信者③
僕は社交的な性格ではない。だから大学でもそれほど友人はできず、唯一の居場所は中国語の勉強会くらいしかなかった。片岡を始めとするこの仲間たちとは、どことなく馬が合い、授業の合間などに学食の一角にたむろするようになっていた。他方で、あの自由が丘の居酒屋に行った日以来、僕と片岡と葵の三人で過ごす時間も少しずつ増えていった。期末試験が近くなった頃には、一緒に図書館で勉強したりもした。勉強していて分からないことがあると、葵は「ごめん。今ちょっと話しかけていい?」と遠慮気味に前置きしてから、助けを求めてきた。「今忙しいから待って」などと言うことはもちろんない。僕は毎回、丁寧に分からないところを教えてあげた。他人に何かを教える行為は自分の優秀さを確かめる行為でもあり、まったく苦にならなかった。
そして、片岡は、よく
「三人で村を作りたい」
と言った。最初に聞いたとき、僕は即座に指摘した。
「どうやって生活するんだよ。辺鄙なところだろ? 仕事がないじゃないか」
せっかく名門大学に入ったのにありえない。いい暮らしをして、名誉を得たくはないのだろうか。それがエリートの責任ではないか。片岡の言葉が冗談のようには聞こえず、少しだけ憤りが混じった。それなのに、脳の反対側では別の想像をしていた。僕と片岡が、はしゃぎながら水路を作る。畑を耕し、種をまく。葵は僕たちを見守りながら、ニワトリに餌をやる。ハウツー動画を見ながら農作業を試み、畜産に挑戦し、雨露をふせぐ小屋を建てる。失敗を重ね、少しずつ改良し、やがて実を結ぶ。小屋は家屋になり、徐々に仲間が加わって、集落になる。夜は全員が集まってきて焚き火を囲む。競争も揉め事も一切ない、平和で癒しの世界だ。
誰かとトラブルになった後、三人で笑い合った後、何も起こっていないときでさえも、片岡は三人でいると
「村を作りたい」
と言った。そして時々「俺たちずっと一緒だよな」と付け加えた。
葵は、それを聞いていつもニコニコしていた。そして一度だけ、こんなコメントを返した。
「悠だけだったら無理だけど、目黒くんが一緒ならできちゃいそうだね」




