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4話 聖女候補。

 

 チェレステは長話に続く長話という困難を乗り越えて、誓いの儀のついでで行われる洗礼を受けている。

 実に長い戦いだった。長話こそを目的としている大人は存外に多い。気持ちが良い、ものらしい。


 比べて洗礼はサクサクと進んでいく。

 参加者である十二歳の数は来賓よりも数多い。長い時間をかけない為の配慮がある。

 洗礼は、主からの祝福を形にしたものでもあった。


「汝、チェレステ。無垢なる者よ。父と子と聖霊の御名において——」


 司祭様がチェレステの頭に触れれば、祝福の鐘が鳴らされる。洗礼を授かると、身体に聖痕が刻まれた。

 契約の証として。


 どこにそれが刻まれて、どんな形状であるかは個人差があった。

 それを確認する為に、洗礼を受ける子供に両親が同伴するのも珍しい話ではない。非常にデリケートな場所に現れる可能性もあるので。


「な、なんだと!」


 お髭を震わせて、司祭様が叫んだ。

 聖痕には加護が宿るとされている。

 身体が少し丈夫になったり、目がちょっとだけ良くなったりという、ささやかななものばかりだが。


 それらは単純な聖痕で、人それぞれであった。

 だが稀に、よく知られる聖痕が非常にわかりやすい形で発現する事がある。

 チェレステの、額に浮かび上がりし証の様に。


「……聖女の証」


 そういった証を有する者は強い力、特異な技能を有する可能性があるともされている。


「あ、あなた。なんで……」


 目を見開いた母と。


「おぉ、おぉ、なんということだ……」


 天を仰ぐ父。

 二人はお互いを抱き合う。壇上にいるチェレステからは二人の様子が見えている。


 聖女などの特別な資質は世界を変えることも、世界を護ることも可能なもの。という事になっている。

 故に国家は彼等を保護し、導く。

 誤らぬ様に、可能性を奪わぬ様にと。


「こ、この街から、聖女候補の証が出たぞー!」


 大騒ぎとなった。

 聖女に限らず、大きな力を持つ可能性を持つ「候補者」は国家により保護される事となる。


 世界を正しく導くために。その為には教育が必要となった。

 そして資格を持つ事は大変な栄誉であるともされていた。


「王都の学園に連絡だ!」


 慌てふためく人々がいれば。


「街を上げて、支援をするぞ!」


 喜びに湧く人達がいる。

 司祭様達が、街の偉い人達が。お母さんが、お父さんが。

 チェレステを中心にして、喜んでいた。


「……なんでさ」


 こうして、ささやかな幸福を楽しみにしていた元勇者。

 聖女であり、魔王でもある母親から産まれた男。

 その転生体である少女チェレステは、新たな「聖女候補」となった。


 




お読みいただきありがとうございます。

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