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スキル確認


途方にくれてはいるがアルカディアのモンスターを見て少しだけ落ち着いたケイオス。


「アルカディアのモンスターが居るなら…ゲームのシステムも残ってるのか?」


UIは使えないが使えなくなったとは限らないはずだと考え付く。

何千、何万と使い馴染んできた事を試す。


「…………これは」


ケイオスは右手を軽く掲げた。

システムメニューは開けない。

ステータス画面もスキル一覧も表示されない。

それでもスキルを発動する事を今考えてみた。

途端、喋ったり歩いたりすると同じくらいに、それがどうすればいいのかを自然と理解していた


「下級キメラ召喚、鳥《Summon Lesser Chimera: Feather》》」


低く唱えると、掲げた手のひらの前に淡い光が集まった

光は歪に渦を巻き、黒く澱み、やがて小さな塊へと収束していく

次の瞬間そこには小型のキメラが姿を現していた。

動物の断片を継ぎ接ぎしたようないびつな体つき、鳥の形ではあるが鳥ではない無い、だが間違いなく、いつも通りのキメラだった。


「出た、な」


安堵と困惑が入り混じった声が漏れる。

召喚は成功した。少なくともスキルという機能自体は、この世界でも生きているらしい。

だがゲームとは違う圧倒的な存在感が目の前のキメラにはあった。


「お前この辺り見て来れるか?何か変わったものがないか探ってこい」


こんな指示は本来出せない「見て来い」だの「変わったものを探れ」だのという抽象的な指示はシステムが受け付けるコマンドの範疇を大きく超えている。

敵を攻撃させるか、その場に留まらせるか、連れて歩くか、それくらいしかできない。


だが小型キメラはくるりと体を巡らせると、迷う素振りも見せずに草原の奥へと駆け出していった。

まるで命令の意味を正しく理解したかのように。


「召喚したモンスターへの命令が、全然できない方が不自然だしな」


ゲームで見てきた事でありながら何処までもリアルな形に昇華している事実。

ケイオスはもはや驚く事も止めそれを受け入れていた。








そのまましばらく待っていると草を掻き分ける小さな音が近づいてきた。

先ほど偵察に出した小型キメラが戻って来た。

いびつな体をひょこひょこと揺らしながら戻ってきたそのキメラは、ケイオスの前まで来るとくるりと体の向きを変え、そして動き出す。

「…案内してくれるってことか?」


キメラは答えない。ただ、示した方向から一歩、また一歩と歩き出しては、ケイオスの反応を確かめるように振り返る。

その仕草だけで十分すぎるほど意図は伝わってくる。


「ははは嬉しいな、こいつですらこれだけ仕事やってくれる訳か」


ゲームではありえない複雑な指示をこなすその姿にまた乾いた笑いを零しながらキメラに付いて行くのだった。












草原は緩やかに起伏を描き進むにつれて草丈も高くなっていく。

風の音に混じって遠くから何か別の音が届き始めたのはしばらく歩いた頃だった。


金属のぶつかる音地面を叩く重い音。

そして人のものらしき声でケイオスの足が、自然と止まった。

ケイオスはそれ以上進む前に、周囲の草むらへと体を沈めた。


丘の向こう側少し開けた窪地のような場所に、複数の人影があった。

距離があるためはっきりとは見えないが穏やかな光景でないことだけは疑いようもなかった。


「…戦闘か」


何が原因で争いになっているのかどちらが正しいか、そんなことはケイオスには関係のないことだ、肩入れする理由など何一つない。


だが同時に数少ない手掛かりでもある。

目の前で起きていることから何かを掴んだ方がいいかもしれない。


窪地の争いは一方的だった、捕らわれている側が嬲られている、文字通り手も足も出ないと言った所だ。

その有様を見てケイオスが少し顔をしかめる


「…戻ってこい、仕事は終わりだ」


小声でキメラへ指示を出すキメラは素直に身を翻し、ケイオスのもとへと戻ってくる。

そして黒い光に包まれ泥のように溶けてその姿を消した。


次に右手を掲げる

試すのは、もう一段階上のスキル


「中級キメラ召喚、ゴーレム《Summon Intermediate Chimera: Golem》」


黒い光が渦を巻き、赤い光で幾何学的な魔方陣が描かれる、その地面から迫り上がるようにして大きな影が姿を現した。

頭部を持たない人型の巨躯、継ぎ接ぎだらけの皮膚と筋肉が幾重にも縫い合わされ異形の巨体を形作っていた、刺青の様に光る赤い文様が胸もとに刻まれている。

先ほどのキメラとは比較にならない威圧感がその場に満ちていた。

ケイオスは自身以上のその巨躯を見上げながら、静かに告げる。


「行け、あそこに割り込んで優勢な方を襲え、あんな初心者狩りみたいなの見てて面白くないからな」


一拍置いて付け加える。


「だが加減して相手を測れ、もし向こうの方が強そうなら撤退だ」


頭のない巨躯が応じるように身を屈めた。

そして次の瞬間草を蹴散らしながら窪地へ向けて、猛然と駆け出していった。






一話の文字数はどれくらいがベストなのでしょうか…?

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