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友達⑧

片岡のビールがなくなり、二杯目を注文した。少し残っていたウーロンハイを飲み干し、僕はハイボールを注文した。

「目黒くんってバランスがいいよね」

葵が僕の顔をまじまじと見ながら言った。

「バランス?」

「そう。頭がいいだけじゃなくて柔軟っていうか」

葵が何を見てそう思ったのかは分からなかったが、ただのお世辞ではなく、自分のことを理解してくれた上で言ったことだというのはよく分かった。僕も葵のことをもっと知りたかった。しかし、どんな言葉を返そうか思案するうちに、「え、俺は?」と片岡が話をもっていってしまった。葵は「いや~」と言って含み笑いをするが、片岡はまじめな顔をしていた。人間の性格ないし能力におけるバランスの良さとは何か。片岡の〝気になるスイッチ〟が入った音がした。

普通なら、「あなたも良いよ」とでも言ってごまかすか、逆に「良いわけないじゃん」とでも言ってからかうようなところだろう。しかし、葵は片岡の習性を熟知していると見えて、片岡と同じレベルのまじめな顔になって答えた。

「私から見ると目黒くんは視野が広い感じがして、悠は猪突猛進って感じ。なんかそう感じるの」

片岡は、さらにまじめな顔になって考え込んだ。二人のやり取りを聞いているうちに、勝手に俯瞰して言葉が出てきた。

「たぶんだけど、僕は勉強ができるって言われる割には優等生的ではなくて、好奇心の範囲が広いからいろんなことに手を出すし、多少変わったこともしてみたくなるんだよね。その辺がね……」

と、葵の方を手で小さく指し示した。片岡が生き生きとして語を継いだ。

「葵には視野が広い人間に見えるんだ!」

「そう。葵から見ると僕が何でもできる人に見えるんじゃないかって。実際はそんなこと全然ないんだけど」

僕は、片岡に便乗することで初めて彼女のことを「葵」と呼んだ。

「でも片岡は」と僕は続けた。「気になったことにのめり込むタイプなんじゃない? だから、バランスがいいっていう風には見えにくいのかもね」

「そうそう! そういうことなの」

葵は身を乗り出して三度、大きくうなずいた。


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