表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変態冒険記  作者: ゆゆ
第1章 理想の末路
24/45

第19話 れっつ、かっとおふあんあーむなのです

 陸海空軍とは別にこの世界では各国ともに法軍と呼ばれる特殊な軍隊を有しているらしい。簡単に言えば魔法的・超能力的不思議パワーを行使する専門軍である。


 そしてクリシア・メンテルとストレア・スカースリットルはその関係者ということだった。


「リリルから様子を見てきてくれって頼まれたのにゃー。危機一髪だったにゃー」


 というのはクリシアの弁。自分の家で寝ていたところにリリルがやってきたらしい。同じ魔法を使う者同士以前から交流があるらしかった。


「俺は別に頼まれてないけどな。コイツが行くって言うから仕方なくついて来てやったんだ」


 聞いてもいないのに自分から話してくるのはストレア。どう見ても女の子です(胸以外)。


「いやあ。本当に助かったよ」


 僕は彼らにお礼を言って横を見る。そこにはのぶちゃんが横になっており現在治療中である。のぶちゃんは戦闘中こそアドレナリンでも出ていたのか傷を負っても平気なようだったが一度戦闘が終われば糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。そしてクリシアが消失した腕の再生治療を行っていた。


 最初の切断面にかかっていた白いもやは限定的な時間停止の魔法らしい。腕の腐食を防ぐために傷口だけ時間を止めたのだと言っていた。


「あんな余裕ぶった登場したけれど、内心焦ってたのにゃ。独断専行とは言え国王の娘。怪我させるわけにも負けさせるわけにもいかないにゃ。国内の士気にもかかわってくるからにゃ」


 クリシアは視界の隅にのぶちゃんを捉えながら話す。長い前髪のせいでその表情は見えないが呟く言葉は噛み締めるようだ。怪我をさせてしまったことを相当悔いているようだった。


「僕のせいでもあるんです。この場にいたのに何もできなかった」


「お前はほとんどなんの力も持たない凡人だろうが。何もできなかったじゃなくて何もできない、だぜ」


 嘲るように僕の顔を覗き込んでくる。まあそうだ。多少素質があるとは言えなんの訓練も積んでいない一般人。そんなやつが戦闘になって役に立つわけがない。ただ見ているだけしかできないのだ。


「でも。それはそうとのぶちゃんがあんなに苦戦したあいつを一瞬で倒すなんてお二人は強いんですね」


「まあ師団長と参謀だからにゃー。二人でかかれば一個旅団でも掃討できるにゃ。と言っても今回は状況が幸運だっただけにゃ。王水とかいう特殊なものがなければ流体操作であいつを爆殺するしかなかったにゃ。流体操作は高等魔術なんだにゃ」


