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魔法世界と旅の仲間  作者: 真久一
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1-3    旅は道連れ  無口な男

 地平線まで続きそうな草原をまっすぐ突っ切ってゆく道。降り注ぐ日差しをはじいて光が満ちる。これから森の脇を抜けいくつかの山を越えて町までは三日間、馬車の旅が続くと聞いていた。

 窓に肘をかけると眩しい陽ざしと気持ちよい風が吹き込んでくる。目を細めて深く被っていたフードを外した。

 暫くは車内に一人きり。見まわすと中は思ったより広い。大きめの長椅子が向かい合っていて、詰めれば六人は座れそうだ。俺の斜め前の座席は庇の影になった薄暗がりで大きな荷物の山が積まれている。

 ほっと息をついて体を伸ばした。肩に下げた袋を下し、村長から渡された紹介状を出してみる。それは数日前に会った村の占い師の書いたものだった。



 俺には記憶がない。自分は誰なのか? どこに住んでいたのか? なぜあの湖の近くに倒れていたのか? 何も覚えていなかった。

 村人が意識のない俺を見つけ、村長が引き取って面倒を見てくれたが、半年たって思い出せたのは自分の名前だけだった。

 ぼんやりと日々を過ごす俺に、そろそろ仕事を探し自分で身を立ててみてはどうかと言われたのがつい先日。村の人間は皆14~5歳にもなれば仕事を持ち始めるからだ。

 仕事を決める為に村の占い師の家に連れて行かれたが、占い師の老婆は俺を見るなり難しい顔をした。

 俺を椅子に座らせると、テーブルの上に羅針盤のようなものを出し、その上に手をかざすように言う。手をかざせば鮮やかな色で描かれた羅針盤の上の針はゆっくりと回り始めた。そして止まることなくふらふらといつまでも回り続けていた。

 老婆は困った顔でため息をつく。

 「あんたの行き先を占うように言われたんじゃが… この盤は小さな魔法陣での、人の持っている魔力の種類に反応するように出来ているんじゃよ」盤の上に嵌め込まれた強い輝きを放つ宝石を一つ一つ順に指さして

 「赤は火の魔力、黄は土、黒は闇、青は水、緑は草木、白は光。それぞれの生まれ持っている魔力と呼び合ってその魔力の色にこの針が止まる。ここの村の人間は全員 火・土・水・草木の四種類のどれかを持っている。光と闇を持つものの力は強力じゃが滅多に持つものは居ない。しかしこの六つの魔力がこの世界を動かしているのじゃ。人も動物も植物も生きているものは皆生まれた時から持っているその魔力に頼って、この世界で生き、暮らしているんじゃ」

 老婆は言ってから俺をじっと見つめ

 「あんたは珍しい灰色の髪と瞳だね。持っている魔力の色は人の場合、髪や瞳の色に表れる。わしを見てごらん」

 老婆の髪と瞳は、髪は白髪は混じっているものの両方とも薄い緑色で、彼女のかざした手の下で針は緑の宝石を指して止まっていた。

 「わしにはあんたの未来を読むことは出来ない。町へお行き。そうすれば先が開けるかもしれないよ」



 占い師の言葉をぼんやりと思い出していると、馬車がガタリと大きく揺れた。目の前の荷物の山が揺らぐ。崩れかけた荷の間から目が二つ開いた。

 ぎょっとして息をのむ。

 荷物ではなく大柄な人間だった。

 よく見るとぼろ布の塊に見えたものは、暗い茶色のつばの広い帽子と同じ色の厚手のマントだ。

 帽子から溢れるように伸びた髪と髭が顔の全てを覆い、そこから二つの目が覗く。それらは服よりわずかに明るめな茶色なので荷物の山と同じに見えた。

 俺と目が合った男でいいのか?は俺の灰色の髪に気が付いたはずなのに、何も言わず、驚く様子もなかった。その色から見てその人は土系の魔力の持ち主なのだろう。そして俺の灰色の髪は魔力の属性のどの色にもなれない、どの力も持っていないという証なのだ。

 ふいに天井に近い小窓が開いて、赤髪の馭者が顔を覗かせ

 「この先の丘の上で昼にするから」と言って、俺の髪を見て目を見開く。

 固まっていた俺は慌ててフードを被りなおした。

 直ぐにピシャリと窓を閉めて馭者は引っ込んでしまったが、小声で話す声が聞こえた。

 「あれがうわさの…」

 俺が下を向いて床を見つめていると大きな重い何かがフードの上にゆっくりと乗った。ぽんぽんと小さな子供をあやすように頭に乗せられた手のひらが動く。

 男は何も言わず、そのうちに馬車は丘に着いてしまった。


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