第34話 侵入
しばらく毎日投稿します。
光輪が見えなくなると、途端に光輪を操作する手応えがなくなった。光輪が今どのぐらい土にめり込んでいるのか想像がつかないからだ。とりあえず0.5メートル程度まで刺さったと仮定しておく。
俺は円筒形の光輪の奥行きを20センチから2ミリ程度に調整するイメージを頭に描いた。上手く行っていれば土の中で直径2メートル、太さ2ミリメートルの糸状の光輪が出来ているハズだ。
俺は光輪の「内径」を一気にビー玉程度の大きさまで縮めるイメージを描く。
すると、土の中から「ボグゥ……」という音がした!
手応えアリ!これで直径2メートルの円盤型光輪の出来上がりだ。
「これで後は円盤状の光輪をゆっくり手前に引き抜けば……」
ズズズッ……!
「あっ、見て。土が出てくる!」
香織が驚きの声をあげている。
「おお……素晴らしいね!」
マウロも香織と同様の反応。
「よっ!」
俺は一気に光輪を手前に動かすイメージを描くと円柱状の土の塊が小山の表面からボゴッという音と共に出てきた。やった!成功だ。
俺は出てきた土の塊を勢いをつけて遠くにフッ飛ばそうと思っていたが、これがなかなかに重たく2メートル程しか飛んでいかなかった。
ドドドッ!
「あーそうか!土ってかなり重たいんだよなー。3トンぐらいあるかも……」
この時俺は以前吊り下げた巨大イノシシ、ボアプリウスのことを思い出した。アレもかなり重たかったが今回はそれ以上な気がした。
「よし。出した土は僕に任せてくれ」
マウロはオレンジの円陣を出し土魔法を発動させ、円柱状の土の塊を砂利状にし小山の周りに撒いた。
そして出来上がった長さ0.5メートルのトンネルの周りを岩の様に固めた。
「これを繰り返して斜め下に向かって掘り進めよう。ある程度まで掘ったら今度は斜め上向きに掘り進めて地下牢へ到達するはずだ。向きはこれで合ってる」
なるほど、だがここで俺は一つ聞きたいことがあった。
「こうやって俺と手分けして穴を掘れば、俺達が地下牢へ行ってもお前はハイドを使えるってワケか?」
俺はこの穴掘り作業を何百回か繰り返さねばならないことに目眩を覚えたがマウロの魔力を残せるならやる意味は大いにある。
「ああ。一番大変な掘削をダニエル(タイチ)に代わってもらえてるから恐らく大丈夫だ」
それを聞いて俺は安心した。よし、掘るぞ!
そうして俺達はなんとか30メートル程トンネルを掘ることが出来た。しかしその時、俺は謎の頭痛に見舞われてしまった。
「うっ……なんか頭痛くなってきた……呼吸も苦しい……皆は大丈夫か?」
マウロもそれに同意した。
「……なんだか異常に息苦しいな。まだそこまで……魔力は使ってないハズなんだけどな……」
しかし香織だけは何もしていない為か、まだ症状はましなようだ。
「あ!――もしかして酸欠かも知れない。私風魔法で換気するね」
そして思いついた様にそう言って香織はトンネルから外に出て風魔法を使い坑内の空気を入れ替えた。
ヒュオオオオー。
その瞬間、頭にもやがかかったような状態が一気にスゥーっと解消されていき、呼吸も普通にできるようになった。
「おおおお!やべえーめっちゃ回復してる!やっぱ酸欠だったのか」
「ああーー生き返ったようなこの感じ!そうそう僕ら換気のこと忘れてたよねー」
「香織ーそのまま頼むぜ。助かった」
俺もマウロも香織に感謝しつつ作業を続けていったときそれは起こった!
レベルアップの発光である。ああ、なんか久しぶりだ――この光。
「おお、ダニエル(タイチ)。君はまだ成長途中なんだね。僕はレベルアップなんてもう5年はしてないよ」
ということはマウロは現時点で魔法使いとして完成された人間ということか?
「多分だけど、レベル上がれば上がるほど次のレベルアップまで遠くなるんだろ?モーリス(マウロ)ってもしかして凄い魔道士なんじゃねーの?」
マウロは薄く笑って答えた。
「ふっ。僕はこう見えてこの世界じゃ5本の指に入る魔道士だからね」
まじかコイツすげー奴だった!
