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光の戦士 ~殺人犯と同じチート能力を持ってますが悪用しません~  作者: 池田大陸


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35/72

第35話 救出

65話まで完成。しばらく毎日投稿します。

 

 クロエは最初から足元に赤い魔法陣を描いて現れ、お面を被った怪しい三人組を発見したことで瞬時に火の魔法を使ってきた。

 あ……これヤバい!俺の頭の中に焼け焦げたイノシシの姿が浮かんだ。


「熱っ!!」


 周囲の空気の温度が急上昇し、俺は命の危機を感じた。


ビュオオオオッ!


 ――だがクロエの魔法とほぼ同時に香織が『強風』を放ち、それによってクロエは通路のレンガの壁に叩きつけられ火の魔法は不発に終わった。た、助かった!


「あうっ……ううっ!」


 痛そうに悲鳴をあげ苦痛に歪んだ表情を見せるクロエ。どうやら魔法どころではないらしい。

 お陰で俺達はなんとか焼き人間にならずに済んだ。

 俺の周囲の空気はほんの一瞬だけ発動したクロエの火魔法によってサウナのような暑さになっていた。

 あー危なかった……。


 パキンッ!


 その時、手元の光輪の方から音がして見てみると牢屋の鍵はキレイに破壊されていた。

 俺はその扉を開け、今度はマウロの動向に注目する。するとマウロは壁に打ち付けられ痛みに耐えるクロエの目の前に立ち、腰から短剣を取り出した。


「悪いが死んでくれ」


 いや、ちょっ、ちょっと待て!俺はマウロに後ろから抱きつくようにして制止した。

「なにも殺さなくてもいいだろ?」

「ダニエル、この魔道士は僕達にとって厄介な敵でしかない。今殺しておくのがベストだ」

 マウロは目が本気だ。俺は困った……マウロの言い分も分かる気はするが、少しだけとはいえ共に戦って一緒に飯まで食ったとこがあるヤツを目の前で殺されるのはやはり嫌だ。

 必死にいい方法を考えて俺はクロエにこう質問した。


「なあ、お前にとってエノ……エウラリアって何だ?」


 クロエは苦しい表情を見せながらも俺の質問の答えを探すと同時に、俺の声に聞き覚えがあるような――といった表情をしている。

「エウラリアは……友達です」

 クロエは言い逃れや変な企みではなく、正直な気持ちでそう答えたようにみえた。

 後ろからエノキもクロエを庇うようにこう言った。


「お、おいこら、お前!クロエに何する気だ。やめろバカー!」


 その瞬間マウロはビクッと体を震わせお面を外し、エノキを振り向くと泣きそうな顔をしていた。

「おお~……すまないリア。許してくれー。こんなところに閉じ込められて辛かっただろぉー……」

「あ、やっぱ兄貴か……」

 エノキはある程度予想していたらしく驚きは少なかった。


 そ、それにしてもえらい変わりようだ……さっきまでの殺気に満ちた目は一瞬で消え、へにゃへにゃと歩きながらエノキに近づいていく。

 だ、大丈夫なのか!?


 マウロはエノキに抱きつくとガチ泣きし始めた。

「し、心配したんだぞ~ホントに。……良かった~生きてて……」

「い、いや、別に殺されるような事はないってクロエにも言われてたし……まったく心配性な兄貴だなーもー」

 エノキも一応兄貴に手を回して軽く抱き返してはいるがやや鬱陶しさの混ざったような表情をしている。


「ねえ、皆一旦ここから脱出しない?」

 ここで香織が皆を促すように言った。そうだよ、早く逃げないとヤバい!


 その瞬間マウロはさっきまでのへにゃっとした態度からまた一転し、しっかりした足取りで俺が開けた穴まで走った。

「ああ、皆こっちだ!」

 と言って地面にある穴を指さすマウロ。それに続くようにエノキは走り出し、途中でクロエの方を向いて手招きした。


「お前も来いよ!クロエ」


 クロエはうつむいた状態で迷っているようだった。……まあそうだよな、こいつはエノキの友達だが立場的には王室の人間だ。ここで俺達に同行すれば王室には戻れないかも知れない。クロエの人生そのものを大きく変えてしまう。

 俺はどうしたもんかと考えて、とりあえずこう言った。


「ここに来た皆はエウラリアを助けたいって気持ちだけで集まったんだ。お前もエウラリアと一緒にいたいなら乗れよ。10秒やる」


 俺は光輪を円盤状の座布団のように変形させ、クロエの前に持っていった。

「あ、やっぱり、タイチさん……?」

 予想通りお面越しでも声でバレていたようだ。そして光輪で決定的になった。俺はちょっとお面を持ち上げ笑顔を作って軽く挨拶をした。

「よっ」

 クロエもつられて笑い、それと同時に円盤状の光輪に正座で乗ってくれた。おっ、来てくれるんだな!


