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声のデカい男⑩

それから、他の上級生が加わったり抜けたりしたが、僕は背後の様子が気になって会話に集中することができず、ただ時間が過ぎた。思い切ってまた振り返ってみると、片岡と丸顔の女はともにいなくなっていた。

中身のない時間の中身が、ますますなくなってきた。間もなく新歓コンパはお開きとなり、帰りの準備を始めた。すると、鳥が巣に戻ってくるかのように、どこからともなく片岡が僕たちの席に戻ってきた。羊のうちの一人がすぐに近寄り、「近くにとっておきの店があるから、ラーメン食いに行こうよ」と言って、僕たちを締めのラーメンに誘ってきた。片岡は、二つ返事で応じつつ、僕の方を窺ってきた。食べ盛りの僕たちにとって、飲み会での食事は前菜でしかない。否やはなかった。

居酒屋を出たところで、六人ほどのかたまりの中に丸顔の女がいるのを発見した。丸顔の女はやや小柄で、肩にかかるセミロングの髪が風になびいていた。白っぽいニットに目立たないネックレスをして、紺色のチェックのスカートをはき、ベージュのカバンを肩からかけているその恰好は、地味さと同時にどことなく安らぎを感じさせた。僕は、しばらく店の前で立ち止まり、やがて片岡たちのあとを追いかけるようにしてその場を離れた。

ラーメンは、なんということのない、ごく普通の豚骨ラーメンだった。酒を飲んだ後のラーメンなんてどこで食べてもそれなりに美味いものだ。期待外れではありつつも、まあ不味いわけではなかった。とっておきだと言って勧めてきた羊の手前、僕はポジティブな感想を述べておいた。一方片岡は、勢いよくモグモグと麺を口に送り込んでいったが、その勢いとは対照的に

「うん、別に美味くはねえな」

と言った。僕は、思わずごく普通の豚骨ラーメンを吹き出しそうになった。羊は鼻白んでいた。


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