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変態冒険記  作者: ゆゆ
第1章 理想の末路
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第5話 人間っていったい何ですか?

 本当のところ僕の心情を吐露すると列車内で子供達を助けたのは百パーセントの善意ではなかった。確かに奴隷とかかわいそうだなとも思ったけれど、僕にだってわかる。奴隷というのはこの世界のシステムの内に組み込まれているもので不可変のものなのだ。それをどうこうできるのは一個人には難しく、しかし僕ならできるとも思った。


 だって僕はもともとこの世界の住民ではないのだ。ある日突然異世界から現れたいわば異物。システムにも組み込まれていなければ組み込まれる予定もない。


 だから僕なら助けられるのだ。


 きっと。


「いやああああああああああああああああ!!」


「なんで!!?」


 僕が子供たちを見つける前に聞いた何かの転がる音。その正体は一つの指輪であった。小さな青い石が埋め込まれた指輪。それを僕は拾い上げると大きい方の女の子へ渡そうと肩を叩いて起こした。


 そしたら思い切り叫ばれたのだ。


「まあそうなるな。なんせ彼女たちは人目を阻んでここへ忍び込んだのだ。見つかったら叫びもするさ」


 シレっと言うのぶちゃんさん。そんなところで見ているだけならあなたからも話してくださいよ、同じ女なんですから。


「それはないよ。これは君が選んだことだ。しっかり自分で責任を持つんだ」


 僕がおっぱい好きなのとロリコン疑惑があるのをのぶちゃんさんに話したあと彼女はこの子たちの保護に反対した。まあそんな危ない性癖のある男に保護など出来るわけないと思われたのだろうけど、そこは僕が思春期だから仕方ないと説得しておいた。


 納得はしていないようだったけど。


「ちょっと落ち着いて? ほらほら、これ。君たちのでしょ?」


 そうして僕は指輪を差し出す。大きい方の彼女はそれを高速でひったくると更に壁際へと退いた。


 隣の小さい方の女の子も起きたようで二人からジト目・涙目を向けられる。いかん、ちょっとへんな気分になってきた。


 と、その時内心ムラムラしている僕の肩に手を置く人物が。振り向けばそれはのぶちゃんさん。彼女はどうしたのか僕の隣に立ち、そして叫んだ。


「この方はお前たち棄民の落としたものを拾ってくださったのだぞ! 礼は言わぬのか!」


 柔らかい物腰とは一変。厳しい声色で彼女たちへ迫る。


「ちょっとちょっと! この子たちが怯えるのも仕方ないですよ」


「そういう問題ではないのだ。あなたは我らの恩人。その方に無礼があれば見過ごすことはできない」


 睨むのぶちゃんさん。怯える二人。途方に暮れる僕。一体どうすればいいのか。雰囲気は最悪だ。


「あ……ありがとうござい、ます。ご無礼をお許し下さい……」


 数瞬迷うように視線を泳がせた二人だが、諦めたように冷たい鉄床に頭をこすりつけてきた。


 見ていて痛ましい。こんなことが実際にあるなんて……。


「それでいいのだ! きちんと言うことを言えばあとは私は何も言うまい。それよりこの者から話があるそうだぞ」


 しかしのぶちゃんさんはそんな二人の態度を見て納得したのか、許したのか僕の頭をぽんぽん叩いて促してくる。


 話? 話とは二人を国に招くということだろうか? それは僕よりのぶちゃんさんから……。


「いいから話すのだ! そっちがいいだしたことじゃないか!」


 背中を思い切り叩かれて僕は前へよろける。二人はひっ、と小さく鳴きさらに縮こまった。


「あ、あのー、そのー、もしも行くところがないのなら、」


「はっきり言えよぉ……」


 後ろから笑い混じりの声が聞こえる。なんだかさっきから言われてばっかりだ。僕は意を決するとごほんと咳払いをしはっきりと言った。


「僕のところで暮らさないか?」


「お断りします」


「します」


 ………………、えっ。


「……ふふ、ふははは!!」


 背後で吹き出すように爆笑するのぶちゃんさん。なんだよ、そんなにおかしいか。もうさん付けやめた、今からのぶちゃんである。


「いいぞ、別に。変に敬称付けられてもむず痒いだけだしな!」


 ニヤニヤと締まらない笑顔で僕を見てくるのぶちゃん。この人結構性格あれなのかもしれない。いや、きっとそんなことはないのだろうけど。


「お前たち、名は?」


 笑顔のまましゃがみ込み二人に名前を聞くのぶちゃん。はっ、どうせ無駄ですよ。答えないんじゃないですか?


「…………私は、アルス……。こっちは妹のエリス……です……」


 …………どうやら僕だけが嫌われているようである。一体どこで選択を間違えたのか。


「この者はな、私の恩人なのだ。そして今一緒にエトランド国へ向かっている。そこでこの者はしばらく暮らすのだが、お前たちも迎えたいと言っているのだ」


「……っ……。……め、……す」


 ぱっと顔を上げるアルス。だが声が掠れるのかうまく話せない。


「ダメです……。私たちは人間じゃ……ないですから」


 なかなか強情である。こんなにも言っているのに頑として譲ろうとしない。今までの境遇がそうさせるのか、あるいはこの世界そのものが彼女たちを人間として認めないのか。


 ここはやっぱり僕の出番だろうか。


「実はな、僕も人間じゃないんだ。この世界の人間じゃない、言ってしまえばゴミと同じだ」


「…………?」


「でも、人間じゃなくてもこうしてこの姉ちゃんにいいようにしてもらって、国へ着けばいろんな事してもらえるんだぜ? いいだろう? 人間じゃなくてもそこまでしてもらえるんだ。でもどうせだったら人間になったほうがいいと思わないか? そっちのほうが圧倒的に楽しいし!」


 適当である。もうこの際何でも言ってこいつらを連れて行く。決定事項である。断るのは禁則事項です!


「……って、人間っていったい何ですか?」


「さあな。だからこれから人間になって確かめようぜ」



誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。

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