第39話 再戦!vsエノキ②
66話まで完成。7~80話あたりで完結予定です。
俺は右手で目をふさぎ、出した7つの光輪の光の強さを調節し明るさをMAXにした!
ピカッ!!
以前試したが、俺の光輪は明るさの調節により強烈な光を発する事が可能だ。おそらく地上に降りそそぐ太陽光の2倍ぐらいの明るさはあるだろう。
手で目をふさいでいたにも拘らず俺の視界は隙間からの僅かな光で明るくなる程だった。これは効いただろエノキ!?
俺は空中で捕まっていた光輪を消し、地面に降り立った。
俺を見上げていたエノキは光をまともに食らったらしく、目を抑えてフラついていた。ふははは!見たか!
そこからダッシュでエノキに攻撃をしかける俺、正直もらった!と思ったがそう甘くはなかった。
俺の足音がエノキに聞こえてしまったようで、エノキは魔法陣を展開させた。色は白。あっ!逃げる気だなお前!?
予想通りエノキは7メートル程上空に舞い上がった。エノキが宙に浮くほどの風魔法を使っているため、辺りにはビュウビュウと風音が絶えない。
「くっ……!?タイチ……」
そして地面にいる俺を薄目でにらんでいる。
そろそろ視力が回復してきたか、でももう終わりだ。
「勝負あったな!」
エノキにそう宣言して右手に光輪を出した。あいつは今風魔法を使っている。というわけで他の魔法は使えないはず――。
ん?……これってフラグか?
俺は空に浮いているエノキめがけて光輪を飛ばす。エノキは光輪から逃げるように風をコントロールする。
ゴオオオ……。何とか地面に着地しようとするエノキだが、もちろんそうはさせない!
エノキの移動に先回りするように待ち構え、光輪とダブルで追いかける!
しばらくそうしているうちにエノキは観念したのか空中に静止した。これはチャンス!
スッ……。
俺はエノキの体に光輪を通した。しかし動じず、じっと俺を見下ろすエノキ。何だ?
「お!観念したか?」
とりあえずそう言った俺に対しエノキは「するかバーカ!」と返してくる。
どういうつもりだ?俺はエノキをよく見ると白い魔法陣の外側に紫の円陣が追加されている!
そして何やら俺に向けて手をかざしているエノキ。
あ、コレもしかしてヤバい?俺は急いで光輪でエノキの体を締め上げようとした。その瞬間――!
――ピシャン!
エノキの手から出た稲妻が俺の体を貫いた!
「グアッ!……あっ、……ぐ……」
弱めの雷を打たれたらしい。……まだなんとか意識はあるがフラフラだ。俺は残る最後の力を振り絞り光輪を締め上げる。
「ギャー」
なんか悲鳴が聞こえた、この感じ懐かしいな。
しかし限界を迎えた俺はその場にばたりと倒れこむ。同時にエノキにかけた光輪も消えたようだ。……俺の元に寄って来るエノキの足音が聞こえる。
「はあっはあっ、私の勝ちだなっ!タイチ」
俺の顔を覗きこんで猫みたいな顔で勝利宣言するエノキ。くっそーーー負けた。
「勝負あり!エノキの勝ち」
ジャンタンにそう言われ改めて負けを意識した。
「あーっははっはっは。やったータイチに勝ったー!いえーーい」
なんか拳を突き上げてはしゃいでいる。こ、こいつめっちゃ嬉しそうじゃねーか……。
あぐらをかいて座っている俺にジャンタンは助言してきた。
「なあ太一、思ったんだけどよー。最初から光輪出してエノキにアタックしてた方が良かったんじゃねーか?」
ジャンタンに言われて俺はハッとした。
「――確かにそうかも……試合前にジャンタンと物理攻撃の話してたから特攻しかないと思ってた、くっそ次からそうしよう……」
――というわけでエノキとのスパーリングが終わりシンクロの話に戻るかと思っていたら、ここでジャンタンは何かを思いついたらしく俺達に提案してきた。
「そうか、シンクロの前に魔法の各属性について軽く説明しといた方がいいかもな」
ジャンタンは香織を呼んで説明を加えた。エノキもついでにやってきた。
「よし。エノキは今更だろうが、各魔法属性の性質について説明するぞ」
俺も香織も真顔で聞き入る姿勢を見せる。
「何か必要だったら実演するから言ってよ、ジャンタン」
エノキはジャンタンの助手を買って出た。魔法の事だけはちゃんとするなコイツ。
「まず『風』な。これは他の属性に比べて一番呪文の詠唱の時間も少なく、応用が効きやすい。ただ相手に与えるダメージはそこまで大きくない」
ちょっと離れた所でエノキが風魔法により地面から30センチほど宙に浮いて見せている。
ジャンタンはエノキを指差して解説する。
「うまく出来ると『強風』を応用して足の下に空気の濃い膜を作りそこに風を下から送り込んで浮いたり出来る」
ここで俺は以前エノキがマウロに食らわせた技のことを思い出した。
「空気の濃さを調節出来るってことは相手の近くで真空みたいなモノを作って攻撃も出来るのか?」
これにはジャンタンでなくエノキが即答した。
「出来るけどそれ、加減が難しいから初心者はしない方が良いよ。私もマウロにたまーに使うけどさ」
エノキが真面目な顔でそういっている、ということは実際そうなんだろうな。
ジャンタンは説明を続ける。
「『風』はそんな所だ、次『土』な。土は戦闘補助で使われる事が多い、土魔法で地面をぬかるませたり土壁で相手の移動の自由を奪っている間に一撃必殺の『雷』や『火』の魔法で攻撃するのがセオリーだな」
ああ、それクレメンスとクロエの連携だな。俺は思い出した。
「基本的に土の魔法レベルが上がれば上がるほど分解・合成出来る範囲が広くなる。後動かせる土の量も多くなる」
「分解・合成ってどういう事?」
香織が尋ねる。
「レベル1だと細かい土から砂粒へと錬成。その逆に砂粒から細かい土……ってぐらいだが、レベル4だと細かい土からいきなりデカい岩盤!そしてその逆……って感じに変形できる規模がデカくなる。よくある岩盤を出しての攻撃や防御をするのは大体レベル3だな。まあ魔法のレベルってのはあくまで目安だけどな、エノキにとってのレベル2が他人にとってのレベル4クラスってことも普通にありえる」
それを聞いてエノキの方を見ると、得意げに笑って魔法陣を出していた。色はオレンジ。
「んーレベル2の土魔法って……こんなモン?」
ズンッ!
