジ!?ウチも行くぞー」


 拳を突き上げて大きな声で参加を希望するエノキ。


「え、でもエノキって脱獄犯扱じゃなかった?」


 冷静にエノキの現状を語ったのは香織だった。

 そういえばお尋ね者だったなコイツ。


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