第48話 盗撮!魔法協会
70話まで完成。しばらく毎日投稿します!
「え……怪我を治すって、まさか回復魔法!?まじか!」
俺はジャンタンと話していた回復魔法がいきなり実現しそうな事にまず驚いた。
「太一、ケガ大丈夫?血が出てるけど……」
香織は心配してくれている。まあ一応そんなに痛いわけじゃないけど全く平気でもない。
「まあ、血は出てるけど痛みはねーよ。全然平気だ」
なんとなく強がりを言ってみた。
「うそつけー。やせ我慢すんなよタイチ、結構痛がってんじゃん」
エノキの方を向き直ると足元の黄緑の円陣の外側に緑の円陣も追加されていた。
「あれ?今お前『読心』した?」
「うん。回復魔法は科学魔法とほぼセットで使うからさ。で、実はまだこの魔法人に試したことないんだよねー。ふふっ」
エノキは不敵に笑っているが、俺はちょっとガチで怯んだ。だってジャンタンの話だと逆に破壊されるって話だし……。
「エノキ、その回復魔法ってどうなんだ?自信というか……成功しそうなのか?怖いんだが?」
自分の魔法に絶対の自信を持っているエノキは俺の反応に不満を持ったようだ。
「おいタイチ!お前私の魔法が失敗するとか思ってないか!?馬鹿にすんなよ」
「い、いや……別に信用してない訳じゃねーけど……分かった!やれ!」
俺はダン!と相撲の四股を踏むように右足をエノキの方に出した。
一応エノキは読心使ってくれるらしいから俺の痛みはエノキにも伝わるし、まあそこまで心配ないだろう。
怪しくほくそ笑むエノキ。
「ふふっ、やった!初めて人で実験できる」
いや、実験とかいうな。
エノキはさっきの軽い雰囲気から一転し真剣な顔つきになり、俺の右太ももに手をかざす。すると俺の太ももの傷の部分が黄緑に光り出した。
お?なんか、変な感じだ……傷の部分の感覚が無くなっていく、まるで麻酔みたいに。
その間、エノキの魔法陣の緑と黄緑色の割合は少しづつ変化している。見ててなんか面白かった。
俺はしばらく黄緑色に光った自分の足の傷を眺めているとエノキが口を開いた。
「……はい終わった。どう?タイチ」
「えっ!もう終わったんか?はやっ」
意外と早く終わって俺は拍子抜けした。
早速自分の足を見てみるとまるで傷など無かったかのように綺麗になっていた。もちろん痛みも全くない!すげえー!
俺はとりあえず真上に思い切りジャンプしてみた。
すると俺の体は今までとは段違いに高くまで飛び上がった!
日本の二階建ての家の屋根ぐらいなら軽く飛び乗れるぐらいのジャンプ力だ。高さ的には8メートルぐらいか?ははっ、こりゃいいや!
俺は着地してすぐエノキに称賛の言葉を送った。
「エノキお前マジですげー!完璧に治ってるぞ!しかもこんな短期間で」
そしてエノキの背中をバンバンと数回叩いた。
ちょっと困惑しつつもエノキは嬉しそうだった。
「うっ……な、なんだよ太一。い、今のはまだ時間かかりすぎてるぐらいだぞ。初めてだから慎重にやったってのもあるけどね」
「私も怪我したらお願いねエノキ」
香織が両手を合わせるポーズでエノキに頼んでいる。
「いいよ。実験台は多い方がいいし」
「実験台言うな!」
俺は香織とエノキのやり取りを見ていたら思い出した。
「そーいえば香織。シンクロどうだ?できた?」
「んー、無理~。エノキにもちょっと教えてもらったけど出来る気がしないよー。すっごい時間かかると思う……」
香織は困り顔で首をかしげる。
「エノキ、なんかコツとかねーの?」
隣のエノキに振ってみたらいかにも天才という答えが返ってきた。
「えー、コツって言われても……んー、いやホラ。とにかく真似するだけだって、魔力の流れとかをさ。私小さい時から勝手にできたから出来ないヤツが何で出来ないか逆に分かんない」
「何だそりゃ」
やっぱりコイツは特殊すぎて参考にならねー。
ここでウェイバーが口を挟んだ。
「おう、良い感じで皆成長してて何よりだ。ところで前言ってた魔法協会の連中についてだが――ある程度情報が掴めた。図書館でその動画を見てほしい」
「お、渡瀬さんの言ってたやつかい?」
思い出したように俺は言った。
「ああ、太一、香織。地球人的にコレは何に見える?」
ウェイバーは最初広場に来た時に渡瀬さんから渡された小さめの花瓶のようなものを見せてきた。
「え、花瓶じゃね?」
「うん、私も……模様の多い花瓶にしか見えないけど?」
俺達の答えに安心したようにウェイバーは「はっはっ」と笑って花瓶の正体を明かした。
「これな、実は小型のカメラが内蔵されてるんだ。まあ気付かねーよな?」
「マジか!分かんなかったわ」
花瓶を手に取ってよく見てもどこにカメラのレンズがあるのか分からないぐらいだった。
香織も感心したように眺めている。
「ん?……もしかして魔法協会の内部をこれで盗撮したのか?」
「本当はスパイでも送ってやりたかったんだが向こうは科学魔法使いが多すぎるからこのやり方にした」
「へー、おもしれーな」
俺は素直に感心した。
「あ、兄貴がいるぞ?」
突然エノキが誰もない方向を指さした。
するとその先にマウロが姿を現した。いやだから何で隠れてんだよ?