 穴の方から遠目に見ていた香織がお面を外して近寄ってきた。

「大丈夫?えーっと……クロエ……で良かったかな?」

「あ、はい……なんとか」

 香織とクロエはしばらくお互いの顔を見合っていた。

 俺はこの二人を改めて見るとやっぱり顔が似てるなーと思うのだった。

「うっし、とりあえず逃げるぞ!」


 それから急いで穴に走り、クロエを乗せた光輪を先頭に香織、俺の順で穴の中に入った。そしてマウロの持ってきたスノコを穴に被せた。

「このスノコにはハイドがかけられてて城内の人間には当分は見えないらしい」

 俺が二人にそう説明すると、光輪に座ったままクロエがスノコを見上げた。

「たしかに科学魔法がかけられてますね。これであなた達は地下牢から自由に城内に出入りできてしまう……」

 何か迷いのある言い方だったが、元々敵同士だったからしょうがないか。

「ま、話は後だ。行くぞ」


 ――クロエを乗せた光輪を懐中電灯代わりにして俺達三人は出口に向かった。

 しばらく走ると光が増えていった。出口が近いぞ!これでやっと一息つける……、フゥーッ。


 100メートル程あったトンネルからやっと外に出ると、エノキとマウロが何やら妙なことをしていた。

「おい、兄貴うっとうしいから寄るなって!」

「冷たいじゃないかリア、――だがそれが良い!」


 どうもマウロがエノキにまた抱きつこうとするが風魔法で1メートルほどの距離を取られてエノキに近づけない――という感じだった。

 いくつもの白い魔法陣が両者の間と足元に出来ては消え出来ては消え――という現象がずっと続いていた。


「おい兄貴!いい加減にしろよマジで。本気出すぞ!」

 エノキはそう言うと手の平をマウロの方に向けた。

「フフフ、いいぞーリア!お前の成長、見てあげようじゃないか!」

 その時のマウロの顔は笑顔だったが何故かとんでもなく怖いものに見えてしまった。なんか異常者というか変態というか……。

 ――とその時。マウロに向けたエノキの手の先に白い魔法陣が現れ、


 フォン……!


 という音と共にマウロは意識を失ったようにその場に倒れ込む。エノキはそれを背中に支え、ゆっくり地面に横たわらせた。

 今のは何だろう?マウロの周りの空気をどっかにやって薄くした?


「ふーっ。あーうざかった。しばらく寝てろ」

 エノキはそう言うとこちらを振り向き満面の笑みを見せた。

「カオリ、タイチ!凄いなーこの穴お前らが掘ったの?」

 俺はクロエが光輪から降りたのを確認し、光輪を目の前に持って来てエノキに説明した。

「まあな、コレで俺が穴を掘ってマウロが土を運んで香織が換気した。めっちゃ疲れたぞ」

「そりゃそうだよ!ありがとねー。ってかさ、私が捕まってるときクロエから聞いたんだけどなんか、『科学魔法』ってのがあるらしいじゃん!」


 俺はクロエの方を向くと、クロエは話し始めた。

「科学魔法はホントは秘密にしとかなきゃいけないんですが、つい話しちゃいました……」

 ちょっと舌を出してはにかむようにしているクロエ。あ、かわいい。

「ちょうど良かった。私達も魔法を習得したくてー、良かったら一緒に教えてもらえない?」

 香織が思い出すように魔法習得について触れた。

 そうだ、俺も香織もエノキを助けた後はその予定だった。


「そうそう香織お前才能あると思う、私が色々教えたげるよ!」

 エノキはニッと笑って快く引き受けてくれた。

「えーっ!?エウラリアが人に魔法教えるなんて絶対ないと思ってたのに……頭でも打ったんですか?」

 クロエは心底不思議そうな表情をしてエノキを見つめた。エノキもそれに答える。

「いや、私もそう思ってたんだけどさクロエ。――才能ありそうなやつになら教えるのも悪くないかなーって思っちゃった!自分でもビックリだよ」

 それを聞いて香織はちょっと嬉しそうだった。

「え、私って才能ある!?」

「うん、たぶんね。兄貴の隠れ家に魔法具が揃ってるから全部試そう。な、マウロ!」


 エノキはそう言うと、うつ伏せに寝転んだままいつの間にか半笑いになってニヤニヤしているマウロの元にいき、腰のあたりにドスンと座り足を引っ張っり上げた。ちょうど逆エビ固めの格好だ。

 マウロは天にも登るような、よりニヤついた顔になってうなずいたが問題点も一つ指摘した。

「……だけど場所が……ないかも、知れない……な」

 エノキはちょっと考えて理解した。

「ん?……ああ。そっかー私も兄貴もお尋ね者だし、クロエも王室を裏切って逃亡中――確かにこりゃマズイかー」

「う、裏切ったわけじゃ……」慌てて弁解するクロエ。

 なるほど、この三人が固まって魔法の練習とか目立つことしてたら確かにやばいな。

「とりあえず俺と香織のお面と衣装を貸すから一応三人は変装しといてくれ。俺と香織はまだ無罪なハズだし」


 俺がそう言うと三人共急いで衣装とお面を被った。しっかしこれからどうすっかなーと考えていた時、ふと頭にジャンタンの顔が浮かんできた。


「あ、いい場所あったわ!」


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