 ん? 流体って、簡単に言えば空気とかだろ? そんなもの普通に操れると思ったのだが。


「空気を動かして風を作るくらいは簡易魔術にゃ。爆殺する場合は空気中の酸素や水素の動きを正確に操作する必要があるから難しいのにゃ」


 ふーん。まあ魔術のことは僕にはよくわからないけれど、どっちにしろ二人はすごいってことだ。僕やのぶちゃんなんかよりよっぽど。


「そうでもないさ。補助がないとろくに魔法も使えないくせに剣一本で挑んで怪我しても怯まないんだからそこらへんの兵士よりよっぽど根性座ってる」


 目を瞑り深く眠り続けるのぶちゃんへ顔を向けるストレア。僕もそれにならうようにのぶちゃんを見る。脇にはクリシアが座り傷口に両手の平をかざしていた。


「今この場での完治は難しいにゃ。このまま城まで戻るにゃ」


 聞くとどうやら傷の治りが悪いらしい。本来ならこの程度の損傷はとっくに治っているとクリシアは首をひねっていた。


「でもどうやって帰るんです?」


「四人まとめて転送魔法を使うにゃ。ここに来る前に青いドラゴンも城に帰したにゃ」


 そういえばドラちゃんは穴に入る前に置いて来たのだった。にしても四人同時に転送とか出来るのか。距離も数百キロは離れているだろうし。


「私を見くびりすぎだにゃ。こんな人数と距離を転送させるのなんて朝飯前にゃ」


 そう言うとクリシアは立ち上がると腕を突き上げ叫ぶ。


「トラスリメント!」


 瞬間、急激な浮遊感が全身を包み込み視界が真っ黒になる。しかしそれはほんの一秒ほどのことですぐに足の裏に衝撃が走り視界も正常に戻った。


「戻ったようだな。全員無事……とはいかんか」


 転送された場所は恐らくエトランド城なのだろうけど見たことのない部屋だ。全体的に照明が暗く空気もどんよりとしている。そして僕たちの目の前には銀髪の魔法幼女がつまらなさそうな顔で自分の髪を指に絡めながら突っ立っていた。


「リリル……」


 僕は声をかける。が彼女の視線は鋭く低い位置、ちょうど床に横たわるのぶちゃんを見据えていた。


「クリシア、ストレア。今回は助かった。あとの処置は私が引き継ごう」


 そう言うとリリルは僕の脇を通り過ぎのぶちゃんの横へとしゃがみこむ。


「随分無茶をしたようだな。こいつがおれば大丈夫だと思っとったが、どうやら私の予見は間違っていたようだ」


 そう言って初めて僕の顔を見るリリル。


 睨んでいた。


 僕は思わず視線をそらす。一体なんなんだ。僕にどうして欲しかったというのだ。


「…………ふん。クリシアの回復魔術でも腐食を止められた程度か。これは少し面倒な傷だな」


 覗き込むように傷口を見つめるリリルだが、何を思ったのか彼女はのぶちゃんの傷へ直接指先を触れた。その瞬間静電気のようなバチっという音が鳴りリリルの指が弾かれた。


「ミリルム・クリフは厄介なことに魔力耐性を持つ魔物でな。あいつによる怪我は不治の紋章〈モールト・アルディカ〉と呼ばれておる。回復魔術では腐食を止めるのが精一杯。しかも完璧に止めることは出来ん。このままでは一週間以内に、」


 シェロンは死ぬ、と。リリルは誰に言うでもなくただ一人で言葉を吐いた。後方で聞いているクリシアとストレアも無言で視線を落としている。


「こうなっては仕方ない。多少荒療治だがあの方法で腕を治そう。おい、ちょっとそこの剣持って来い」


 リリルはそう僕に言って床に置かれているものを顎でしゃくって示す。刀身のない柄だけの剣だ。そういえば前にリリルの家で見たような。 


「それでパパッと肩から切り落としてくれ。そしたら私が腕生やすから」


「え、でもそれじゃあ、」


「大丈夫だ。その剣は切られても痛みを感じず、血も出ない。だからシェロンを人として想うのならひと思いにズバッといってくれ」


 僕は柄を握り、考える。確かに意識のある状態ののぶちゃんをあの禍々しい剣で切るよりは抵抗は少ない。それにここでやらなければのぶちゃんは死ぬのだ。


「わ、わかりました。行きます」


 僕は刀身がある場所を頭の中で想像しのぶちゃんの肩の上へと持ってくる。そして上へ振り上げると一気に振り下ろした。その瞬間、切り落とされた腕は後方へと飛び、床へ落ちる前に塵となって消えた。視線を引き戻しのぶちゃんの肩を見るとすでにそこには腕が。ちゃんと肘から先も再生している。


「こんな簡単に?」


「リリルは普通に私と同じくらいの魔力持ってるんだにゃー。本人は認めたがらないけど」


 それまで無言だったクリシアが口を開く。心なしか嬉しそうに見えた。


「しばらくすれば意識は戻る。すまんが部屋まで運んでやってくれ」


 そう言うとリリルは後方の二人に指差して指示する。


「お前には別に用件がある。ちょっとツラ貸せ」


 リリルは僕に手招きすると薄暗い部屋の奥へと連れて行った。


誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