第6話 歴史あるエトランドの王城
照明が暗かったせいか、格好がみすぼらしかったせいか、出会った時はかわいそうという印象しか受けなかったがきちんと体を洗い清潔な服を身につけたアルスとエリスはとても可愛らしい女の子であった。
アルスは腰まで伸ばした長い金髪。エリスは肩口まで伸ばしていた。瞳はそろって碧眼で光を取り込みキラキラと反射している。
「世界一かわいいよ!」
思わず声を上げて二人の肩を掴む。瞬間後ろからのぶちゃんに脳天チョップをくらってしまった。
「なにするんだ」
「こっちのセリフだよ。出会って間もないのにフレンドリーすぎるだろ」
「この打ち解けの早さが僕の処世術さ。と、それよりここマジですごいんだな。汽車の中なのに風呂とかあるし」
「まあな」
自慢げに胸を張るのぶちゃん。Eカップくらいかな?
「Fだ」
「着痩せするタイプか!」
しかしFカップとかなかなかお目にかかれないサイズである。僕のクラスの女子でも最高Dカップだった。
「まあ男の君が胸に興味あるのは仕方ないとしてこのトロッコ急行は限られた要人かVIPしか乗れないんだ。車内に娯楽施設は完備されているし浴室もそりゃあるさ。一声かければ服だって用意してくれるしな」
そう意気込んで話すのぶちゃんだけど、ん? そういえば彼女もなんだか顔が赤くて湯上りみたいだ。
「私もついでに入ってきたんだ。この子らと交流を深めようとね。いい胸だった」
「…………マジか」
ほんと常日頃から思うのだけど男の身体はつまらない。腰周りもふっくらしてないし、無駄に筋肉がついていて柔いお肉がない。一応胸には乳首がへばりついているがあんなものあってもなくても困らない。そのくせ下の方にはデリケートで変な形をしたヤシの木が植わっているのである。
「まあそう落ち込むな。国へついたらパツキンのお姉ちゃんがいっぱいいるから。っと、そういえば君は年下の女性が好みなんだったかな?」
どっちかといえばそうだな。年上よりは年下か同年代がいい。でもまあおっぱいがあればだいたいオッケー! 貧乳は人に非ず。
座席に座りグラス片手に隣ののぶちゃんと話す。向かいにはアルスとエリス。ちょっと居心地悪そうにもじもじしている。
仕方ないだろう、彼女らは本当はデルシャワに住んでいた。なのに今これから敵国であるエトランドへと入るのだ。戸惑うのも無理はない。しかしあの時、アルスのした人間ってなんですかという質問に答えた僕に対し彼女らは頷いてくれた。つまり僕と暮らすことを了解してくれたのだ。だったらこれから一緒に生活するからには仲良くしたい。せっかく年下の女の子が二人もいるのだ。この機会を逃すわけにはいかない。
「婚期を逃したおっさんみたいだな」
「のぶちゃんはちょっと黙ってて下さい」
横を向いてのぶちゃんを注意する。前から気になっていたんだけどのぶちゃん僕に突っ込みすぎ。なんだか僕がボケているみたいになっている。
「ボケてるんじゃないのか?」
「shut up!!」
思わず一喝するとやれやれといったようにのぶちゃんは黙ってくれた。まったくとんだおてんばさんだぜ。
「え、えーっと。アルスちゃんとエリスちゃんだっけ?」
エリスはともかくアルスはもう十五程に見えたのでちゃんづけはどうかと思うけどいきなり呼び捨てというのもな。かと言ってさんづけは違う感じがするし。
「……アルスでいいです。この子も」
「……おお、そうか。ならアルス、エリス。僕の名前は坂口春、……変態って言うんだ」
危ない危ない。隣にのぶちゃんがいるのだった。偽名がバレて魔女に漬け込まれてしまう。
「変態? 変な名前ですね」
「へんだねー」
年下二人から変な名前と言われたぞ。てかエリスの方初めて喋ったな。
「ま、まあこの変態という名前は僕の世界ではそれはそれは有名な名前なんだぜ? 王侯貴族もみんな変態だ」
「君の世界はすごいんだな」
「ちょっと黙ってて!」
あんまり突っ込まれすぎると嘘がバレちゃう! やめてくれ!
「それで、さっきのことだけど。僕のところで暮らすという例のあれ」
僕は切り出す。暮らすといってもどういう形態か僕も全くわからないのだ。すべての手配はのぶちゃん以下愉快な仲間たちがしてくれるとは言え僕自身不安がないといえば嘘になる。だってこの世界の勝手なんて全然わからないし、むしろアルスやエリスの方が詳しいだろう。だからここは協力しよう。人間助け合いが大切だ。
「はい……、よろしくお願いします」
「よろしく!」
僕は両手を二人に差し出す。二人もそれぞれ左手を出して握り返してくれた。
『まもなくエトランド国営駅。エトランド国営駅です』
そんな時車内アナウンスが。駅への到着を知らせるものだった。
「ふん。もうすぐ到着だな。迎えはすでに駅へ到着しているだろう。そのまま私の家へ一旦行く。準備という準備はないと思うが、まあ着くまでもうしばらくのんびりしているといい」
そうして列車は徐々にスピードを落としていく。しばらくして真っ暗なトンネルへ。そしてトンネルを出ると、
「――――ここが、エトランド……?」
現在走っているのは石でできたアーチ型の橋。そこから見えるのは米粒みたいな建物から高さ数十メートルの建物ですべてがきっちり区分けされている。そして一面に広がる視界の中央にはこの距離からでもバカでかく見える城が。距離感覚がおかしくなりそうだ。
「浦安のよりでかい……」
僕は窓にへばりつき街を眺める。アルスもエリスも同じように目を輝かせていた。
「はっはー、ようこそエトランドへ。大陸一の王国だ!」
のぶちゃんがまた自慢げに声を上げた。
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