ブリリアントな親友
トリスタンが鳴き声を上げたので、なんだ?と思えば、厩舎の入り口に、その人物を見つけた。今の名前はなんだっけ?
タケシ?
オレはやってきた親友に声をかける。
「よ、まだシナリオは進めないのか?」
親友は面倒くさそうに首を横にふるのだ。そして、木製の柵に身体を預かるようにしてうなだれた。
「ユーリィルートがあと少しで、最初の」
「最初の?」
「誤解で強引にはじまる……」
どんどんそいつの声は小さくなっていく。その意味をオレは察した。
「あーいたしますシーンかぁ」
「言うなよ」
とそいつは言って頭を抱える。
「じゃ、何。エロシーン?絶倫シーン?」
とわざと卑猥な方を採用してみれば、とそいつは、深ーくため息をつくのだ。
こいつは、オレの親友であり、成人向けの恋愛ゲーム【ブリリアントファルス】の主人公である。何てひどい名前を付けたんだ?とは思うが、登場人物ではないオレには関係ない。とんでもない名前のゲームなだけあって、危険なシーンが多いらしい。
ユーリィは学園の才女であり、通称【ブリファル】のプリンセスのような扱いだ。魔法学にも明るい。ブルーグレーの髪に、瑠璃色の瞳を持つ美少女だ。親友にとっては、大義名分を得て関係を持てる相手。すなわち、攻略対象だ。
「いーなぁ。お前は主人公だから、待つ必要なし。本当に羨ましい」
「やりたくない、自信ない」
「じゃ、やらなきゃいいじゃん」
軽く返したら、
「期待させておいてそれじゃ、ひどくないか?」
と言われた。
そいつの漆黒の前髪はやや目にかかるようで、表情は読み取りにくい。
「お前真面目過ぎるな。オレたち攻略対象は待つだけ。主人公しだいなんだよ。攻略してくれたらラッキーだけど、してくれなくても仕方ない」
「それは、ラウリィが乾いた性格だから思うだけで。じとっと湿った瞳で、速く攻略して、と見ている攻略対象もいると思う」
「湿った瞳って。潤んだ瞳だろーよ」
「ラウリィは全年齢だからいい」
「ああ、清く正しい節度をたもった交際の末、エンディングも後日談でいい」
まあ、キスや事後もときどきあるけど、その辺りはかなり規則が厳しい。お子様の目に触れても大丈夫なレベルに、濃度を薄めているようだ。
オレのルートはどうだっけ?と思う。
ルート攻略に縁がなさ過ぎて、忘れてきていた。




