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変態冒険記  作者: ゆゆ
第1章 理想の末路
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第11話 絶対の…天空城(ヘブンズ・キャッスル)


 よく漫画やアニメなんかでは主人公が竜の背に乗って楽しそうにしている場面があるがあんなもの嘘だ。今なら自信を持ってそう言える。


 ドラちゃんだけがそうなのかもしれないけど、竜の背中は翼を動かすたびにお尻の下がごりごりと動いてとてもずっと座っていられるものではなく、さらに五人でギュウギュウ詰めで乗ったせいか飛び立った直後からドラちゃんは息切れするようにはあはあ言っていたのだ。そのせいで声の震えが伝わってきてこれまたお尻がぞわぞわした。


 これなら舟に乗ってのんびり帰ったほうがまだマシである。まあもう飛び立ってしまったのでどうすることもできないが。


「ところでのぶちゃん。これどこへ向かってるんです?」


 前から来る風圧を防ぐように手のひらで顔を隠しながら前に座るのぶちゃんに聞く。


「うん。やっぱり君はこの世界に来たばかりで分からないことだらけだろうしな。しばらくは私の実家で暮らすといい。お前たちもそれでいいだろう?」


 そう言ってアルスとエリスに確認を取る。二人は同時にうんと頷いた。しかしのぶちゃんの家か。のぶちゃん自身なにやら身分の高そうな人だ。王宮から列車の乗り放題チケットとか支給してもらっているし。もしかして宮仕えだったりするのか? だったらものすごく大きな家に住んでいたりして。


「というか私は国王の娘だ。だから私の実家は王宮だぞ」


「――――――」


「――――――」


「――――――」


「はっ、んなこと知っとるわ」


 絶句する僕たち三人に一人悪態をつくリリル。お前はちょっと黙ってろ。


「んーとちょっと待ってね。えっと? なんだって? のぶちゃんの家は?」


「王宮」


「ふんふん。王宮王宮……王様が住むところは?」


「王宮」


「で? のぶちゃんの家は?」


「王宮」


 ふーむ、なーるほどね。確かにのぶちゃんはちょっとお茶目なところがあるからきっと僕たちをびっくりさせようと冗談を言っているのでしょう。僕にはわかります。


「もう一回聞くけど、のぶちゃんのおウチはどこですか?」


「王宮です!」


「嘘だああああああ! 異世界に来て偶然助けた女の子が国王の娘で、さらにその娘の家に住むって、どういうこと!」


 一人頭を抱えて絶叫する。バランスを崩してドラちゃんから転げ落ちそうになったがのぶちゃんが襟首を掴んで助けてくれた。


「マジの話なの? のぶちゃんってとてもすごい人?」


「まあな」


「だからさっきからそう言っとろうが」


「リリルは黙ってろよ。落とすぞ」


「…………」


 さっと静かになるリリルを尻目に僕は改めてのぶちゃんを見る。燃えるような赤髪に意志の強そうな鋭く大きな赤い瞳。顔は小さく引き締まっており陶器のようになめらかでつややかだ。言われてみればいいとこの、それこそ王族の人間と言われれば納得できる。


「なんてことだ……」


 僕はそんな人に今まで散々タメ口でツッコミを入れ続けていたのか。僕はそう考えると徐々に血の気が引いていくのがわかった。これ、無礼だとか言って処罰されてりしないよね?


「気にするな、そんなことせんわ! それより王宮へついたらまずは父さんに会ってもらおう。なーにもうアポはとってあるので大丈夫だ」


 そうして楽しそうに僕の肩をぽんぽん叩いてくる。


 えっと、父さんってあれだよね? この国の現国王だよね? きっとお忙しいしやめておいたほうが……。


「大丈夫だ。今父さんはほとんど仕事せずに部屋にこもって免許取る勉強してるから。もうすぐ仮免の学科試験らしいんだ。だから父さんの息抜きもかねてお前の世界のことを話してやってくれ」


「え、免許とかあるの」


「当たり前だろう。免許なくてどうやってクルマに乗るんだよ。捕まっちゃうだろ。ちなみに私は普通免許と普通自動二輪、大型自動二輪を持ってる。原付もあるけどまああれはおまけで付いてきただけだ」


 確かにクルマは僕もここに来るまでに乗ったからわかるけどこの世界バイクもあるのか? 走ってるの見たことないけど。


「まだあれは普及してないからな。ただの金を持て余した金持ちたちの遊びだよ」


「へええ……」


 よく考えてみれば列車も走っていてクルマもあって、戦争出来るだけの技術があるならバイクがあってもおかしくないか。僕の考えが硬すぎただけのようである。


「まあそういうわけだから父さんの相手を頼むぞ。…………おっ、見えてきたかな。ほら、あれだ」


 そう言ってのぶちゃんが指差す先。そこにはトロッコ急行の車窓から見えた巨大な城があった。最上部のあたりにうっすら雲がかかっていることからもその巨大さがわかる。アホみたいなスケールの城だった。


「あの城が王宮でのぶちゃんの家なのか?」


「そうだ。城はもともと戦時の迎撃用の要塞なのだが今はもうその機能はない。だから城を王宮として、家として使ってるんだ」


 ふーんと、僕はぐるりと周りを見回す。街の周りは高さ数十メートルの壁で覆われている。街中にも点々と砲台の設置された塔がありそれだけで充分なのかもしれない。


 そして僕たちを乗せたドラちゃんはそのまま城へ向かって飛行を続け五分もしないうちに城の真ん中あたりに突き出したテラスのような場所に着陸した。


 ドラちゃんを降りさせるために相変わらずのぶちゃんは頭をぶん殴っていたのだけどもう「ふえぇ……」とか鳴いていなかった。疲れきっているのかもしれない。


「さあ、着いたぞ。順に降りるんだ。気をつけてな」


 僕は先にアルスとエリスを下ろす。リリルは小さすぎて足が届かないので僕が抱きかかえて一緒に降りてやった。


 そして全員が無事降りたのを確認し、のぶちゃんは腰に両手を当てると声高らかに言う。


「ようこそ。我が城、エトランド城へ!!」


 後ろで、竜が小さく鳴いていた。


誤字脱字の指摘・感想なんでも待ってます。

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