第40話 帰路の途中でのキス
しばらく毎日投稿します。
――というわけで俺と香織は一旦日本に帰り、エノキ、マウロ、クロエの三人はしばらくデヴォンシャーで生活することに決まった。
「魔法の練習頑張れよ香織。あと一応タイチもな!」
「俺はついでか!?」
「ありがとエノキ!日本へ帰る途中でやってみるね」
エノキに突っ込みと礼をして俺達は一旦別れを告げた。
別れ際にエノキは、風魔法「強風」を使った高速走りのコツを教えてくれた。
空気を圧縮した凹レンズのようなもので体を支える様なイメージを持ったまま後ろから「強風」でその圧縮空気ごと押し出す!――というものらしい。
まあ要するにヨットみたいに風の力を無駄なく最大限利用するってことだな。
そしてデヴォンシャーの境界からペロド村にたどり着いた俺と香織はすぐさまこの村から離れることにした。だって骸骨ばっかりで怖いからな。
帰る途中、香織は早速エノキに言われた通り「強風」の応用、「空気圧縮」を試してみた。
呪文を唱え足元に現れる白い魔法陣、香織は手を前に出す。そしてそこに空気をどんどん送り込んでバレーボールのような球体を形成する。
ビュウウウゥゥー!
「あ、いけたかも!」
マジか!?
見てみると、たしかに丸いボール状の空気の塊みたいなものが出来ていた。
試しにその球状に触れると、かなり硬い風船みたいな手応えを感じた。コレは凄い!
「コレをもっと平べったくして……真ん中をくぼませるように変形させて――」
パシューッ……!
空気の漏れるような音がした。おしい!失敗か……。
その後も何回か挑戦するも全て上手くいかなかった。
「うーん、難しい……」
香織はため息混じりにポツリとつぶやいた。
よし、適性はないけど魔法使えるようになったし、俺もやってみるか。
香織を真似て「強風」を使った俺が最初にイメージした形、それは俺にとって馴染み深い輪っかの形だった。
ヒュウゥゥゥ……。と言う風の音と共に、空気がリング状に集まっていくのが見てとれる。
ヒュウウゥゥ……プシュー……。
「あっ!」
空気圧を均等にする意識が足りなかったようで穴の開いたタイヤみたいに圧縮空気は消え去ってしまった……。
「あーこれ確かに難しいな」
俺は香織と同じような感想をもらした。
俺のやり方を見た香織は何か閃いたようだ。
「へー、最初から輪っかの形にするんだーやってみよ」
香織は足元にちょうどプールで使う浮き輪ぐらいの空気圧リングを成形し、少しづつリングの穴を小さくしていった。
「お、おお!いいぞ……いけるぞ!」
息を呑んで、俺は思わず実況していた。
――そしてついに地面に圧縮空気の座布団が出来上がった!もちろん穴は完全になくなり凹レンズのような形になっている。これは成功じゃね!?
「や、やったー!ちょっと乗ってみるね」
早速香織は乗り込もうとして片足を乗せた……どうだ!?
「わっ!乗れたっ!見て見て!!」
「おおっ、ホントだ。スゲー!」
「これ、元々空気だから柔らかくて衝撃とか吸収してくれそう……」
「なるほど、コレがホントのエアサスペンション……だな!」
「じゃあ今度はこれに下から空気を送り込めばいいんだよね?」
「うん、多分な。ついに香織も空を飛ぶか。よし、しっかり見とくからな!」
香織は集中してめいいっぱいの風を空気円盤の下から送り込んだ。
――実はこれはかなり軽率な行為だったという事がこの直後に判明する。
ビュゴオオオオオオオオ!!
凄い風音と共に香織の体はとんでもない勢いで空高く舞い上がった!
「香織ーーー!」
飛んでいく香織を見上げて大声でそう叫ぶ俺。ヤバい!アイツはたった今この技を使ったばかりでエノキみたいに使いこなせていない!
このままだと地面に叩きつけられる!ああああ!ヤバい!!
香織はおよそ50メートル位上空まで跳ね上がられ、本人に意識があるのかどうかも分からないぐらい風に吹かれるがままの挙動をしていた。いくらオルターの重力が低いといってもコレはヤバい!
「香織!捕まれ」
俺はとっさにできる限り多くの光輪を出現させて素早く香織の下に飛ばし、体を受け止めようとした。
もうめちゃくちゃ焦った!
