第37話 スパイ疑惑と初めての魔法
しばらく毎日投稿します。
その瞬間ウェイバーも緑の魔法陣を出した。あ、これもしかしてお互いの脳内を覗いたりブロックしたりというヤツでは?
「オイオイ……」
その状況にジャンタンは困惑した。
「初対面から随分な対応じゃないか?マウロよ」
ウェイバーはマウロの顔を知っていたようだ。
「え、マウロ!?めっちゃ大物じゃないっすかウェイバーさん。初めて見た……」
ジャンタンはマウロの顔までは知らなかったようだ。
「はじめに言っておこう。僕は魔法協会も境界人の事もそこまで興味はない。ただ妹のエウラリアが幸せならそれでいい。だからもしエウラリアに何かしたら僕はあなたを許ない!」
マウロのその目はクロエを殺そうとした時と同じ本気の目だった。
ウェイバーはちょっと困ったような素振りを見せてマウロに言った。
「なるほど、それに関しては安心してくれ。エウラリアの存在はこちらとしても頼もしい戦力だ、できる限り丁寧にもてなそう。協会とは対立関係にあるあなたも同じ扱いを約束する。ただマウロ、君は境界人ではないしスパイ疑惑もある。このデヴォンシャーにいる以上『読心』は必須だ。分かってくれるな?」
マウロはウェイバーの顔から目を逸らすと「ふーっ」と息を吐き、魔法陣を消した。
「まあ、こちらも追われている身だからね、かくまってくれるのはありがたい。あなたに従おうウェイバー」
「物分りが良くて助かるよ」
マウロの足元から魔法陣が消えたのを確認するとウェイバーはニッコリ笑った。
そしてマウロの方を見て『読心』で心の中を観察し始めた。そしてウェイバーはエノキの方をチラッと見て言った。
「マウロ、君は本当に妹の事しか考えてないんだな……。驚いたぞ」
「当然!僕等の絆は古代魔法よりも強いんだ!」
それを聞いてエノキは反発した。
「は?そう思ってんの兄貴だけだぞ。馬鹿じゃねーの?」
今度はマウロが唖然とした表情でエノキに詰め寄った。
「リ、リア!ひどくないか!?僕はこんなにもお前を大切に思っているのに……」
「だーかーらー!こっちはいい加減うざいんだよ。分かれよこのシスコン野郎!」
――ここで無駄な争いが発生しそうなのを予知したジャンタンが止めに入った。
「おうおうおう。ちょーっと待っとけ二人共!今は兄弟喧嘩してる場合じゃねえんだ。後にしてくれ」
にらみ合う二人はジャンタンに間に入られ、マウロはシュンとしてエノキはガチギレの表情だった。
「後はそこの君。マウロと同じく念のために『読心』させて欲しい。よければそちらから科学魔法を解除してもらえないか?」
ウェイバーは喧嘩状態の二人を放置してクロエの方を見た。しかしクロエはとても困ったような顔をしつつ解除する気配はない。
「で、でも……私……」
ウェイバーはちょっと顔を険しくして追求した。
「それとも何か『読心』されて困ることでもあるのかな?」
「クロエはウェイバーのファンなんだぞ」
俺はいきなり言った。
振り返るウェイバーと顔を赤くして慌てふためくクロエ。なんかいつの間にかクロエの緑の魔法陣が消えている。魔法を使うにはある程度の集中状態が必要らしいがそれも無理なレベルで照れているらしい。
「サイン書いてやれよウェイバー。多分照れくさいんだよ」
俺がそう言ってやるとウェイバーは「おお!そうか。お安い御用だ」とメモ帳らしきものを取り出しサインした。その間もウェイバーの緑の魔法陣は消えていない。
「ん?……うん、確かにファンだな。今度ともよろしくなクロエ」
ウェイバーに笑顔でそう言われ肩を叩かれたクロエは、しどろもどろになりながらもお礼を述べた。
「あ、は、はい!ありがとうございますウェイバーさん」
そして俺はなぜかニコニコ顔の香織に平手で背中をパーンと叩かれた!
