第12話 あかね色のファーストトーク
「おお、君が例の異世界から来たという変態君かね」
開口一番に変態と言われて内心しょんぼりする僕だけど仕方ない、自分から言い出してしまったことなのだ。もっとも、リリルは僕の本名を知っているようだが。
「ええと、はい。僕が坂口変態です」
あのあとドラちゃんから降りた僕たちは城内へと案内された。そしてリリル、アルス、エリスは各自城内に自分の部屋が与えられ(アルスとエリスは自分たちから同じ部屋がいいといったので二人部屋だ)連れて行かれた。僕はというとのぶちゃんに連れられ国王のもとへ来ていたのだ。
「はっは、いやー娘を助けていただいたようで。本当にありがとうございます。これ、私の部屋の合鍵。夜に寂しくなったらいつでも来るといい」
「…………あ、ありがとうございます」
なんか国王の自室の鍵もらったぞ。どういう展開だ。しかし断れる訳もなく僕はその鍵を受け取った。
「ははは、父さんったら。まさかこいつを掘る気じゃないでしょうね?」
のぶちゃんが横から笑ってくるが、え? 掘るってなに? このお父さんそういう人なの?
「こらノエル! 変なことを言うんじゃない。あれはもう昔のことだよ」
父親に一喝されて口を閉じるのぶちゃん。「じゃああとはお二人で」といい部屋から出て行ってしまった。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が流れる。僕は一体どうしたものかと部屋中をぐるぐる見回すが見たこともない金ピカの装飾品ばかりで目が痛い。国王を見ると終始笑顔でただただこちらを見てくるだけだった。
「娘をよろしく頼む」
「!!? えっ??」
「なんちゃって」
「うぅ…………」
面白い人なのはわかるんだけど、立場が違いすぎる。ツッコミを入れたいのに入れれないというのはこれほど歯がゆいものなのか。
「君のいた世界のことだが、話してくれないかね? 何年かに一度君のように異世界からくる人間はいるのだがみなすぐ死んでしまうかどこかえ消えてしまう。だから他の世界のことを聞いてみたいのだ」
「そうですか……。では――――」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「本当か、そんな水着があるのか。スク水といったかな? 今度うちでも作ってみよう」
「あ、じゃあじゃあブルマも作りませんか? それで女の子に履かせて!!」
「お前天才! 素質ありすぎだろう!! ちょっとこれもう学科試験の勉強してる場合じゃねえ!」
僕と国王はえらく盛り上がっていた。もう身分関係なくタメ口で話している。二人共頭の中で想像を膨らませ心拍数を上昇させている。いやあ、国王がここまで話のわかる人だとは思いもしなかった。
「私も異世界からきた者がこれほど面白いやつだとは思わんかったわい。帰る方法が見つかるまでいくらでもここに居るといい。生活に苦労はさせん」
「あ、ありがとうございます!」
これもしかして元いた世界よりこっちのほうが楽しいんじゃね? テレビとかパソコンとかないけど絶対こっちのほうが楽しい。
〝おっーごほん。んん! ごほほほ〟
? なんだろう背後からあからさまな咳払いが聞こえる。せっかく楽しい気分なのに邪魔する気なのだろうか。まあいい、無視だ無視。
「それで他にもですね、スク水には種類があり……」
〝えんっ! んんごごご!!〟
「ちょっとなに、さっきから。後ろで痰絡まったみたいな咳して、」
言いつつ振り向くとそこにはのぶちゃん。眉はひそめつつ笑顔という高度な技を使って僕を見下ろしていた。
「えーっと、ちょっといいかな父さん。変態はもう疲れているだろうから休ませてやりたいんだが。それに父さんも勉強しないといけないんじゃないの?」
「……う、うん。そうだったな。勉強勉強。まだ駐車位置のとこ覚えてないし……」
そうして教本を広げ暗記するようにぶつぶつと用語を唱えだした。
「さあ、父さんは勉強を始めたことだし君も部屋に案内しよう。疲れているだろう?」
「あ、ええ。もうへとへとです、はい」
のぶちゃんは僕の右手首を掴むとずんずん廊下を進んでいく。異様に長い廊下を抜けるとそこは大きな広間になっており正面に両開きの扉が。全部で五つある。
「のぶちゃん、あれは?」
「エレベーターだが? この城内を縦に移動するのに階段では無理があるからな」
「エレベーターって……」
そういえば城内を照らす照明は火を使った照明ではなく電球のようだ。通電しているのか?
「通電? は知らないが城内の照明の類は蓄光石によるものだ。エレベーターは使う素材に魔石のかけらを合成して作られている。さらにエレベーター自体に永続的な転移魔法がかけられているから階数のボタンを押せばそこまで転送されるのさ」
ああ、魔法ね。思わず電力があるのかと思った。まあリリルのじいさんも魔法使いらしいし、この世界では珍しくないのかな?
エレベーターに乗り込むと扉は自動で閉まる。ボタンの点滅を見るとどうやらここは十四階らしい。のぶちゃんは四十五のボタンを押すと扉が閉まった。
一瞬無重力を感じ身体が浮くような感覚を覚えるがすぐに重力は戻る。時間にして0.2秒ほどだろうか。
「着いたぞ」
早い。十四階から四十五階までをこんな短時間で。さすが魔法。
チーン、と音が鳴り扉が開く。僕はエレベーターの外へ出ようとしたが、そこでのぶちゃんが袖を掴んだ。
「ち、ちょっと話……いいか……?」
振り返る僕。
のぶちゃんはただ下を向いて上目遣いに僕を見てくる。
そして口を開いた。
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