第41話 脱童貞。そして……
67話まで完成。しばらく毎日投稿します。
ウェイバーは俺へのアドバイスと共に明日の予定を伝えた。
そういえばウェイバーって今移動中らしいけど、普段どこに住んでて今日はどこに帰るんだろう?そもそも地球に帰ってんのか、この人は?
「なあ、ウェイバーっていつもどこで寝泊まりしてんの?」
「ん?おお、まあ色々だ。今日はミシェルって嫁さんの所に帰って手料理でも頂こうと思ってる。オルターのな」
「ミ、ミシェル!?冒険者の?」
「おう、また明日な」
ウェイバーはちょっと微笑んで別れの挨拶をすると、すごい速さで走り去っていった。
「――ミシェル寂しがってたぞー!」
俺は手をメガホンのようにして口に当てて大声で叫んだ。……多分ウェイバーのヤツ聞こえてないな。俺の隣で香織が怪訝な目をしてウェイバーの姿を見ていた。
「あの人、いつか刺されそう……」
うん、十分ありえる。しかし刺されてもダメージが通る所が想像できなかった。刺した刃物の方が折れるんじゃないか?
……ちなみに俺は女に関しても一点集中タイプなようで、香織さえいれば他の女に興味が移る気配は全くしなかった。
「よし、じゃあ今日は帰るか。さっきの『空気圧縮』と『強風』のコンボは怖いからまた明日以降試そうぜ」
「そだねー。あんなに舞い上がるなんて、私ホントびっくりした。帰り道は『強風』だけで我慢しよー」
という感じで俺達はバロルを素通りし世界樹の境界から群馬の山小屋へと帰ってきた。
せっかく住居用の小屋も建てているのでそちらに移ってみる。すでに小屋の周りは薄暗くなっているが、LED照明を点けると中は読書できるくらい十分明るくなった。
疲れからかぼんやりとしてテンションも低くなった俺と香織は小屋の床にへたり込むように座った。
しばらくボケーっとする俺達……。
それにしても今日は濃い一日だった。オルターに行くと何かしら新たな発見とイベントがある。そのせいか、yu_tubeの事はすっかり頭から抜け落ちていた。
俺はぼーっとしながらも日本に戻ってきたことで自分の貯金額について考えていた。いや、まだ借金を返し終わっただけで日本円の貯金は0円なのだが明日から毎日20万円ずつ手に入ると思うと自然と顔がニヤついた。
俺はそのときちょっと欲を出し、オルターバンク以外でリルを円に換金出来る裏技はないだろうか?と考えた。
スマホのyu_tubeアプリを開いて試しに「リル 買取」と入れて検索してみた。――すると他の動画とは違い、真っ黒なサムネイルの動画を発見した。
見てみると再生回数はたった7回でタイトルはこうだった。
『警告。オルターに出入りしている人へ』
オルターという単語に「お!」と思った俺は早速そのサムネをタップして動画を見た。音量は隣の香織にも聞こえるように大きめにしておいた。
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この動画はオルターという世界に毎日出入りしている少数の境界人達に向けて発信しているものです。予めご了承ください。
さて、オルターに初めて降り立った時、皆さんはどう思われたでしょうか?恐らくあの世界に対する強い好奇心と自分が強くなったような万能感を感じたことかと思われます。私もそうでした。
そして気が付くと冒険者としてギルドで依頼を受け、魔物を倒し、リルで報酬を受けデヴォンシャーで円に換金するという毎日でした。その生活自体はゲームのように楽しいるものでした。地球人はオルターでは比較的強い肉体を持つ存在です。魔物も意外と簡単に倒せました。しかし私は気付いたのです、オルターでの本当の敵はモンスターではなく人間の魔道士であると。
名前は分かりませんでしたが、一人危険な人物がいます。暗殺部隊に所属しているその人物は赤い長髪で面長の顔。魔道士の割に体術の心得もあります。
あなたが境界人であれば、過去オルターで大量殺人を行った境界人の事はご存知だと思います。奴はそのオルター人版だと考えて下さい。奴は自分の快楽の為に魔法で簡単に人を殺める事ができます。
なぜそんな事が分かるかというと、私もその被害者だからです。
本来なら科学魔法で監視されたオルターという世界において、そのような人間は速やかに排除されていくハズなのですが、何故かあの男だけは例外的に制裁を一切受けないようです。
推測ですが恐らく魔法協会の力が働いていると思われます。
