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私、諦めるのやめました ~崖っぷち下級貴族令嬢の生存戦略~  作者: 久保 まり子
第一部 婚約破棄された田舎下級貴族令嬢

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第四章 契約魔法陣締結

金髪のおじさんこと、グランツ王国魔術団長バンヘルクは、サラフィーナのことを、じーっと値踏みするような視線で見た。


「……契約魔法陣を使用する」


驚きの声が、周りの騎士たちから上がった。


「バンヘルク団長殿、いくらなんでも、それは……」


青髪のルーカス団長が、目を泳がせて動揺している。


私も、少し手が震えていた。


契約魔法陣を使用し、契約に違反した場合、「命の石」が傷つく。


そして、一度傷ついた命の石が、魔力にどんな影響を及ぼすのかは、その時になってみなければわからない。


つまり、契約魔法陣の使用は、下位の者から上位者への、命を懸けた依頼だ。


だから、ほとんど使われることはない。


そもそも契約魔法陣を扱える者自体が少ない。


下位の者から高位の者に依頼するのが普通で、そのうえ高額な費用もかかる。


下位者にとっては、命も財産もすべてを投げうった、最後の手段なのだ。


それを――。


上位者であるバンヘルク団長が、下位の私に使おうとしている。


考えられない事態だった。


「ふん。おじけづいたか。さっさと隠さず話すか」


バンヘルク団長は目を細め、じーっと私を見つめている。


「……やります」


さっきまで半分白目をむいていた兄も、私の言葉を聞いて、少し頭がはっきりしてきたようだ。


「やめろ、サラフィーナ。変な意地を張らずに、バンヘルク様の言われたとおりに答えなさい」


兄は声を震わせながら、私に言った。


でも、私も引かない。


ここで引いたら、一生実家で下働きの生活だ。


その先に、私の幸せはない。


「契約魔法陣ですよね。魔力は、バンヘルク様持ちでお願いします。よろしくお願いします」


腹の底から声を出し、なめられないように、はっきりと言った。


バンヘルク団長は、その場で契約用紙を取り出した。


そして、魔術具のペンを使い、さらさらと契約内容を書き始める。


――契約内容――


サラフィーナ・フォン・グリンヴァルドと、バンヘルク・フォン・ビルスガングとの間で契約する。


サラフィーナ・フォン・グリンヴァルドは、ルーナカルッシュ・フォン・シュタイナーゼに関する話について、嘘偽りのない話をバンヘルク・フォン・ビルスガングへ話す。


また、バンヘルク・フォン・ビルスガングは、サラフィーナ・フォン・グリンヴァルドの望みである、王都に屋敷を持つ貴族の邸宅で働けるよう手配する。


二人は契約内容を確認し、それぞれ署名した。


手が震えないようにするだけで、私は必死だった。


バンヘルク団長は涼しい顔をしている。


けれど、額には脂汗がにじんでいた。


二人が名前を書き終えると、バンヘルク団長は杖を取り出した。


呪文を唱えながら、契約書の上に魔法陣を書き始める。


複雑な魔法陣だ。


それなのに、バンヘルク団長は迷うことなく、すらすらと書いていく。


やがて魔法陣を書き終えると、バンヘルク団長は魔力を込めた。


その瞬間――。


契約書が、青く燃え上がった。


「契約は成立した。その黒髪の男が話していたことを述べよ」


バンヘルク団長に促され、私は口を開いた。


「英知の書を得たければ、黒竜の生まれた地を探せ。そこに至る道は、火竜のみぞ知る。


火竜を得るには、時の女神デエスの加護を得よ」


はっきり言って、何一つ、私には理解できない。


でも――。


二人には、何かわかったらしい。


二人とも額にしわを寄せ、黙り込んで考え始めた。


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