表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変態冒険記  作者: ゆゆ
第2章 世界を憎む少女
33/45

第28話 わかってもらおーなんて思ってないですよ


 町から戻り城内へ入ると正面からのぶちゃんが駆け寄ってきた。焦っているような表情である。しかしそれよりもバインバインに揺れる二つのボールに目がいってしまった。


「おい変態! 大丈夫なのか!?」


 僕の両肩を掴みぶんぶんと揺さぶってくる。あまりの激しさで前後左右の感覚がなくなった。しかしもう城へは事件のことが伝わっているようである。そりゃ攻撃魔法禁止の町中であれだけ派手にやれば仕方ないか。しかも現場は城からすぐの第2地区だし。


「ちょ、大丈夫ですよ~。む、無傷です」


 目の回るのを堪えながら合わない焦点でのぶちゃんを見る。うっすらと目に涙が溜まっていた。想像以上に心配させてしまったようだ。


「あ、これ。お土産です」


 右手に持っていた袋を差し出す。超高級クッキーの入った袋だ。


「? 私にか? ありがとう」


「食堂でへんな誤解されたままですしその謝罪も兼ねて」


「……食堂……。ああ、あれね……。誤解だったのか」


 恥ずかしそうに赤面しながら僕からのお土産を受け取る。笑いながら取り繕っているがぎこちない笑顔だ。しかし胸でかいなあ! 触ったら怒るかな。


「シェロン。ここ半年の事件について調べたい」


 僕の後方からついてきていたリリルがのぶちゃんへ声をかける。のぶちゃんは一瞬頭上にクエスチョンマークの浮かんだ顔をしたがすぐに理解したようで、


「分かった。私の権限で記録の閲覧を許可しよう。ただし室外への持ち出しは不可だ」


 と言った。リリルは調べたい事があると言っていたしそのことに関係しているのだろうか。でもそれだったら僕も事件の当事者なのだからついていった方が良くないか?


「リリル。僕も、」


「ついてこんでいい」 


 きっぱりと言った。突き放すような、拒絶するような言い方である。……こんなロリにきつく言われるなんて……。少し悲しいけれど、この胸の奥から溢れる感情はなんだろう……。


「この件に関してはすべて私が調べる。お前は明日に向けて休んどるといい。疲れたままでクリシアの特訓を受けようなどと思うなよ」


 殺されるぞ、と含みのある笑みで去っていく。殺されるって、あくまで訓練だろう? まさかそんな命に関わるようなことは……。


「ああ、明日はあの人の訓練を受けるのか。……頑張れ!」


「どういう意味!?」


 明らかにご愁傷様ですみたいな感じなのだが。そんなにあの人ヤバイのか? 見た感じ明るくて面白そうな人なんだが。ピンク色の髪しているし。


「ちょっと冗談キツ過ぎますよ~」


 半ば引きつった笑顔を張り付かせ肘でのぶちゃんをつつく。こうしないと明日への不安でおかしくなりそうだ。というかさりげなく肘でつついた場所は胸である。柔らかい。


「ははは~。ま、まあ怪我しても大体の傷は治せるさ! 全体の三分の二でも消失しない限り」


「…………」


 三分の二って、つま先から胸のあたりまでということか? クリシアと戦ってそこまでの傷を負う可能性があるのか?


「大丈夫だ! なんとかなる! 頑張れ!」


 結局頑張れか……。まあ本当のところやってみなければわからない。リリルやのぶちゃんが誇張しているだけかもしれないし、実際はとっても優しいかもしれないじゃないか。

いや、語尾に「にゃー」つけてる人が戦闘狂なわけない。絶対に優しい人のはずである。


「それより夕食にしよう。今日はいい肉が入ってるんだ。明日の景気づけにガツンと食べようじゃないか!」


 そう言うとのぶちゃんは僕の手を取って歩き出した。






     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆






「なんですかこれ」


 皿の上に一匹の魔物が座っている。が、既に絶命しているようで全身こんがり焼けおいしそうなソースがかかっていた。横に根菜が添えられている。ただ真っ黒に焼けた両目が僕の目と合って非常に怖い。


