第1話 瞬間、言葉、重ねて
「――――――!!」
急激に覚醒する意識。どくどくと脈打つ心臓。
「…………ここは」
首を左右に動かし周囲の状況を把握しようとする。視界に入るのは地面とだだっ広い空。どうやら横になっている状態らしい。やけに頭が重く、全身は痺れるようにピリピリとするが僕はなんとか地面に手をつき立ち上がる。
と、立ち上がった瞬間周囲を数人の男? に囲まれる。全員が全員禍々しい鎧というのか、やけにゴテゴテした服を着込んで、手には長槍。それを僕に差し向けている。
「ちょっとたんま、なにこれ新手のいじめ? 確かに女子更衣室覗いたのはあれだけどこれはちょっとやりすぎでない――」
しかし話す僕の喉にチクッと痛みが。長槍の先端が数ミリ肉に食い込んでいた。しゃべるな、ということか。
「■■■■■」
突然僕の目の前にいる人物が意味不明の言葉を叫ぶ。堪らず伺うように周囲の人物を見回すが誰も彼も厳しい視線を向け威圧するようである。
「えっと、なんて?」
答えるように話す僕だが相手は首をかしげ、さらに一歩踏み寄ってくる。びっくりして僕は一歩後退すると今度はうなじのあたりに小さな痛み。どうしよう、これ以上動けない。
「●●●●●!!」
絶望感に浸っていると突如目の前を塞ぐ男たちの向こうから声が。次いでかき分けるようにして誰かがやってきた。
それはなんか気持ち悪い顔の動物の背中に乗った女騎士のような人物である。顔を見れば綺麗な赤髪の女の子だった。
彼女は男たちを僕から遠ざけ、へんな動物から降りるとこちらへ歩み寄ってくる。
「●●●●●?」
「ォオ、イエス! おっぱい!」
何か聞かれたので取り敢えず返事をしておく。何も話さないよりマシだろう。しかし彼女は探るような瞳で僕をじろりと睨み、半歩前へ。そして左腕を後ろへ引き絞ると思い切りその拳を打ち込んだ。
僕の腹部に。
「なん……だと……?」
かわすことも力を入れて衝撃を軽減させることもできないまま片膝をつく僕。肺から空気が抜けて呼吸が乱れる。
しかし、
「これでわかるか?」
僕の耳に聞きなれた言葉が届く。見上げてみればその言葉を喋っていたのは僕の腹をぶん殴った女の子である。
「? まだわからないのか」
そう言うと僕の腕を掴み強引に立たせ、先ほどと同じように左腕を引き絞る。
「ちょちょ、待った、待ってください! わかりますよ! 僕、あなたのお話わかりますよ!」
必死に掴まれた腕を振りほどきつつ弁解する僕。そんな様子を見て彼女はやっと放してくれた。
「ちょっとねえ、殴るって何考えてるの? これ傷害だよ」
掴まれた腕と殴られた腹を交互に撫でながら女の子を睨みつける僕。全く初対面の相手に暴力を振るうって一体どういう教育をうけてきたのであろうか。親の顔が見てみたいわ。
「申し訳ない。しかし我らの言葉が通じないようでしたので仕方なく」
……そういえばさっきから言葉がわかる。最初は何を言っているのかさっぱりわからなかったのに。どういうことだ?
「ああ、我らの言葉が通じるよう、あなたの脳内で自動的に変換されるよう術式を打ち込んだのです」
? つまり言葉が通じるように殴たってこと? もっと穏便な方法がなかったのだろうか。
「ははは、そうですね。非接触でも可能ですが詠唱に時間がかかるのです。しかし殴って直接体に刻み込むとそれだけですむのです」
漫画でよくある、話すよりその身に直接刻んでやる状態だろうか。なんだかずいぶんアグレッシブだな。
「しかしここはどこなんです? 北欧のほう? 僕のイメージ的にフィンランドって感じなんですけど。いやもちろん行ったことはないですよ? 地図帳で見るくらいです」
周囲を見渡す。見る限り人工の建物はなく背の低い草の生えた草原が広がっている。ところどころ爆撃でも受けたように地面がえぐれているけどそれ以外は大自然といった感じ。ずっと遠くには山頂に白い雪の積もった山々が続いていた。
「フィンランド? という場所は存じませんがここはエルロット地方の外れの草原ですよ」
??
エルロットとか聞いたことない地名である。というかあれ? 僕さっきまでおっぱい覗こうとしていたのだけど、どういうこと?
「おお、それより私の紹介が遅れました」
「いや、それより今この状況を、」
「私はノエル・ブランエッド・シェロンリズナという。以後お見知りおきを」
「長いな。のぶちゃんでいい?」
「いいぞ!」
誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。
書きためないので不定期更新。




