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11.ララのお願い


11.ララのお願い


 

  母屋に戻ると、居間にはララだけがポツンと座っていた。


「あれ? みんなは?」


「お姉様夫婦とお母様は明日の準備があるとかで、連れ立ってお姉様夫婦のお家に行かれました。キャンは少々はしゃぎすぎたようで、もう眠ってしまいました」


「そのことを報告するために、わざわざ残ってたのかい? ララが一番疲れてるんだから、先に休んでよかったのに」


「御主人様ひとり残して、先に休むなんてできません。それに私の疲れを癒すというのであれば、御主人様がいなくては始まりませんから」


 そんなに可愛いことを言われたら、サービスのひとつもしたくなっちゃうね。もちろんエロいことを期待してるわけじゃないよ。本当だよ。


「まあ、僕にできることがあれば、何でも言ってくれ」


「本当ですか!」


「ああ、もちろん」


「それじゃあ、一緒にお風呂に入ってくださいっ!」


 僕は口に含んでいた水を、盛大に噴き出した。ひょっとして、僕の下心を読んだのか?


「大丈夫ですか? 御主人様」


「なっ……何バカなこと言ってんだ! そんなこと、できるわけないだろう!!」


「どうしてですか? ほんの2日前までは、ララの体を毎日洗ってくれてたじゃないですか」


「それは地龍だったからだ! 今のララにそんなことする勇気はないっ!!」


「でも御主人様に洗ってもらうと、とっても気持ちいいんですよ? 優しい手つきで、ララの体を隅々まで丁寧に撫でたりこすったりしてくれる御主人様。ああ、思い出しただけでもウットリしちゃいます」


 なんかいやらしく聞こえるのは、わざとなのか? それとも僕にやましい気持ちがあるからなのか?


「分かった。じゃあ地龍の姿になってくれ。それだったら何とか……」


「嫌です。せっかく可愛くなれたんだから、可愛いララを洗ってください。御主人様は可愛いララが嫌いですか? 触りたくないんですか?」


 そりゃあ触りたいに決まってる。でもそんなことしたら、洗うだけじゃ済まなくなるに決まってるじゃないか。久々の実家でそんなことしたら、せっかくの家族団欒ムードが台無しだ。


「大丈夫です。お母様にはちゃんと許可を取りましたから」


「……分かった。ララがそこまで言うなら……」


「ありがとうございます、御主人様!」


 なんか外堀を埋められた感が半端ないが、ここまでお膳立てをされては仕方がない。ところでララさん、本当に僕の心を読んだりしてないよね?



「何してるんですか? 御主人様?」


 風呂場にララの声が響き渡る。ララはもちろん素っ裸だが、僕はTシャツ短パン姿だ。


「だからララを洗おうと、石鹼を泡立ててだな……」


「でも目をつむってたら、洗いにくくないですか?」


「そこはほら、心眼を発揮してだな……」


 するとララは僕の両手首をつかみ、何かを触らせた。


「じゃあ、ここはララのどこですか?」


 柔らかな、ふたつのふくらみ。ララがその弾力を誇示するように、僕の両手の上からそのふくらみを揉み始める。手のひらの中心に当たる小さな突起が、次第に固くなっているような……。

 そこで僕は我に返り、あわてて両手を引っ込めた。


「な……な……な……」


「冗談ですよ。今日のところは、背中と髪だけ洗ってくれてるだけでいいですから。でもちゃんと目を開けてくれないと、もっと大胆なイタズラしちゃいますからね」


「わ、分かったよ」


 僕はひとつ深呼吸してから、恐る恐る目を開けた。ララはこちらに背を向け、うつむき加減に座っている。うなじから腰のラインが艶めかしく、思わず唾を飲み込んだ。


「そ、それじゃ、背中から洗うよ」


「お願いします」


 泡立てたタオルを、ララの背中に当てる。そのまま擦りはじめるが、背中を流すことに不慣れで力の加減が分からない。


「そんなに軽く擦ったら、くすぐったいです」


「そうか。じゃあもう少し力を入れて……」


「あ、そうです……とってもいい感じれす」


「れす?」


 振り向いたララの目はトロンとして、まるで酔っぱらっているかのようだ。


「何だか呂律が怪しくなってるけど、大丈夫なのか?」


「気持ちいいらけなのれ、気にしなくっていいれすよ」


 ふやけた笑顔で応えるララ。まあ、確かに気持ちよさそうなので、気にせず続けることにしよう。

 首から背中の上半分、背中の下半分から腰、腰からお尻までの3つに分け、それぞれを隈なく擦り上げる。試しに魔素浄化も一緒にしてみる。


「ああん……内側からも気持ちよくて、フワフワして天にも昇る夢見心地れす」


 どうやら好評のようだ。最後にお湯で泡を流すと、桜色に染まったララの背中が喜んでいる様に見えた。


「ふいー。最高れす、御主人様」


「じゃあ、今度は体を前に倒して」


「はーい」


 シャンプーを手のひらで泡立ててから、指先で地肌をマッサージするように髪を洗っていく。


「御主人様、髪洗うのじょうずれすね。とってもいいれすよ」


 褒められて調子に乗って、僕は意識的に魔素浄化能力を強めた。


「あっ……スゴいのがきてますっ……あはぁんっ! こんなのはじめてですぅっ!!」


 ララは弾かれるようにのけ反り、後ろに倒れてしまった。僕はララを支えきれずに勢いよく尻餅をつき、ララはまるで赤ん坊のような姿勢で仰向けに寝転んだ。


「ごめん、調子に乗り過ぎた。体はどこも痛くない?」


「ララの体は丈夫れすから、どこも痛くないれすよ。れも、こんなに気持ちよくされちゃったから、ララはもう御主人様なしでは生きられない体になってしまったのれす。らから御主人様は、責任を取らないとラメなのれす」


 ララはそう言いながら泡まみれの体を僕に絡ませると、情熱的なキスをしてきた。ララとの付き合いはキャンとは違ってそれなりに長いし、信頼関係も築けている。だからもしララがそれを本気で望むなら……いや、この言い方はズルいな。だって僕はララのことが……。

 などと考えを巡らせていたら、急にララの体から力が抜けた。くにゃりと首が折れ曲がり、ララが満ち足りた顔で天を仰ぐ。


「ぐぅ」


「ララ?」


 驚いたことに、ララは眠りに落ちていた。それにしてもディープキス中に素っ裸で寝てしまうとは、神獣とは思えない無防備さだ。だが信頼の証だと考えれば、もちろん悪い気はしない。


「やれやれ。信頼には、誠意をもって応えなくちゃな」


 僕はフニャフニャに力の抜けたララの体を洗い、着替えさせてからキャンの隣りに寝かしつけた。ひと仕事終えて、改めて風呂に入りなおす。


 明日は僕の初陣だ。きっと過酷な戦いになるだろう。当然ララとキャンにも、頑張ってもらわなくてはならない。そして頑張った彼女たちを癒すのは、僕の役目だ。まあ、何をさせられるのかについては興奮に興奮を上乗せする恐れがあるので、今は考えないほうがいいだろう。

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