「ハイドで姿を消すのは暗殺部隊の頃からのクセかい?」
ウェイバーはマウロに問いかけた。
暗殺部隊!そ、そんな物騒な組織にいたのかお前!?
「いや、単にリアが僕に気付くかなと思って……ふふ」
なんだろう。マウロが何をしてても変態にみえる。
そんなわけで俺、香織、エノキ、マウロ、ウェイバー、ジャンタン、そして渡瀬さんの7人が図書館に集められた。あれ?クロエは?
「クロエは後から来るのか?」
ウェイバーに聞いたら意外な答えが返ってきた。
「あいつは訳あって呼んでない。動画を見れば理由も分かる」
……まあとにかく動画を見てからだな。
メガネをクイッと上げて渡瀬さんが説明を始めた。横幅1メートルぐらいあるモニターの画面にはすでに何かが写っていた。
エノキとマウロは初めて見るモニターに釘付けになって興味津々という感じだ。兄弟だけあって同じような仕草なのが面白い。
「これは魔法協会の会議室の映像です。問題のやり取りは昨日、会議室にウェイバーさんが到着する前に行われました」
「あ、じゃあさっきの花瓶は昨日ウェイバーが会議が終わってから回収したやつか!」
俺はウェイバーの方を向いて確認した。
「ああ、予約撮影機能があって良かったぜ」
渡瀬さんはリモコンで問題の箇所まで動画を早送りして俺達に言った。
「ここからです、まずは御覧ください」
花瓶は室内全体が見渡せる位置に置かれていてかなり見やすかった。
まず初めに会議室に入ってきたのは若い女の魔道士だった。かなり派手な服装の人だな。
「あ、マデラル領のミカルだ!」
エノキが指さした。
「誰だ?」
「マデラル領主のお抱えの魔道士。コイツめっちゃ性格悪いぞ~」
「ふーん。どんな風に?」
「この先見てりゃ分かるよ」
なるほど。
次に入ってきたのは中年のオッサン魔道士。どっしりとした体格で腹が出てる。オルター人にしては珍しいな。
エノキを見ると頬をちょっと膨らませ笑っていた。
「フレッドのおっちゃんだ!この人面白い」
そうなの?
「ちっ」
先程のミカルが舌打ちする。
「おほほー。ミカちゃんお元気かな~?」
「汗臭いから寄らないでくれる?」
「ぶひょっ。まあまあそう言わないでよー、商売うまくいってるみたいじゃん?」
ミカルは勢いよく椅子から立ち上がりフレッドに問い詰めた。
「は?なんでアンタがそれ知ってんのよ!?」
「まま、風の噂で……ねえ」
フレッドというオッサンはちょっと慌てながら人当たりの良さそうな顔でミカルをなだめる。
二人がそうやっているとそこに別の二人が入ってきた。一人は異様に迫力のある老人、もうひとりは赤髪の背の高い細身の男だった。ん?なにやら赤髪の男は緑の魔法陣を展開させているみたいだが……?
二人が入ってきた瞬間ミカルとフレッドは再びさっと席についた。
なんか画面越しだが会議室に一気に緊張感が張り詰めたように見える。
「おほっ。これはこれは先生、どうもどうも」
フレッドは人の良さそうな笑顔を老人に見せた。
先生と呼ばれたその老人は表情を変えず、フレッドを見てこう言った。
「だっらしない腹やのおー。ワシが絞っちゃろうか?」
「えへへへ。先生に絞られたら死んじゃいますよー」
フレッドは腹をポンッっと叩いた。
そしてその老人はややこわばった表情をしているミカルに言った。
「んー。ミカル、魔法具は順調そうやな。その調子で頼むぞ」
緊張から解かれたようにミカルは老人に笑顔を返した。
「あ、は、はい。ロジャー会長。これからも励みますっ!」
慌てて礼をするミカル。なんかさっきまでと態度が全然違うじゃねーか……猫かぶってんなーコイツ。
しかしどうやらこの老人がロジャーで間違いないな。なるほど、確かに魔道士の長らしいオーラがある。
そしてここでロジャーは大きな声でこんな事を言った。
「おい、ハム。隠れてないで出てきーや」
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