第4話 トロッコ急行変態事件【後編】
その後僕はしばらく車窓から流れる景色をただただ眺めていた。脳裏に浮かぶのはつい数時間前までの普段の日常。どれもこれも当たり前だと思っていたのになくすのはこんないも簡単だなんて。
「疲れているようだ。ここの座席では狭いだろう。一番最後尾の車両に全面ガラス張りのラウンジがある。そこで仮眠も取れるから行ってきたらどうかな?」
虚ろな表情で放心状態の僕を気遣うようにのぶちゃんさんはやんわりとそう進めてきた。特にやることもないので僕はそうすることにする。
「ここはどこだ」
のぶちゃんさんは案内しようかと申し出てきたが丁重にお断りし一人で歩いていた。しかしこの急行は異常なほどまでに広く最後尾が見えない。というか今どこにいるのかもわからなかった。ずっと歩いているので目的地に近づいているのは確かなのだ。だって道は一本。間違うはずがない。
「でも景色が変わってきたぞ……」
それまで両側の壁や天井は華やかな装飾が施されていたのに気がついてみるとだんだんと質素というか淡白な内装になっている。一般乗客の乗る車両に入ったのだろうか。
若干心配になりながらも車両と車両の連結部へと行き扉を開ける。入ってみればそこは暗く寒い。両側にたくさんの棚が並びそこに荷物が置かれていた。
「貨物車両か……?」
ここを通らないと行けないのだろうか。もしかして通路を間違った? でもここ以外の通路はわからないし、突っ切ればたどり着けるだろう。そうして僕は一歩踏み出した。
「――――!?」
踏み出した右足が床に着いた瞬間。前方の棚の影から物音が。なにかが転がるような音である。
「誰かいるのか?」
ここは貨物車両のはずだ。人はいないと思うが。
僕は気配を消すように歩み続ける。そうして音がしたところを覗き込むと。
「…………? 子供?」
隠れるように身を寄せ合い二人の子供が眠っていた。濁った金色の髪で右側に十五歳くらいの女の子。左側に十二歳くらいの女の子。二人とも薄汚れたボロ布を体に巻いて足の裏は泥で汚れていた。
孤児? 難民?
「棄民だよ、彼らは」
背後からの声。振り向くと棚に寄りかかってのぶちゃんさんが立っていた。
「あのあと私もラウンジへ行ったんだがいつまで待っても君が来ない。それで探していたんだ」
「ああ、なるほど」
途中ですれ違わなかったということはやはり僕の通った通路は間違っていたらしい。最初から彼女に道案内を頼んでいればよかった。
「あの、棄民って?」
「そのまんまさ。捨てられた民。廃棄された民だ。エルロット地方は隣国のデルシャワと繋がっているからね。たまにこうして棄民がフラフラと流れ込んでくるのさ」
のぶちゃんさんはそう言うと棚から離れ壁に取り付けられていた黒い箱へ手を伸ばした。
「何してるんです?」
「鉄道警備隊へ連絡するのさ。棄民が車内に紛れ込んでいる、とね」
「それで彼女たちは……?」
「? 棄民とはいえ元はデルシャワの国民。本国へ強制送還か、もしくは我が国で拘束するか。まあその判断は私の一存では決められない」
違う、そういうことではなく。その後この子達はどういう扱いを受けるのかを聞きたいのだ。
「はっきりいって隣国デルシャワは敗戦国。国内の状況は厳しい。強制送還されたところで人間らしい扱いは受けないだろう。我が国へ行っても収容施設へ入れられ半奴隷的な扱いを受ける。国で奴隷を禁止しているとは言え民衆の間では未だ奴隷文化が根付いているからね。どっちへ転んでもこの子達に明るい未来は訪れない」
拳を握り締め、奥歯を噛み締める。今僕の頭には妹の顔が浮かんでいた。罵倒しつつも心配してくれる千榎。そんな彼女と同じくらいの子供たちが奴隷扱い? そんなのいいわけがない。許されない。
「僕の恩賞……」
「ん? 君の恩賞? それだったら永住権・市民権その他困らないよう金貨の支給も、」
「この子達にも。いや、僕に金貨はいりません。その代わりこの子達を〝人間〟としてエトランドへ迎えてください」
こんなに話しても起きないとは相当疲れているのだろう。もしこれでこの子達が救わえるのならそれに越したことはない。
「…………それは君に益のあることなのか? 私には到底、」
「あります! だって……、だって一気におっぱい二組みもゲットじゃないですか。僕こう見えてもおっぱいが大好きなんですよ! あと若干ロリコンの疑いもあります!」
「下の名前変態だしな! というかそんなことわかってて許可できるわけないだろう!」
誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。
また書き溜め尽きた\(^o^)/




