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変態冒険記  作者: ゆゆ
第1章 理想の末路
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第3話 トロッコ急行変態事件【前編】

「さあ、これが都市部へ向かうトロッコ急行だ」


 バーン! と効果音が視界に見えそうな身振りで自慢げにするのぶちゃんさん。彼女の視線の先にあるのは二階建てとも間違うほどの高さをした巨大な車両。それがここから見えるだけでも十両以上つながっており最後尾の車両は線路がカーブしているため見えなかった。


「トロッコとかいうレベルじゃないですね……」


「まあ適当だ!」


 そう言うと僕の手を引いて改札口へ。切符は? と思ったが何やら駅員に免許証のようなものを見せるとすんなりと通された。


「のぶちゃんさん、さっきのは?」


「団体の乗り放題チケット。王宮から支給されてて最大五十人まで無料で乗り放題だ」


「へええ……」


 この急行に乗り放題って、もしかして彼女は結構すごい人だったりするのかな? 部下もいるようだし。


「あれ? そういえば最初会った時に乗っていたモンスターは?」


「あれはこの駅のレンタル用のモンスターだ。三時間五百ユニカ」


 なんと。この世界ではそんなものすごいシステムがあるのか。乗ってきたモンスターを繋いでおく駐輪場的なのもあるのかもしれない。というか五百ユニカっていくらだろう。五百円くらいかな。


「しかしさっきまで何もない草原だったのに、ちょっと場所を変えただけでこんな立派な鉄道があるんですね」


「エトランドは国を挙げてインフラの設備充実に力を入れているからな。数年前の大戦で戦勝国となったおかげで多額の賠償金と領土を確保できた。いまでは武器の輸出も行っている大国だよ」


 列車内に入り一般の客のいない車両に通された僕たち。えらく豪勢な車両でバーのカウンターみたいなのも備わっていた。


「なにか飲むかい?」


「じ、じゃあ貰います。牛乳以外で」


 のぶちゃんさんは、はっは、わかったよというとバーの方へ。そのままスーツを着た乗務員になにやら注文を出しているようだった。


「…………」


 しかしどうしたことだろう。今までの話を整理すると僕は女子更衣室を覗いている最中に異世界へ来てしまったらしい。もしかすると壮大なドッキリという線もあるがそれは信じがたい。そしてのぶちゃんさんたちはモンスターと戦っていて、それに苦戦。そこを僕が助けて……。


 それでどうなるんだ? これはお礼なのか? というか僕は帰れるのだろうか。日々刺激を求めて変態行為に明け暮れ犯罪まがいの行為にも足を踏み入れていた僕。しかしそんな努力もほとんどが無駄に終わり家へ帰れば妹に怒られ、学校では友人に小馬鹿にされる。でも、それでも僕のいる世界はあちらなのだ。ここではなく。


「どうなるんだろ……」


 窓枠へ肘をつきぼそりと呟く。車窓から見えるのは草木と山ばかりでここが違う世界だということを実感させた。


「帰りたいかい……?」


 気配はまったく感じなかった。というよりは僕がぼーっとしていて意識散漫だったせか。いつのまにやら戻ってきていたらしいのぶちゃんさんが向かいの席に座り僕の顔を覗き込んでいた。


「無理もないだろう。君の話していた言葉、身につけている服飾、知識などどれもこの世界のものではない。それに私たちも目にしたのだ。天空から光の柱が大地に突き刺さり、爆煙が晴れてみればそこには君が倒れていた。あ、これ飲み物」


「どうも」


 グラスを受け取り口をつける。一瞬苦味を感じすぐに甘い香りが鼻腔に満ちた。果汁百パーセントのグレープフルーツのあとに甘いイチゴミルクを飲んだ感じかな? と言っても苦味による不快感はなくむしろ気分が高揚していくようである。


「気に入ったかな? これはベルサイトという木の実を発酵させて作ったものでね。多少酒気は感じるがよっぽど体質の合わない限り子供から老人までみんな大好きなんだ」


「すごい美味しいですね」


 グラスを見つめる。きっと台詞に似合わず暗い表情をしていることだろう。


「元いた世界に帰りたいというのであれば力を貸そう。しかし方法は複数あるもののどれも成功するかはわからない。例え成功してこの世界を離れられても元いた世界に着く頃には死ぬことだってある」


「あの……」


「なんだ?」


「どうして僕に良くしてくれるんです? あなたたちの窮地を救ったから?」 


 しかし僕の問いかけにのぶちゃんさんは一瞬顔を伏せ、またすぐに僕を見てくる。


「それも……ある。君には多額の恩賞を与えるべきだろう。それにもう一つるのだが……」


「もう一つ?」


「いやいや、なんでもない。とにかく今は君にお礼がしたいのだ。そのためにまずは都市部に向かう。そのあとで戻る方法を探せば良い。こんな地方にいても戻ることはできないぞ?」


誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。

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