第30話 再びデヴォンシャーへ
――風魔法による高速走りで、俺達は予想通りバロルのすぐ近くまで15分程で到着した。
「すげー。香織お前すげーよ!」
俺はこの風魔法の威力の高さに感心して香織を褒め称える。
香織は走りながら魔法を使った為か、やや息を切らしていた。
と、その時。香織の体が発光し始めた。
「あ、これは……!」
突然体が光に包まれて香織も驚きの表情を見せている。
数秒で光は消え、香織の体からはオーラのような白い湯気が立ち上っていた。
「ねえ、これってレベルアップのやつだよね!やった!」
香織は嬉しそうな笑顔で自分の体の変化を確かめている。
「わー。体軽ーい!」
「よっ」
香織はその場でジャンプしてその感覚を楽しんでいる。分かるぞ~その嬉しさ。
俺も香織に合わせて二人でぴょんぴょん飛び跳ねながらバロルの町へと入って行った。
そこからは一気にペロド村まで行っても良かったが、以前ウェイバーと合流したギルド近くの民家に寄ってみた。しかしやはり誰も居なかった。
「前はここでウェイバーと合流したんだ」
「ふーん。そのウェイバーさんって今どこにいるの?」
「分かんね。ここは携帯も通じないしどうやって連絡取り合えば良いんだろうな?」
俺は頭をかきながら参ったという仕草をしているときふと異世界でも何故かスマホが使えるというアニメの事を思い出していた。正直羨ましい……。
通信手段という新たな課題について考えながら俺達はあのペロド村へと向かった。
――しばらくして村に到着すると俺は最初に香織に警告した。
「この村はちょっと怖いぞ。白骨死体がいっぱい転がってるからな。香織はそういうの大丈夫か?」
「え!?死体……?どゆこと!?」
「前さ、境界人が村人を惨殺したって話聞いただろ?」
「あ、あーそれがこの村なわけね!怖いけど、白骨化してたらそこまでグロくないかも……」
その言葉に俺はちょっと安心して、香織を境界のある小屋へと案内した。
小屋の中に入るとそこにはおなじみの黒い境界があった。……いや、俺には見えるが香織はどうだろうな?
「ここだ。なあ、お前今ここにある境界見えるか?」
俺の指差す先に香織は視線を向けるが「?」といった感じだ。これは全く見えていないな。
試しに俺はその転送用境界からデヴォンシャーへと飛んでみた。するとやはりそこは以前来た白い部屋だった。
そして俺はすぐペロド村へと戻った。
目の前で行われた俺のこの行動だが……香織はどんな反応を示すのだろう?気になった。
「あれ?太一……あれ?アンタ今どっか行ってた?」
あーなるほど。境界によって人や物が消えたり出たりしたのを認識させない仕組みらしい。
「――ということはこの境界の特定の人間として香織はまだインプットされてないワケだ」
じゃあ境界に『特定』してもらおう!
「香織、こっち来てくれ」
俺は香織を境界付近まで呼び寄せ、そして手を握った。
香織の手は温かく柔らかかった……。この手をずっと握っておきたい……。というちょっとした感動を覚えてしまった……なんという童貞感。ふふ……。
「タイチの手、ゴツいね……ゴリラみたい」
褒められたのか馬鹿にされたのかよく分からない言い方だが、とりあえず言い返しておく。
「あー、香織馬鹿にしてるな?お前の手が細すぎるんだよ!」
ちょっとムキになる俺に対し香織はニコニコと笑顔になって手のつなぎ方を変えてきた。指を交互にクロスさせ、より密着度の上がる恋人同士のようなつなぎ方である。その上なんかニギニキしてくる……「おファッ……!」香織のふわっとした指先の感触が手の甲に伝わるたびに俺の心臓はドクンドクンと高鳴ってゆく。
あ、あ、ダ、ダメだ。
猛烈に湧き上がる熱い情熱が、全身を駆け巡り俺の性的な部分に働きかけ、普段柔らかいモノを硬質化させてしまう……!はあ……はあっ……。
「……太一?」
「太一?……ねえ!?」
――ドスッ!