「さすがエノキの兄貴だな。アイツよりも実力は上なのか?」
マウロはちょっと残念そうな顔をした。
「ま、5歳差があるからね。多分エウラリア(エノキ)が僕と同じ20になる頃には完全に追い抜かれていると思う。兄として誇りに思うよ」
そう言った後真面目な顔になってこうも言った。
「でもそれはこれからあの子を助られたらの話しだね」
俺は笑顔でマウロを励ます。
「何いってんだ。ぜってー助けるに決まってんだろ!」
マウロも笑顔になって「フッ」と答えると再び作業を開始した。
そこからは俺のレベルアップの成果もあり作業ペースは早くなる――かと思われたが、掘れば掘るほどマウロが土を運び出す距離も増え時間がかかることや、俺は俺で明かり用にトンネル上部に光輪を何個か設置しなければならず、その分、掘削用光輪が掘れる深さが減ったりと作業難易度は確実に高くなっていった。
そしてとある地点まで掘った所でマウロは言った。
「この上だ!最初に侵入した時に目印に置いていった魔道具の反応が近い。恐らく少し掘れば地下牢の床にぶち当たるはずだ」
「よし」
俺達はトンネルの中間地点で換気をしている香織を呼んで突撃の準備をした。
それにしてもこのときの疲労感はとんでもなかった。さっきの酸欠状態ほどではないが、頭はふらつくし体は猛烈にだるい。俺は地面に座り込んだ。
「水飲む?」
香織は俺とマウロにペットボトルの水を渡してくれた。「サンキュー」俺は力なくそう答える。
俺達は数分ほど休憩し、マウロは入り口に置いてきたスノコのような木の板と変装用の仮面3つをここに持ってきた。
そしてマウロは説明する。
「これから広域ハイドを使うからダニエル(タイチ)は静かに床を壊して地下牢に出てくれ。それから周りの看守をなるべく早く倒して光輪で牢を破壊してくれ。エウラリアは魔法が一切使えなくなる特殊素材の牢屋にいる。
一つ注意点だが、もし牢屋の近くに青い髪の女魔道士がいたら……こちらの存在に気づかれるかも知れない。ソイツの相手は僕がやる」
「ハイド使ってても?」
「同じ科学魔法を使える者同士だと勘付かれてしまうんだ。悲しいことに」
マウロは非常に残念そうな顔をしていた。まあ、この顔の意味は後に分かる事になるのだが……。
「オーケー。頑張ってみるわ」
とりあえずちょっと元気になっていた俺はそう答えた。
話を聞いていた香織は恐る恐るマウロに聞いた。
「ね、ねえ、私は何かすることある?」
マウロはニコッと笑って答える。
「もちろんあるよアンナ(カオリ)。僕がさっき言った女と戦闘になったら風魔法で常に女の邪魔をしてほしい。『強風』で風を一点に集中して相手を吹き飛ばすだけでいいんだ。出来るかい?」
それを聞いた香織は目を輝かせた。
「あ!出来る出来る。私竜巻まで使えるよ!その女の人を邪魔すればいいのね?」
「ああ、魔法使い同士の戦いで2対1なら確実にこちらが勝つ」
そう言うとマウロは緑の魔法陣を出した。そして俺の顔を見て上を指差した。
よっしゃ、行くぞ!
まず俺は真鉄(鉄パイプ)でレンガをゆっくり壊しマンホールぐらいの穴を開ける。と同時に上から光が差し込んできた。
そこから顔を出すと鎧を着た看守が一人。そいつが立っている後ろの牢屋は一つだけ他と違う素材で出来ているように見えた。エノキの姿は角度的に見えなかったが、エノキのいる牢だな――というのはすぐ分かった。
俺は勢いよくその穴から地下牢へ飛び出た。しかしハイドのため看守は一切こちらに気づかない。
ソイツめがけて瞬足で距離を詰め鉄パイプの一撃を食らわせる。
ガアン!
大きな音とともにその場に倒れ込む看守。鎧を着てはいたが一応手加減はした。殺したら後味悪いしな……。
「看守はコイツだけのようだね」
後ろを向くとマウロと香織も穴から出てきていた。
「僕らの存在をエウラリアにまで気づかれないと助け出すのに都合が悪い。ハイドは一旦解除しよう」
そして俺は牢屋の中を見てみるとそこにはあのエノキがいた!
「……うわあっ!誰!?」
それは久しぶりに声を出したかの様なかすれた声だった。監禁されてたせいかいつもの元気さはない。
すぐさま俺はお面越しに人差し指を口に持っていきシーっとやって「静かに」というメッセージを送った。
そして小さな光の輪を出して牢屋の鍵を破壊しようとする。流石に鉄で出来ていたので、光の輪を鉄ノコのようなノコギリ状にして回転させるやり方にした。
ギイイイイイッ!
かなり大きな音が出てしまったので、マウロは再びハイドを使う。一方香織は風魔法の白い魔法陣を描いて戦闘に備える。
その時、通路の奥から階段を降りてきた人物がいた。鍵の破壊に集中しつつもチラッとそちらを見ると、そこには以前俺も見たことのある一人の魔道士の姿があった。
――クロエだった。
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