「チャリノンの丸焼きだ」


「丸焼きなのはわかりますよ。でもなんでわざわざお皿に座らせてるんですか」


「私のは仰向けだが」


 指差す方を見ると確かにのぶちゃんのお皿に乗っているチャリノンは仰向けだ。しかもオスなのか知らないが股のとこに付いている。


 しかし困った。こんなグロいもの食べられない。美味しいのだろうけど見た目がやばいだろう。下手すれば小さい人間にも見えるぞ。


「しょうがないな。私が切り分けといてやるからその間お前はドラちゃんと遊んでいろ」


 まったくと言った顔で僕の皿を取り上げるとナイフを掴み解体にかかるのぶちゃん。ここは彼女に任せて僕は暇を潰すとするか。


「ド~ラちゃ~ん」


 窓辺に立って呼んでみる。10秒ほどたつと下階の方からバッサバッサと翼を動かす音が。そして窓の前にドラちゃんの顔が現れた。


「今お前のご主人さまにチャリノン切り分けてもらってるんだよ。あんなの自分じゃ食えねーよ」


「まあチャリノンはにんげんににてますからね~。丸やきはきもち悪いですよね~」


 そうなんだよな。しかもあんな瞳で見つめてこられたら気持ち悪すぎる。なんで殺したんだ~とか、よくも~とかいう怨念のこもった声が聞こえてきそうで怖い。


「わたしも小さいころからしろでおせわになってるんですがたまにごしゅじんが生のまものを食べさそうとしてくるんですよ~。おなかこわしたらどうするんだよってね~」


「確かに! 火を通さないと肉は危険だよね。食中毒とか怖いし」


「そうそう~」


「…………ん?」


 あれあれ? 


 僕は今誰と話しているんだろうか。向かいにはドラちゃんの大きなお顔があって傍から見れば二人でお話しているように見えるかもしれない。でも相手はドラゴンだぞ? 言葉を話せるわけがない。


「ふしぎですよね~」


「喋ったああああああああ」


 なんで? ドラちゃんが喋ってる! 普通に口達者だよ! コミュ力高いよ、彼!


「ちょ、おい! のぶちゃん!」


 僕は窓際からダッシュしてチャリノンの解体作業に勤しんでいるのぶちゃんに話しかける。


「んだよ。今忙しいんだ。骨まで取ってやってるんだから」


「嬉しいですけど、違うんですよ! あれ見て、あれ!」


 ドラちゃんを指差す。しかしのぶちゃんは面倒そうにチラッと見ただけですぐに顔を戻してしまう。


「ドラちゃんだろ? そりゃ呼べばくるさ。あの子は頭いいから」


「いやだから! 頭良いとかじゃなくて話せるんですよ! さっきもドラちゃんと会話しました」


 興奮気味に話す僕だが当ののぶちゃんはまったく取り合ってくれない。というより中々骨が取れなくてイライラしているように見える。机の下で思い切り貧乏ゆすりしているし。


「あと下半身の骨だけだからもうちょっとドラちゃんと遊んでいろ。できたら呼ぶから」


 そう言って作業に没頭してしまう。僕の話なんかまったく耳に入っていないようだ。

仕方ない。今度暇そうなときにでも聞いてみるか。


「ごめんドラちゃん。お前のご主人様忙しそうだった」


「ねっちゅーするとまわりが見えなくなりますからね~」


 このドラゴンはよくできるドラゴンだな。なんで会話が成立するのかわからないが、もしかしたらあれか? リリルが昼間かけた魔法にドラゴンと会話できるようになるような魔法でも入っていたのだろうか。


「いつかはのぶちゃんに分からせてあげたいな」


 しかしドラちゃんは遠い目(予想)をするとぼそっ(予想)と呟いた。


「わかってもらおーなんて思ってないですよ……」







     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆






 その後のぶちゃんに呼ばれたのは20分後。料理は冷めてしまっていたが最初よりは断然グロくなくまあまあ食べられた。根菜の横に二つの眼球が転がっていて息が止まりそうになったが。


 そして日付は変わり夜は開ける――――。


「死ぬ覚悟は出来たかにゃ?」


 体育館2個分くらいの巨大な部屋。天井までは50メートルほどもあり発する声は全て反響することなく吸い込まれていく。


 そんな中。


 僕は2日続けて死の危機に瀕していた。


クリシア怖い……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