友達⑥
あとで連絡する、と言っていたとおり、片岡からインスタでメッセージが来た。スマホの画面を開くとグループチャットになっていて、見慣れないアイコンが目についた。柴犬のアイコンに「Aoi」というプロフィール名が、ありきたりながら妙に彼女らしく思われた。もっとも、近所で撮った綺麗な夕焼けの写真に「Ryo」という僕のプロフィールも、ありきたりさでは負けていない。もう一人、南の島での自撮り写真らしきアイコンで「片岡悠」と表示されているユーザーが、チャットで発言した。
「場所なんだけど、自由が丘でいい?」
少し早めに大学を出て、待ち合わせの時間の十分前には駅の改札口に着いた。時間を潰そうとスマホを開いたところで、ちょうど片岡からメッセージが来た。
「ごめん、ちょっと遅れる」
片岡より先に着いたことで、僕はソワソワした。いったん駅から離れて周辺をぶらぶらしようかと考えて目を上げると、自由が丘の街に溶け込む葵の姿があった。
「いつ来た?」
「今来たところ」
当たり障りのない会話で間を埋める。
「学部はどこなの?」
「文学部だよ。目黒くんは悠と同じ経済学部だよね?」
「うん」
初対面特有のぎこちない会話が続く。僕は、片岡から来たメッセージに返信していなかったことを思い出した。
「片岡は遅れるって」と言いながら、スマホを取り出した。グループチャットには、アヒルが跳ね回るスタンプが葵から送られていた。
「そうみたいだね。悠はホントよく遅刻してくるから」
葵は片岡のことを「悠」と呼んだ。それも淀みなく、ほんの少しの呆れを含ませて。
「そういえば」片岡への返信文を打つ手を止めた。「片岡とはどこで……」
所在なさげに親指が行ったり来たりする。
「付属で一緒だったの」
葵の声は明るく色づいていた。僕には見えない何かを見ながら話しているように、笑っていた。スマホの画面が真っ暗になった。
「会うたびに目黒くんのこと話してきてね。あいつはすごいっていつも言ってるよ」
どんな反応で応えたのか、自分でも分からない。喜びを示さなかったことだけは確かだ。実のところ片岡こそ、バカっぽく見えてやけに鋭いところがあると秘かに認めてもいた。ただし、葵の前でそれを言わなかったこともまた確かだ。