私はウェイバー氏の薦めで境界警備隊に入り、その仕事中に奴と出会い片足を切断されました。有効な回復魔法もありません。
現在私は日本の病院で治療中ですが義足をつける事を考えています。
私のような犠牲者が生まれないよう、動画配信などした事がない私ですが注意喚起の為にこの動画を作りました。今後のために参考にして頂ければ幸いです。それでは。
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そこで動画は終了した。
俺は香織をチラッと見ると複雑な顔をしていた。俺はちょっと聞いてみた。
「この動画出した人、どう考えても本物の境界人だよな、香織?」
「うん、しかも私達より大分先にオルターに行ってる人だと思う。暗殺部隊とか初めて聞いたし」
「ヤバい奴ってどこにでもいるんだな、やっぱり。それにしてもウェイバーの奴こういう情報は一切俺達に話さねーよな、全く……。オルターに恐怖心を抱かせないようにしてんのかな?」
「……」
香織は何か考えているようだった。
「この動画の人、足切られちゃったんだ……」
ああ、それか。
「うん、そうらしいな。香織、怖くなった?オルター行くのやめるか?」
俺はちょっと意地悪な質問をすると、すぐさま返答が返ってきた。
「やめない。太一だけあっちに行くなんて嫌!」
俺は目を細めて笑って香織の耳元でささやく。
「……ここなら邪魔は入らねーな」
そう言って香織を壁際に追い込んで首筋を舐めた。
「あ……っ」
甘い声で香織が囁く、俺はゆっくり服を脱がせていった……。
数分後、その小屋からは生命の営みを感じさせる小刻みな揺れが観測され、天にも登る快感と共に俺達の絆はより深まることとなった。
「あー、幸せ」
香織を家まで送り、自分の家に帰った俺は充実感の極限とも言える表情で部屋の中央に仰向けになった。そして今日起きた夢のような出来事を反芻した。
オルターで強くなっていく自分、増えていく貯金、気の置けない仲間たち……そして香織。全てがいい方向に絡み合っていた。
「俺は幸せものだなー」
と独り言をつぶやくのだった。
次の日、俺は香織を迎えに行くと、いつにも増して明るい表情をした香織が待っていた。
「おはよ!太一」
元気よく俺に挨拶する香織。気のせいか俺との距離がやたら近く、腕を組んできたりべたべたとくっついてくる。
ん?どうしたんだろう?まあ嬉しかったので俺も香織のおっぱいを揉んでみたところ、
「もぉーバカ」
と笑顔のまま怒られローキックを食らわされた。
なぜだ?……まあいいや。
「よっしゃ、行くか!」
――そして約一時間後、俺達はデヴォンシャーに着いていた。
早速日本円をおろすためにオルターバンクに入った。そして受付にはやはりあのお姉さんがいた。
「こんーにちーはーカッコいいお兄さん。私、あなたの名前覚えましたー。佐々木太一さんね?」
「お、やっと覚えたのか。その通り!」
この時の俺はやっと日本円で貯金ができることもあってテンションが高かった。
「とりあえず20万円引き出……」
そう言いかけて俺はちょっと考えた。
「30万円引き出すよ!」
ホントに20万円までしか引き出せないのか一応確かめようとしてみたのだ。
そうするとお姉さんは眉をひそめてこう言ってきた。
「あらー。お客さんウチの銀行の引き出しは20万までって学校で習わなかった?」
習うかそんなもん!俺は心の中で突っ込んだ。
「あ、やっぱ無理なんだな。じゃ、20万円で」
「はーい。じゃ、お待ち下さーい」
……という感じで俺は20万円の現金を手に入れた。そして同時に思い出した。
「そういや魔法具買おうとして20万リルおろしてたけど、もう全種類マウロに貰ったし、1万リルだけ手元に残して後は銀行に入れとこうかな?」
「そだね、持ってても落としたりしたら怖いしそれがいいと思う」
「よし」
というわけで今回、銀行取引の結果こうなった。
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「437500リル」
「800000円」
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「おう、太一覚悟は出来てるか?」
オルターバンクを出てすぐのところで出会ったのはジャンタンだった。
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