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1章四節
社長の動きが、それまでより少しずつ慌ただしくなっていった。
ベッドが小さく軋み、シーツの擦れる音も、いつの間にか一定ではなくなっている。若葉は社長の背へ腕を回したまま、耳のすぐ近くで繰り返される息遣いを聞きながら、自分の声をどの程度そこへ混ぜればいいのか、考えるともなく測っていた。
「っ……あ……んっ……。」
唇から零れた息へ、ほんの少しだけ高い音を重ねる。
これは仕事なのだと、頭のどこかではまだわかっている。
どれくらい声を聞かせれば喜ぶのか。どんな表情を見せれば、自分との時間を特別だと思ってもらえるのか。以前なら一つずつ考えていたことも、今ではある程度、身体のほうが先に覚えてしまっていた。
ライブで笑う場所を覚えるのと、少し似ている。
カメラへ目線を送るタイミングを覚えるのとも、たぶん。
そう考えて、この時間まで仕事の延長へ押し込もうとした、そのときだった。
不意に、これまで意識したことのない場所へ感覚が触れた。
ほんの一瞬のことだったのに、若葉の身体は考えるより先に強張った。