「え?何!?」
香織に尋ねるも返事はなく笑顔でこちらを見ているだけだった。……謎だ。
あ、そう言えば俺と香織はとにかく魔法を覚えなきゃいけなかった。早速ウェイバーに掛け合ってみる。
「なあウェイバー、俺も香織も魔法覚えたくてマウロんちから魔法具持ってきたんだ。早速全種類試そうぜ!」
それを聞いてウェイバーはニカッと鋭い笑顔になった。
「おう。そうそう!俺もお前ら二人に言おうと思ってたんだ。どっちかでも『通信』が出来ないと連絡が取れないからな」
やっぱり連絡が取れないとまずいというのは共通認識だったようだ。
俺はふとエノキの方を見ると、さっきまでマウロに怒りをぶつけてたのに今は何やら楽しそうにジャンタンと話している。
マウロはまだ冴えない表情でエノキとジャンタンをやや遠巻きに眺めている。
「エノキ!前みたいに魔法教えてね」
エノキに向かって香織は、やる気満々という顔で話しかけた。
「おー!香織、任せろって。立派な魔導士にしてやるぞ」
エノキもノリノリで答える。
「俺も頼むぜ、エノキ」
俺も香織に続こうとしてそう言ったがエノキの反応は香織の時とは違っていた。
「え、タイチも魔法おぼえんの?」
エノキはちょっと眉をひそめた。
「ん?なんか問題あるか?」
「なんとなくタイチは向いて無さそうに見えんだよねー……まあ勘だけどさ」
このエノキの予感はその後、見事に的中してしまうのだった。
俺はジャンタンが監督する中、5大属性の全ての魔法具を使って分かったのだが、なんと俺は全てに適性が無かった……。
俺はへこんだ。
「ひ、一つも得意な魔法が無いって……マジか!?」
「まあしゃーねえよタイチ。お前は光輪っつうチート能力があるじゃねーか。言っとくけど俺だって雷しか適性ねーからな。得意分野が違うだけだって!」
落ち込む俺を励ますジャンタン。一方香織の方はというと――。
バチッ……バチバチィッ!
大きな放電音が響く。
俺と50メートルほど距離をとって修行していた香織だが、どうやら雷の魔法を使ったらしい。
「あ、なんか出来た!私雷も適性あるみたい」
エノキも驚いていた。
「やるじゃん香織!これで全部適性ありだな!ヒューッ」
――なんとだと!おい、不公平だろ!?
「すげーじゃん香織。やっぱり私の目に狂いはなかったね!」
エノキが我が事のように喜んでいた。香織も「えへへ」と嬉しそうにしている。
しかしこれで俺はレベル2までの全属性の魔法、香織はレベル3以上の全属性の魔法を使えるようになった訳だ。
ちょっと魔法……試してみよう!
俺は風魔法のレベル1の呪文を唱えた。これは短い言葉だが日本語やおそらく地球上のどの国の言語でも表現出来ない発音だ。しかしそこは魔法具の力で頭に入ったのでそんな得体の知れない言葉でも唱えることができた。魔法具すげえ!
そうすると足元に白い小さな魔法陣が出て来た!魔法慣れしていないのでやはり感動する。
サァ――……。
ほんの少しだけ風がそよいだ。おおっ、これが魔法……はははっ、めっちゃ楽しい!
「すっげー!ホントに魔法使えたぞ俺。あははははっ!いえーい」
猛烈な嬉しさが全身を駆け巡り俺は子供のようにその場で飛び跳ねたり無意味に5点着地したり腕をグルグル回したりした!なぜか最初に光輪が出たときより数倍嬉しかった。まああの時はそれどころじゃなかったしな。
俺の異様な喜びように若干引いているエノキと香織……。だが香織は「お、おめでとう太一」と一応褒めてくれた。俺は香織に笑顔を返した。
一方エノキの方は微妙な顔をしながらこう言った。
「なあタイチ、レベル2の風魔法使ってみてよ」
「お、おーけー」
一旦足元の白い魔法陣を消して今度はレベル2の「強風」に挑戦してみる。
俺はさっきの「微風」よりちょっと詠唱時間の長い「強風」の呪文を読み、白い魔法陣を足元に描いた。
ザザアアァァァァ――……!
周囲の草や皆の服が俺の魔法でそよいでいる。おおおーいいねいいねーさっきより大分強い風だー!俺はチラッと香織の方を見た。もちろんパンツを見るためだ。しかし――。
ドヤ顔で腕を組み俺を見る香織。スカートを見ると……それはスカートではなくスカート風ショートパンツになっていた!おまっ、縫い合わせたのか。くっそ――ロマンを返せ!
「ちょっとタイチ、タイチ」
ここでエノキが俺の魔法を止めようとしてきた。一旦魔法を止める俺。
「なんか威力弱くね?香織、『強風』やってみてよ」
エノキにそう言われ香織は「強風」を使った。その瞬間ゴオオオッという爆風が吹いて俺も含め辺りの人間は吹き飛びそうになった。あれ?俺のと全然威力が違うじゃねーか……。
「うおおっ!何だこりゃ?ホントにレベル2の『強風』かよ!?」
ジャンタンも必死に風に抵抗しながら驚きの声を上げる。
マウロは自分の風魔法で風を防ぎつつ顔を上げて感心したように香織を見ていた。
香織はそこで魔法を止めた。
俺はとりあえず香織に負けを宣言した。
「やべーな香織。俺、魔法じゃ絶対お前に勝てねーわ」
「えっ、どうしたの?もっと対抗してくんなきゃつまんないじゃない?」
挑発的な顔を向ける香織。しかし俺は魔法の才能はないことを自覚した。
「いや、魔法の上達はそっちに任せるわ。ただ俺も科学魔法だけは使えないとまずい」
俺はちらっとジャンタンの方を見た。……あれ?そう言えばウェイバーとクロエどこ行った?
不思議なことに二人の姿はいつの間にか消えていた。
ジャンタンは俺の現状をこう分析した。
「今のタイチの状態だと――科学魔法はほとんど使えねーかもな」
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