「う、お、おおおおおお!!」
とにかく光輪の数は多い方がいい。8個?9個?10個?数えた訳ではないがとにかく必死になって光輪を飛ばした。
――その甲斐あって何とか香織を受け止めることに成功する。
ああー良かった……。正直オルターに来て今までで一番ヤバいと思った……。
安堵した俺は落ち着いてゆっくり光輪に乗った香織を降ろしていく。
あと3メートル、2メートル、1……0。っと、光輪は消さずにそのまま地面に降ろしてすぐさま駆けつける。
香織は内股でペタンと正座するような座り方で、口を少し開け意識を失ったかのように放心状態だった。
そんな香織に俺はすぐさま抱きつき強めのハグをした。
「良かった、死んだかと思った……」
俺は心からホッとしてそうつぶやいた。背中に回した手を離して香織の顔を見てみると、まだちょっと心ここにあらずという感じの無表情でしばらく佇んでいるのだった。
そんな香織を俺はずっと見つめていた。やがて香織はハッとしたような表情とともに光輪から降りて俺に抱きついてきた。
「こ、怖かった……」
ちょっと下を向いて独り言のようにそう言う香織の背中に、俺はまた軽く手を回す。なんかそうしておかないと不安というか……。もしこいつが死んだりしたら俺は正気でいられるだろうか?香織がいなくなったら……その時のことを想像したら……俺はその悲しさに耐えられるかというと絶対無理。
「太一……」
香織が俺の名をつぶやく。それは何かを聞こうとして言った言葉ではなかった。
俺は香織の顔を見つめ続け、不思議な感覚になってきた。
俺の頭は香織の事で満たされ、周りの景色は視界から消え目の前の香織と一体になって溶け込んでいくような不思議な感覚。幸せでこのままずっと抱き合っていたい。
ドキドキしたりはしなかった。ただ自然に、何の迷いも、緊張も、抵抗もなく、自然にキスしていた。香織の唇がとても柔らかい。
キスをすると体中から本能的な欲求が湧き出てきてより強く香織を抱きしめた。香織の方も俺の首に回す手に力をこめる。
舌!?これは舌……か?香織の唇の間から伸びてきたそれを同じく自分の舌で味わうように絡める。チロチロと舌と舌が触れ合うたびに快感と幸福感が全身を駆け巡る。香織はどうだろう?ちょっと舌を甘噛みするとピクンと震える香織……。香織も俺の舌を吸ったり噛んだりする。……至高の快楽。
しだいに俺の右手は高められた情欲により魔法少女姿の香織の背中から腰、そしてなめらかな尻に到達した。その柔らかい感触が手に伝わる。
ちょっと息が苦しくなって俺達は初めてキスをやめた。
「……っはあっ」
「はあっ……はあっ」
ドクン、ドクン、ドクン……。お互いの鼓動は高鳴っていた。香織の顔は火照ったように赤い。そして香織の手が俺の足に伸びる。俺は左手で香織の胸を撫でる――心地よい弾力が伝わる。その時、俺の股間はもう完全に硬――。
と、ふと香織の後ろに誰かが立っているのに気づいた。
そいつは仁王立ちで真顔で俺達のやりとりを見ていて、しかもそれは俺と香織も見知った人物でもあった。
ウェイバー……なんでそこにいるんだお前――。
俺の挙動に違和感を覚えたらしい香織が俺の視線を追って後ろを振り向くと「えっ!?」と発してササッと俺の後ろに隠れた。早っ!
「おっと。別に続けてくれていいんだぜ?」
いつもと変わらない様子でそう言うウェイバーだが見られたままイチャつくなんて俺にはまず無理。香織も同じだろう。っていうかせっかくいい感じだったのに……ウェイバー!この野郎。ちくしょう。
「くっ……もぉ……何だよウェイバー!?冷やかしかよ?」
俺がそう聞くとウェイバーは「フッ」と鼻で笑って、
「俺はただの移動中だぜ?そこにたまたま野外プレイに興じるお前らがいただけだ」
香織は顔を赤くして否定する。
「ち、ちがうからっ!そういうやつじゃないから!!私達は、そ、そんなっ……」
俺も一応フォローしておく。
「そ、そうだよ。たまたまこうなっただけで普段から……その、こういう事しないし……っていうかこういうの自体、その……は、初めてだし……」
「ほう、その辺はまあお前らの自由だから好きにしろ。おい太一、明日はジャンタンから戦闘特訓を受けてもらう。日本でしっかり飯食ってぐっすり寝て来いよ。それと魔法協会について重要な事が分かったからそれも皆に発表する」
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