第14話 念力も、魔法も、あるんだよ
「……んっ、あ、ああ! んくっ……」
人工の光源はなく、窓から射し込む月明かりだけが室内を照らす。室内には細い声が満ち布の擦れる音とベッドのスプリングが跳ねる音。部屋は不思議な香りで満たされ異様な空間を作り出していた。
「っ! どうだ? これで!」
「はぁっ、ああ! んん……」
男の嬉しそうな声とは対象的に女の悲痛とも快感ともとれる淫らな声はしかし部屋の外に漏れることはなく、誰も気づかない。
「あ、熱い! 熱いのが!」
「我慢しろ。すぐ終わる」
抵抗する女を強引に押さえつけると男は行為を続けた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「よーしよしこれで完成。ったく。夜中に僕の部屋に潜り込むなんて何考えてるんだよ」
僕はベッドにひっくり返っている女を見る。白目を向いて口をパクパクさせているのは魔法幼女のリリルである。なぜかは知らないが僕が寝ているとこいつが部屋へ忍び込んできたのだ。お仕置きとして顔に筆で落書きをしてやった。冷たくないように温めてから書いてやったのはちょっとした温情である。
「おい、起きろ」
僕は伸びているリリルの頬を軽く叩く。何度かそうしたところでリリルはやっと起きた。全く僕の部屋で寝るんじゃないよ。ちゃんと自分の部屋で寝なさい。
「……ん、ここは、私は何をしとるんだ?」
「僕のセリフだよ」
どうやらリリルは事の前後の記憶が飛んでいるらしかった。まあ顔の落書きがバレないのはありがたい。
「そ、そうだ。お前に話があるのだった。ちょっと時間を作れ」
「話?」
「うん。事は急を要する。今すぐちょっと付き合え」
そしてリリルは僕の手を引っ張って床に立つと左腕を突き上げ叫んだ。
「トラスリメント!」
叫ぶと同時にエレベーターの時の比ではない強烈な無重力感が全身を包む。視界がうずを巻くように急速に回転しだし、思わず目をつむる。
「着いたぞ」
そんなリリルの声。目を開けるとそこは暗い建物の中でそういえばもう無重力は感じなかった。
「……ここは?」
六畳ほどの広さだろうか。明かりは点いておらず暗い。不快に感じるほどではないが城内よりも湿度が高いようでむわっとしていた。
「私の家の地下倉庫だ。湖の下に突き出すように作られてるからちょっと湿っぽい」
「へえ、リリルの家か。てかやっぱり魔法使えたんだ」
トラスなんとかと叫んでた。転送魔法の一種だろうか。
「もう変な縛りはやめたわ。どうせ無駄だろうしな」
するとリリルは壁際まで歩いて行きなにやらまさぐり始める。そしてカチッと言う音と共に天井から吊り下げられた裸電球的なものが明かりを灯した。
「なんだこれ」
倉庫というからにはそりゃいろんなものが置かれているのだろうけど、僕の視界に飛び込んできたのはなにやら禍々しい雰囲気を放つ得体の知れない道具だ。壁なんかには刀身がなく柄だけの剣がかけられていたり赤黒い液体のついたモーニングスターがぶら下がっていたりする。棚には大小様々な瓶が置かれ黄色い液体とともに気持ち悪い生き物が詰め込まれていた。
「ちょっと待ってろ。今出すから……」
そう言うとリリルは床にたくさん置かれた箱の中を掻き出し始める。しばらくして「あったぞ!」と言いながら左手を僕に差し出してきた。僕は両手でそれを受け取る。
「……? 指輪?」
「そうだ。絶向の指輪だ」
呪いの道具的な名前だ。僕を呪い殺そうというのか?
「違うわ。その指輪はつけている者の能力に指向性を持たせるためのものだ。もともとは技術が浅くうまく力の制御ができん魔法使いの使う魔具だ」
んん? そんなものがなんで僕に必要なんだ? 僕、能力なんか、
「あるわ」
…………え?
「能力はある。いや、なくとも素質はある……はずだ。そもそも世界と世界を移動する際に無事というのはそもそもおかしい。さらにあいつの話ではお前は空から降ってきたといった。そして地面に激突したと。普通それで生きていられるわけがないだろう」
そういえばそうだ。落ちてきたならどうして僕は生きてるんだ? 死んでるのが普通なのに怪我一つない。
「あいつから聞いたと思うが数ヶ月前に私は既に見ている。異世界から来るものがあいつを助けることは確定事項なのだ。そしてそれはお前だった」
仮にそうだとして、でも僕には何も出来ないぞ。城の屋上庭園でも試したが何も起きなかった。
「ふん。なら今その指輪をはめて同じようにしてみろ」
言われた僕は仕方なく指にはめる。何を持ち上げようかと思ったがこれといって興味をそそるものはなく仕方ないので目の前に置かれていた一冊の本を持ち上げてみることにした。
意識を本に集中し、持ち上げるイメージ……。
「――――っう、浮いた!??」
そんなバカな。本は置かれていた床から五センチほど浮いてふわふわと揺れている。
「ど、どういうことだ」
だってあの時はなにも起こらなかったのに……。
「本当になにも起こらなかったのか? 異常は、なにも?」
そうだ。鉢植えは一ミリも動かなかったし、それ以外に……。
「そういえば、ボタンが……」
のぶちゃんの服のボタンが弾け飛んだ。
「おそらくお前は表面意識では鉢植えに集中しながらも深層意識では隣に座っているおっぱいに興味津々だったのだろう。それで無意識に『おっぱいみたいな……』とか思ったんじゃないか?」
「そ、そんな変態みたいな、」
いや、僕は変態だった! 無意識と言われれば否定できない。この世界に来る前だっておっぱい三昧の日々だったし。
「やはりな。お前の能力は念動力、念力だ。その他落下時の衝撃を無効化できるようだし少しながら魔力の素質もあるかもしれん」
そうしてリリルはにやりと笑う。
僕は指輪をはめた指でポケットの中のボタンを弄んでいた。
誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。
応募用に執筆をすることになったので更新頻度落ちます。




