友達②
四月が終わった。キャンパスの華やぎも一段落し、大学の「日常」が始まった。
結局僕は、新歓コンパに行ったきり、あの国際協力活動サークルには入らなかった。片岡に誘われて平凡なテニスサークルに入ったが、そこもじきに行かなくなった。片岡は、ほかにも掛け持ちしているサークルがあると言って紹介しようとしてくれたが、すべて断った。社交的になれる季節はすでに終わっていた。とはいえ、就活にプラスになりそうなことはしておく必要があったから、大して興味はないが面倒の少なそうなボランティアサークルに入り、必要最小限の活動をこなした。大学はゴールではなく通過点なのだから、ほどほどに学生生活を楽しみつつ、当面はテストでいい点を取ってGPAを上げておくことを目標にした。
その日、僕は、経済史概論のレポート課題について調べ物をするために、大学の図書館に行った。巨大で威圧的な外観と対照的に、館内には物腰やわらかな図書館員が控える。広大な空間のあちこちに学生の姿が見えるにもかかわらず、全体として静寂に包まれている。その中に紛れていると、逆に個室に籠もっているような、不思議な感覚になった。
課題に関する資料を探すという用件を済ませたあと、神聖な気持ちで外国文学の書架をぶらぶらし、適当な本を手に取った。本当は、完璧なレポートを仕上げるために、すぐにでも経済史の資料の読み込みを始めるべきだった。しかし、そのために必要なエネルギーを先にチャージするのだと言い訳し、僕は自分に二十分間の休憩時間を与えることにした。
館内には、書架のほかに、ものすごい数の机が並べられており、学生たちがまばらに座って、本を読んだり、パソコンを開いたり、スマホをいじったりしていた。僕は、その机群にではなく、壁際にちょこっと並べられたソファーチェアの方に向かった。ところが、そこには、先客があった。棚が影になっていたため、はじめに見えたのはソファーチェアから横向きにはみ出る先客の足だけだった。ベージュ地にグッチのロゴが入ったスニーカーが見え、ビンテージっぽい風合いのジーパンに、近寄っていくとグッチの柄シャツが現れ、首元には金色のネックレスが見えた。先客は、横並びのソファーチェアを三つ占領して寝転がり、壁側を向いて寝ていた。その、いかにも下品だが、見ようによってはお洒落なのかもしれないファッションには見覚えがあった。