突如、地面から高さ3メートル程の鋭利な円錐状の岩が飛び出てきた!うわっコレはまともに食らったら死ぬんじゃねえか……?
この鋭く尖った岩に突き刺されたら、いくら丈夫な境界人の俺でもキツそうだと思った。
「この形は本気で相手を殺すときに出す形だよ、模擬戦とかじゃもっとマイルドな形にするよ。当然」
なるほど、よく分かった。
「よし、じゃあ次『雷』。コレは詠唱時間が一番長いが生物に一番即効で効く。ひとたび撃たれたら回避不可だから撃たれる前に術者を倒しに行くしかない。今のタイチみたいにな」
俺がエノキの方を見ると、なんか偉そうに腕を組んで俺を見ていた。
「フッ!」
「なんだよ?」
「最後の雷、思いっっっきり手加減したからな!感謝しろよなタイチ」
またムカつくことを……。
「言っとくが俺も全力じゃねーぞ。初めから光輪を複数個出してずっとお前めがけて攻撃してたら良かったんだよ!」
俺がそう言うとエノキは上を向いてちょっと考えるポーズをとった。そして「あー」とつぶやき、
「それさ……」と間を置いて――。
「超ヤバいじゃん!」と、ただの感想を述べた。
俺は思わずずっこけそうになった。瞬時に対策を編み出されたのかと思っただろ!
ジャンタンは俺とエノキのやり取りを見てちょっと笑った後、引き締まった顔に戻って気になる話をした。
「いいぞお前ら。そういう対戦後の感想戦は大事だ。今後は魔物だけじゃなくて魔道士を含めた人間とも戦う事があるかも知れねえからな」
ん?ここでちょっと気になった。
「敵は魔王とその配下の魔物だけじゃないって事か?」
ジャンタンは眉間を寄せた。
「それなんだが、会合を終えてきたウェイバーさんの話じゃ魔法協会の奴らに『余計な手出しをすると血を見るとこ事になる』とまで言われたらしい」
「その、魔法協会が私達境界人の協力を拒んでるのはなんで?」
香織が最もな疑問を口にした。それに答えたのはいつの間にか近くに居たマウロだった。
「それは魔法協会の会長ロジャー=アディンセルが境界人を警戒してるからじゃないか?」
「お、マウロ……」
ジャンタンは突然話に入ってきたマウロにちょっと驚いていた。
マウロはそのまま続ける。
「あの人は32年前、境界人による王室騎士団大量殺人事件の犯人を殺害しているが、同時に多くの部下を殺され失った。恐らくそれが尾を引いているんじゃないかな?」
「しかし32年前だろ?確かにその犯人と同じ地球人を憎むってのは分からん事もねぇけど根に持ちすぎじゃねーか?そんな犯人は地球人の極一部だし、今なんかほとんどの地球人はウェイバーさんに調査されて危険な奴はオルターには居ねえしな」
ジャンタンは困った顔をしてそう言った。
エノキは珍しく落ち着いたトーンでつぶやいた。
「ロジャーの爺さん凄いけど苦手だなー。会うと緊張するもん」
「え!?エノキがそこまで言うってどんだけいかついんだよ……」
俺は正直魔法でエノキやマウロを上回る相手というのが想像出来なかった。
「ねえ、魔法協会のことも気になるけど、出来れば科学魔法早く教えて欲しいのジャンタン。私とタイチはそろそろ帰らなきゃいけないし」
ジャンタンにそう催促した香織を見て、俺はスマホをチラッと見ると、夕方の4時を回っていた。
ジャンタンも俺と同じように時間を確認して、緑の魔法陣を出して人差し指を左耳に突っ込んだ。『通信』か。
「――ウェイバーさん、今日のところは一旦日本に帰しますが良いっすか?……はい……ははっもちろん!明日からしごいてやりますよ。……はい、じゃあ――」
会話を終えるとジャンタンは魔法陣を消して俺達に聞いた。
「明日また朝から来れるか?」
「オーケー!」
「大丈夫!」
俺と香織はほぼ同時に答えた。
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