友達⑨
「みんな違って、みんないい」片岡が神妙につぶやいた。「俺がこういう話するとみんなめんどくさそうにするんだけど、葵はいつも付き合ってくれるし、目黒は的確に分析して答えてくれるんだよなあ」
ああ、本人もめんどくさがられてるって気づいてるんだと思い、それがおかしかったが、僕にとっても片岡がちょくちょくお題をくれるのは楽しかった。考えて言語化してそれを熱心に聞いてもらえるというのはなかなか気持ちがよかった。葵も、クスッと笑いながら言った。
「女の子にもその調子だから彼女できないんじゃないの?」
「いや、さすがにデートでそんな話しないよ?」片岡は、両手を挙げて妙なポーズをとった。「で、葵は彼氏できた?」
僕は、飲み干したばかりで氷だけが残るハイボールのグラスを持ち上げ、口をつけた。
「できてないよ〜。いい人いたら紹介してよ」
葵は、さらっと、それが口癖かのように軽く言った。僕はグラスを口から離し、ゆっくり下ろした。グラスを置く動作がぎこちなかったためか、カランと氷が鳴る音がした。騒がしい居酒屋の中でほとんど聞こえるはずのないその音が、やけに響いて聞こえた。
「次何飲む?」
片岡にそう言われて、やっと自分のグラスが空になっていることに気づいた。僕はもう一杯、ハイボールを頼んだ。片岡の顔は、もう赤くなってきていた。
「葵も一杯くらい飲もうよ」
二割増しくらいの声量で、ついに片岡が誘った。
「二十歳になったらって言ったでしょ」
葵は、口元を緩め、少し目を細めて受け流した。片岡は、わざとらしく肩を落としておどけた様子を見せると「トイレ行ってくるわ」と言って席を立った。
急に二人になり、間が空いた。彼氏ができてないと言った葵の言葉を思い出していたが、口から出たのは片岡のことだった。
「片岡はけっこうモテるんじゃない? すごく明るいしルックスも悪くないし」
葵は微笑んだ。
「そうだね。でもあんな感じでなんでもズバズバ言うでしょ? それがいいっていう人は合うんだけど、合わない人はまったく合わないんだよね」