「ちょっとー!こっからどうすんのっ!?」
――変な妄想をしてボケっとしていたら香織に肘打ちを食らってしまった。「おお、ごめん」軽く誤ってからデヴォンシャーの白い部屋を思い描いた。
その瞬間俺と香織は見事にデヴォンシャーに転送された。おーけー、これで香織も境界に特定されたワケだな。
白い部屋の扉を開け、巨大なドーム状の町をしばらく歩くとオルターセントラルバンクの看板が見えてきた。
俺は二回目だが香織は初めてだったので感動しているようだ。
「うわー、……なんか異世界に現代の建物があるのって凄い違和感。――でも面白いね!」
なんか観光客みたいだな俺達。
そんな事を思いながら銀行のドアを開け、あの印象的な受付のお姉さんと対面した。
「おっとこれはこれは……えーっとたしかヤマダタイジさんね!」
「いや、ササキタイチです」
「あらー……でも間違いは誰でもあるからっ。気にしません私!さあ今日も頑張って行きましょー」
フーッ……なんか頭痛くなってきた。相変わらず変な人だ。まあいい、俺はカードを機械に通して残高を確認した。
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「447500リル」
「1200000円」
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お!ウェイバーから報酬40万リルがしっかり振り込まれてるな。
俺は香織にもこのATM機器のモニター画面を見せた。
「通帳が無いから預金残高はこの画面を記憶するしか無いんだ」
「へー」
「香織も口座作るか?」
そう聞くと香織は首を横に振った。
「私はいい。今のところ不自由してないし」
「さすが。金持ちは違うな」
その後香織はこう助言してきた。
「あ、でも魔法具は買っといたほうが良いかも。今後の為に」
あー確かに、香織が色んな魔法を使えたら俺としても色々助かるしな。
「よし、じゃあ20万ほど下ろしとくか、リルで。あとは日本円でも20万円下ろして……よし。完了だ」
俺はATMのボタンを操作してお金を引き出した。
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「247500リル」
「1000000円」
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そして20万円は即隣の香織に渡した。
「……17、18、19、20!うん。ちゃんと20万円受け取りました。これで借金完済だね。おめでとう太一!あとコレ……」
香織は俺に例のヘコムカードを渡してきた。
「おう、以外と早かったな。てか早過ぎだろ!ははっ」
この時、借金完済と同時に貯金が100万円以上出来た事で俺のテンションは跳ね上がっていた!
――早速俺達はオルターバンクを後にして第3倉庫とやらを探すことにした。しかし――。
「一体どこにあるんだ……?」
ここにはオルターバンク以外にちょっとした飲食店の様な施設があったが、中にはいってみると全てが自動販売機だった。
自動販売機といっても飲み物だけでなく、おにぎり、うどん、そば、カレー、ピザ等色々と揃っている。まあさすがに冷凍食品ではあったが。
シャロの話によれば確か宿泊施設もあるらしく、ガス、電気、上下水道などのインフラもちゃんと整っているようだ。
一体誰がこの町を治めてるんだ?
「ねえ、もう一度あの銀行行ってあのお姉さんに倉庫の場所聞いたら?」
「うーん、あのお姉さんちょっと話噛み合わないから苦手なんだけどな……」
俺はそう言いながらも今日デヴォンシャーで出会った人があのお姉さんしかいなかったのを思い出し、渋々銀行に向かった。
そして俺達は一旦銀行に戻り。正面の入口から中に入ったところで一人の男と出会った。
俺達が銀行に入った後、すぐに入口から入ってきたのだ。
その人は俺より5~6歳ぐらい年上に見えた。顔立ちは東南アジア人っぽく、なんかよく分からない派手めなジャージを着ている、雰囲気的にちょい輩っぽい人だ。
「あっ、お兄さん。ちょっといい?」
俺はその男の放つ、話しかけんな的オーラを完全に無視してすぐに声をかけた。
香織はやや緊張しているのか固まっているように見える。
その男は俺と香織を睨むとこう言った。
「あ、誰お前?」
とりあえず自己紹介しとこう。
「俺は日本人のタイチ、こっちがカオリ。今王都へ行こうとしてるんだけど第三倉庫の場所が分かんなくてさ。お兄さん知らない?」
その男はそう聞かれると目を見開き、銀行のロビーの床に緑色の魔法陣を展開させた!
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